昨日の夜遅く、ご主人様に暇乞いを告げると、メイプルは今朝の船で帰って行きました。
しだいに小さくなる船の端であたしに応えていつまでも手を振り続け、
多分、この島が見えなくなるまで…。そんな気がします。

…

結局、ご主人様は見送りには来ませんでした。
会えばきっと引き止めてしまうであろう事を知っているから。
そんな弱い自分を知っているから。

あたしはこの島を出ることはないでしょう。
そんな弱いご主人様を守って行かなければならないから。

―――――――― くじらんど綺譚 ――――――――