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第二段階


 実は第一段階がクリアできると、外から見た感じとしてはほぼ完成したといえます。これはどういうことかというと、ルールの無いゲームをしていようが、アドリブでゲームをしているふりをしていようが、見た目ではなんら変わりがないのです。つまりこの第二段階から先は、自分たちの心の置き所の問題になります。「ゲームのふり」から「ゲーム」、そして「勝負」へ。やめるなら今のうちです。

 とりあえず何らかのゲームをしている感じがつかめましたら、今度は対戦相手を驚かそう、あるいは笑わせようとしてみましょう。第一段階で、相手の行動には笑ってはいけないと書きました。それはこの先も何ら変わりはありません。何をやろうがルール通りという前提は崩れません。その「相手は決して笑えない」という前提に敢えて挑戦して、相手が予想だにしない行動をしてみるのです。たとえばいきなりトランプを投げつける、不況についての雑談を始める、サイコロを振る、走り出す、聞いたこともない専門用語を使う、相手の手を「それは確かこっちが正しいと思うよ」と訂正する、専用シートを食いちぎる、王手飛車取り等々。とにかく相手がたじろいだり吹き出すであろう事を思いつく限りやってみましょう。当然相手も同じ事であなたに挑戦してきますから、決して動じずに「ほほう、なるほど」と大きく構えてアゴでもさすって受け流すことに努力しましょう。しかしここで誤解してはいけないのは「相手を笑わせると勝ち」というわけではありません。勝敗はあくまでゲームの中の問題で、笑ってしまうのは全てを台無しにしてしまうのですからゲーム以前の問題です。決して笑ってはいけないのに、笑わせようとしなければならない。この矛盾こそが、ルールが無くてもゲームを成立させる基本となるものです。

 詳しく説明すると、まずここで相手の行動に吹き出してしまうということは、つまり相手の行動は異常だ、ふざけている、普通では考えられない、といった意味を持ちます。それは相手の行動を否定することになるでしょう。しかし今はゲーム対戦中であり、相手の行動はどんな奇異な行動であってもルール通りなはずです。ルール通りの行動に対して否定をする必要は無いはずなのです。ですから相手のあらゆる行動を「ルール通りなのだ」と全肯定することが必要となります。しかし、繰り返しますが今はゲーム中ですから、当然相手に勝とうとしているわけです。相手に勝つためには相手の予想を超えた一手を考えなければなりません。つまり”普通では考えられない”手を見つけだす必要があるのです。それこそが「相手を驚かそう、笑わそうとする」事に通じます。「相手を驚かそう、笑わそうとする」事は、ここでは「勝とうとする」事とイコールになるのです。これが「ゲームのふり」から「ゲーム」に通じる第一歩です。しかし何度も言いますが、相手を笑わせたら勝ちというわけではありません。この勝敗の付け方が大変難しいので、説明は後の項に譲ることにします。現段階では第一段階と同じように、頃合いを見計らってどちらかが負けを認める形でゲームを終えるのが良いでしょう。


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