十角館の殺人/講談社文庫

綾辻氏の記念すべきデビュー作。私にとってもこの作品に出会えた事は大変嬉しいことでした。
隔離された館の中で一人また一人と殺されていくが犯人が誰なのか解らない、一般に「吹雪の山荘」ものと呼ばれる作品です。私としてはこの手の作品が非常に好きでありますので大満足です。さすがにデビュー作だけあり、この後に連なる氏の作品と比較すると粗い面は多々ありますが・・・。はじめに戸惑ったある事も成程そういう意味があったのかと納得
それにしても綾辻氏はこの頃から読者を惹き付ける書き方がうまいですね。途中、ある人物が何事かに気付く場面があるのですが、それが何かわからないまま話は進んでしまうので、それまで以上にページをめくる指が早くなってしまいます
また、この後の「館シリーズ」にも登場する探偵島田潔(おそらく作家島田荘司氏の島田とその島田作品に登場する探偵御手洗潔から命名したのでしょうね)と建築家中村青司の紹介も兼ねていますので、綾辻作品、特に館シリーズはこの十角館から読むのがいいのではないでしょうか。








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迷路館の殺人/講談社文庫

久しぶりに再読してみました。いやぁやっぱりいいですね、綾辻行人。犯人やトリックが解っていてもワクワクと読めてしまいます。
「迷路館の殺人」の中に「鹿谷門実著・迷路館の殺人」があるという作中作の構成をとっておりなかなか楽しい。そして、この迷路館の中で次々に殺人が起こるという設定ですが、このあたりのサスペンスは「十角館」や「時計館」の方が緊張感あるような気がする。だからといって迷路館がつまらないかというとそうではなく非常に面白い。だってこの迷路館、怪しさという点ではシリーズ随一ではないでしょうか。地下住居で天井はガラス張り、各部屋に通じる通路が迷路になっているなんて、とても普通ではない。(平面図を見た時にはなんだこりゃとなりました) この中で「見立て殺人」やら「密室殺人」が起こるべくして起こってしまう。もっともこのシリーズの場合「密室殺人」はほとんど意味がないんですけどね。
ただ、せっかくの迷路館なんでもう少しこの迷路を生かしてほしかった。雰囲気を壊さない範囲での大きな機械仕掛けのからくりがあるとか・・ね。けっきょく中村青司得意のアレだったもんなぁ。
しかしまあ、やっぱり綾辻行人では「館シリーズ」が一番好きですね。早く新作が読みたいです。








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時計館の殺人/講談社文庫

水車館、迷路館、人形館に続く「館シリーズ」第5弾です。まぎれもなく綾辻氏の代表作だと思います。幻想的な「霧越邸殺人事件/新潮文庫」と双璧をなす作品ですが私としてはこの「時計館」の方が好きですね。
それにしてもこの時計館に隠された思いもよらない秘密には驚くばかり。こんなことを考え付いた綾辻氏はどんな人物なのだろうと考えてしまいます。実際、こんな事があったら一体どうなるのだろうか? あの不幸な出来事がなく、そのまま知らずに過ごしていたとしたらあの人は幸せだったのだろうか? そんな事まで考えさせられてしまう作品です
そして、時計館に閉じ込められたメンバーが次々に殺されていく場面の緊張感は凄い。自分まで時計館の中に引きずり込まれたような感覚に陥ってしまいます。またこの作品を読んでいて私が犯人より気になってしまったのは、ある人物がこの時計館をようやく抜け出すわけですが「そこで見たもの」。それが気になり探偵(迷路館を読んでいない人のため名前は伏せます)が謎を解き明かす場面は相当なページ数があるのだが、もう一気に読んでしまう。けっして犯人は意外ではないのですけど・・。十角館以来のある人物が活躍するのも旧友に再会したようで楽しいです。
まさに綾辻行人入魂の一冊といえますね。








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黒猫館の殺人/講談社ノベルス

「館シリーズ」6作目。これは大きなトリックが仕掛けてあり、それが判明した時思わず唸ってしまいました
始めからいろいろな伏線が張られているのですがまるで気がつかなかった。何の予備知識もない状態では気が付く人はいないだろうと思います。綾辻氏自身「消える魔球を投げようと思った」とコメントされている通り、これは大技ですねぇ。「ストライクゾーンにおさまるか、どうか」見事におさまっていると思いますよ。
作中、中村青司もシャレた事をいいますが、今まで登場人物によって名前が出てくる程度の影の存在であった彼が少し表に出てきたかなという印象です。彼がどういった人物かは「十角館の殺人」で語られていますが、今まで狂気の建築家といった印象しかなかったもんなぁ。でもこれを読むと普通に話すんですね。って当たり前か・・
この「館シリーズ」はどれも甲乙付け難いくらい好きなのですが、私としては「時計館」とこの「黒猫館」が気に入っています。綾辻氏、早く7作目の「暗黒館の殺人」お願い致しますね。








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殺人鬼/FUTABA NOVELS

これはもうミステリーというよりもスプラッター小説です。確かにちりばめられた謎はあるのですが、それよりも殺人描写がこれでもかという具合にドロドログチャグチャに描かれています。よくもここまでという感じです。読んでいて気持ち悪くなりました。間違っても食事しながら読むのだけはやめたほうがいいです
双葉山の山中でおこる殺人絵巻。犯人は誰か、というよりもそのグロテスクな描写に圧倒されてしまいます。なんといっても殺され方が凄まじい。自分の目玉を喰わされたりとか残酷な殺し方ばかりで思わず吐き気が・・
既に「殺人鬼2-逆襲篇-」も出ていますが、こちらはさらにパワーアップ。綾辻氏自身、解説の中で「書いていて自家中毒になった」と書いている通り、スプラッター描写に研きがかかっています。内臓グチャグチャが好きな方にはお薦め。私はちょっと苦手ですが・・。それにしても、この様な作品まで書いてしまう綾辻氏の才能には恐れ入りました。
最近、新潮社より文庫化されましたので、お好きな方はどうぞ・・・。ただし覚悟して読んだ方がいいです。映画等よりはるかに気持ち悪いですから・・








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黄昏の囁き/NON NOVELS

「館シリーズ」とは趣きのちがう、「緋色の囁き」「暗闇の囁き」に続く「囁きシリーズ」の三作目になる作品
前二作がどちらかというとホラータッチで「囁きシリーズ」はちょっと私にはあわないかなと思ったのに対し、この「黄昏の囁き」はA・クリスティ女史が好む「回想の殺人」テーマになっており私の好みにもピッタリ。味わい深い作品です。
誰もがもつ幼い頃の記憶。思い出せそうで思い出せない歯がゆさ・・・。そんな雰囲気が漂っていますねぇ。こういったタイプの作品もどんどん書いてもらいたいです。
また「暗闇の囁き」は「殺人鬼」と密接な関係がありますので合わせて読むと楽しいです。








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