メビウスの殺人/講談社文庫

犯人は「椎名俊夫」です。と未読の方慌てないでください。この作品始めから犯人は明かされていますので・・。「8の殺人」「0の殺人」に続く速水兄弟シリーズ3作目の「メビウスの殺人」は前二作と異なりサイコ・サスペンス調の作品です。私の我孫子氏に対する評価が一気に高まった作品でもあります。捜査タッチの作品でありながら二転三転するストーリー。そしてラスト付近で判明するあの事実。「嘘だろー!」と思わずにはいられません。
自身のホームページを持つ我孫子氏らしく、この作品ではパソコン通信が重要な鍵を握っています。というよりパソ通自体が一方の主役なのではと考えてもいいのでは・・。
かなり重く暗いテーマを扱った作品ですが我孫子氏の軽妙な文章は軽い感じでサラッと読ませてしまいます。それで救われている面もあると思いますが・・
ところで、ようやく速水警部にも春が訪れたようでなによりです。








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探偵映画/講談社文庫

我孫子氏の映画好きがわかる作品ですねぇ。全編、映画の話しで彩られております。この作品確かに謎解きはあるのですが、殺人事件が起こる通常のミステリーとは異なります。
作中に登場する「探偵映画」という映画制作にまつわるミステリー?なのですな。その映画制作途中、最後のシーン(いわゆる犯人が誰かという場面)を残して監督が失踪、台本はなくスタッフ、俳優・女優、全ての関係者が結末を知らない。しかし、この映画を封切りに間に合うように完成させなければ会社は潰れてしまう。そこで関係者が各々台本を書き、その中で一番のホンを採用しようという事になるわけですが、通常のミステリーと違い出演者が「犯人は自分だ」と主張して譲らないあたりが笑みを誘います。
これだけでもなかなか面白いのですが、失踪していた監督が戻ってきた時に新たな驚きがあります。伏線はきちんと張られておるのですが気付きませんでしたねぇ。作中の関係者同様「何っ」と驚いてしまいました。こういうのがあるからミステリーはやめられない。
重厚な本格物もいいですが、こういったサラッと軽いミステリーもいいものです。
私など知らない映画のタイトルや話がポンポン出てきますので映画好きの方も楽しく読めるのではないでしょうか








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殺戮にいたる病/講談社ノベルス

病んでおります。我孫子氏のこれまでの作品はどちらかというと軽いタッチのものが多かったと思うのですが、一転してシリアスな作品です。
「メビウスの殺人」の流れを汲むサイコ・サスペンスな作品ですが、はるかに暗く重いです。これまで「メビウス」「人形シリーズ」等でこのようなテーマの兆しはあったのですが、まさかここまで作風が変わるとは想像していませんでした。とても同じ作者とは思えない。綾辻行人の「殺人鬼」を読んだ時はそれまでの「囁きシリーズ」などから、この人なら書きかねないと思ったのですが、我孫子氏の場合それまでが明るい文体の作品を書いていたのでビックリ。かなり凄惨な場面なども登場するので覚悟して読みましょう。
作中、私も好きな岡村孝子さんの歌が効果的に使われ、犯人の異常さを際立たせています。
また、犯人が捕えられる場面から物語は始まりますが、どんどん読み進み、そして再び犯人が捕えられる場面に戻ってきた時、同じ場面でも犯人の性癖、思考等がわかってから読むとやりきれない気持ちになると同時に愕然とします。いや凄い作品です。間違いなく我孫子氏の代表作ですね。でも、このイメージだけでみてしまってはいけませんがね。
「夢をあきらめないで」いいですねぇ








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