奥穂高殺人事件 / カッパノベルス

山岳ミステリーの一冊。登山はしたことがないですが上高地の風景を見て以来山に惹かれるものがある私としては好きなジャンルの一つであります。
パーティのメンバーが下から見守るなか登山中の一人が転落死。事故か他殺か・・・。という具合に物語は始まり、この時のパーティメンバーの一人が探偵役として活躍。
この作品何が面白いかって、冒頭の事件をはじめ、作品の三分の一以上の場面が全て「山」なのである。それが雰囲気よく描かれているので私のように登山をしない山好きにもその時の情景が目に浮かぶようでたまらない魅力がある。追悼登山の場面で、4つのパーティが別々のルートを登り山頂で落ち合うシーンなどを読むと、長井氏自身も相当山が好きなんだろうなという印象を受けますね。
しかし、そういった山の描写だけの作品か、というと大間違いですな。随所に伏線が張られているので、あの時の一言、あの時の行動にはこんな意味があったのかとパズルが埋っていく爽快感もありますし、意外性もあります。ただ後半の謎解き部分はなんだかややこしくて現実離れした感があるのと、肝心のトリックがトホホなものですが、まあいいでしょう。(笑)
いくら斬新なトリックで論理的な展開であっても読んでいて面白くなければミステリーとしてつまらない、と思いますので・・
ミステリーという要素以外にも「山」の怖さや厳しさを伝えてくれるいい作品であります。








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