犬墓島 迷犬ルパン・スペシャル / 光文社文庫

赤川次郎の三毛猫ホームズに対する迷犬ルパンと警視庁刑事・朝日正義、その恋人・川澄ランが活躍する「迷犬ルパンシリーズ」の一冊です。
そして、サブタイトルにスペシャルとあるように辻真先氏自身の他のシリーズで活躍する探偵達「牧薩次&可能キリコ」「瓜生慎・真由子夫妻」がこの犬墓島に集結するという豪華な設定になっております。こういった設定だと探偵達の活躍の割合というものが難しいですなぁ。あまり片寄ってしまっては探偵達を集めた意味がないしね。
この作品もそういったところでは成功しているとは言い難い。瓜生夫妻の影はかなり薄いですぞ。でも「仮題・中学殺人事件」の頃から気に入っているポテトが活躍しているから目をつぶりましょう。
そういえば赤川次郎も短編でホームズと永井夕子が共演する話を書いていますし、西村京太郎に至っては「名探偵シリーズ」でクィーン、ポワロ、メグレ、明智を共演させるという離れ技を演じていますね。
こういったファンサービス的なミステリーも嫌いではないので、この作品も文句を言いつつ楽しませてもらいました。

そしてタイトルや冒頭を読んでピンとくるように、この作品は横溝正史「獄門島」のパロディになっているんですね。探偵を集めたうえ有名作品のパロディをやろうというのだから辻氏の意気込みも相当なものだな。
横溝作品で大きな謎となる「キチガイじゃが仕方がない」に対して、この作品では「間違いじゃが仕方がない」の一言が登場。(こちらではどんな意味なのかは読んでみて下さい)
しかし「獄門島」と大きく異なる点は文体が軽いのでスイスイと読めること。ページ数も最近のミステリーの半分ほどしかないので、それこそアッという間に読了してしまいます。
この軽さは赤川次郎の「三毛猫ホームズ」シリーズに通じるものがありますので、「三毛猫ホームズ」を抵抗無く読める方で、なおかつ犬が嫌いでない方ならこちらも楽しく読めること請け合い。








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