マリオネットの罠/文春文庫

赤川氏の処女長編(だったと思う)。序盤から大量の血が飛び散りまくり、まるでダリオ・アルジェントの世界のようであります。

最初は館ものかと思っていたら、外での連続殺人が起こり果てはギャングの密輸の話に変わったりと展開がめまぐるしくスピード感がある点は現在の赤川氏と同じですね。
ただ展開が急すぎる。私としては館もののまま書き進めて欲しかったし、赤川氏ならそれも出来たと思うのですが、やはり処女長編ということで気負いがあったのでしょうか。

また、けっこう残酷な描写もあり、ホラー小説もこなす氏の片鱗が伺われます。(主人公の目の前で友人が殺される場面など気分悪くなります)

それに、どうにかしてほしいのはラスト。べつにハッピーエンドでなくともいいのですが、このラストはあまりに酷すぎる。せっかくのそれまでの雰囲気がぶち壊し。
まあタイトルの意味を考えればこうなるのは必然なのだろうが、それでもこの後のあの人のことを考えると許せない、という思いに駆られてしまいます。







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三毛猫ホームズの黄昏ホテル/光文社文庫

数あるホームズシリーズの中でも一番気に入っている作品。

プロローグで「過去の事件」が一人の人物の視点から語られるのですが、その人物が誰なのか、その人物が見たあの人物は誰なのかわからないまま現在にもどり、ご存じ片山兄妹・石津刑事・ホームズの登場となります
そしてそこで起こる事件により過去の事件の真相も暴かれていく。その過程が赤川氏らしくテンポよく描かれているのでどんどん引きずり込まれていきます。途中「プロローグ」での人物が誰か判明し「そうかこの人だったのか・・」との驚きもあり・・。

それにしても赤川氏というのは、この作品に限らず文体は軽いですがけっこう残酷なこと平気で書きますね。この作品にもゾクッとするような怖い描写があったりします。
しかしまあ、全編に漂う黄昏た雰囲気は私好みであり、またこの作品の味をだしていますね

私もこういったホテルでノンビリと過ごしてみたいと思う今日この頃です。事件は遠慮しておきますが・・







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白い森の幽霊殺人/角川文庫

雪の中のペンション。そして、スキー場が舞台のミステリー。といっても「吹雪の山荘」ものではありませんけど・・・。

ホラーっぽい導入部、雪ダルマの中のバラバラ死体など私好みの作品です。作中、スキーの場面やペンションの裏話等、事件とは離れた部分も非常に面白く書かれており、スキー・旅行好きの私としてはミステリーとは別にしても楽しく読めました。
もちろんミステリーとしても秀逸。中弛みもなく楽しく読める一冊です。

私も何回かペンションに宿泊した事があるのですがけっこう当たりはずれが多いです。が、この作品のようなペンションならば作中人物のように何度も訪れたいですね

この後「赤い森の結婚殺人」「青い森の竜伝説殺人」にも登場するペンション「銀の森」オーナー・里中邦彦が活躍する四季シリーズ「冬」の事件です。(「春」の事件はないようですが・・)
しかし、あのトリックには少し無理があるのでは・・・。伏線もはられているので作品の流れ的にはおかしくはないのですがウーム・・







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白馬山荘殺人事件/光文社文庫

冒頭からいきなり騙されてしまいビックリ。軽くジャブといったところですか。
もしこのままラストまで進んでいたら違う驚きがあったでしょうが、それをやらないあたり東野氏の余裕かな。

白馬のペンション「まざあ・ぐうす」を舞台に展開されるこの作品はなかなか複雑な物語でありました。

ペンション名が暗示するようにマザーグースの歌に秘められた暗号と、過去このペンションで起きた事件の謎を解くために主人公が訪れる。ところが、また新たな事件が・・・。
という設定ですが、この暗号解読の部分がちょっと読んでいて辛い。ほおっとか思うのだがそれだけという印象だなぁ。
過去の事件の一つ密室事件もどうも印象薄い。読んでいる時はまあそこそこ読めるのだが、読み終わると最初と最後しか頭に残っていない。どうも全体的に中ダルミの傾向があるような気がします。

どうしてかなぁ。登場人物も読んでいる時は個性があるように思えたのに、読み終わってみると「あれどんな人だったかな」と考えてみたりしてしまう。特に不満はなかったのになぜか印象薄い。可もなく不可もなくという感じでよくまとまり過ぎているので逆にインパクトがなくなってしまっているんだろうなぁ。

後半、それまでの様々な謎が解明される場面は緊張感には欠けるが意外性もあり楽しい。しかし、ちょっと後味悪いなぁ。







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ある閉ざされた雪の山荘で

作品タイトルだけで飛びついたのですが大当りでした。

ある目的でペンションに集まった人々。そこで・・・。うーん、どう書いたらいいのだろう。難しい。
とにかく、ぜひ読んでいただきたい一冊です。読み終わった後、やられたっと思うこと請け合いです

それにラスト近く、泣かせる場面が用意されており、私も見事にそこにはまって感情移入してしまいました。いいです。ホロリとさせてくれます

綾辻氏の一連の作品のように「凄い」と思わず唸るというのとは別の次元で凄い作品ですねぇ、ウン!!







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切断魔/HITEN NOVELS

猟奇殺人を扱ったサイコ・サスペンス。

我孫子氏の「殺戮にいたる病」の犯人と"病んでいる"という点は同じですが、こちらはストレートです。
被害者の女性を切り刻む場面が何度もあらわれ、その描写が細かく書かれているものですから苦手な方は気持ち悪くなるかもしれません。
それだけを「売り」にした作品ではないと思いますが・・・。
それにしても、目玉の味等が書かれていますがカニバリズム経験者に取材でもしたのだろうか。それとも想像の産物・・・。

しかし、ラストがあっけない。「殺戮にいたる病」は最後に驚きがありますが、この「切断魔」はそのまま・・・。
まあ、こちらは捜査タッチの作品ですから、それも仕方がないのですけれど・・・。







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星降り山荘の殺人/講談社ノベルス

隔離された場所で殺人がおきる「吹雪の山荘物」の一冊ですが、これは隔離されたといっても一軒の山荘内ではなく、雪崩で下山道が塞がれてしまったキャンプ場が舞台。
有栖川氏の「月光ゲーム」もキャンプ場が舞台でしたが、こちらはコテージメインのキャンプ場で有栖川氏の作品とはかなり趣きが違います。

それにしても、この作品にはやられました。
淡々と読み進んでいって最後の30ページにまでくると「アレッ! 」となります。そういえば、と読み返してみると確かに伏線があるんですねぇ。これに見事にひっかかると最後の部分が楽しく読めること請け合い。
謎解きの部分よりもこのトリックの方が面白いです。というよりもこれがなければただの普通のミステリーだなぁ。とくに盛り上がる場面というのも感じられないですし、ここまで読み進むのが少し怠かったりします。
ところでこの人物は今後の倉知氏の作品のシリーズキャラクターになるのであろうか?
次回はこの手は使えないのでぜひ魅力的な事件で登場してほしいですね。

そうそうこの作品中では明かされない「あの事件」も気になります。本当のところどうなのだろう?







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