孤島パズル / 創元推理文庫

以前、「江神部長シリーズは面白いですよ」とメールをくださった方がおられまして、早速書店を探し回ったのですが、どこにもおいてなく「うちの方は品揃えが悪い」と痛感しました。
最近はインターネットでいながらにして本を注文できるので便利になったものです。
そこでようやく手に入れました「孤島パズル」
「月光ゲーム」だけは以前読んでおり、私もアリス君の若いときの活躍を楽しませていただいたので期待大でありました。届いたときは嬉しかったなぁ。

さて、前置きはこの位にし、「江神部長シリーズ」第二弾の「孤島パズル」
まずタイトルが私好み。なんの予備知識もなく書店でこの本を見ても必ず買っていたでしょうね。(笑)
内容もタイトル通り孤島で起こる連続殺人事件と期待通りの閉ざされた環境もの。そして、なにより他の有栖川作品と違い全編青春ミステリーの雰囲気。
連続殺人に密室もからんで、なおかつ島での宝探しの謎もあり、と盛沢山ですが、それにもまして「アリス」と「マリア」
なんか、いいです。
思わず昔を懐かしんでしまいました。
連続殺人や宝探しの謎解きは無難なまとまりかな。いろいろ読みすぎたおかげで驚きはないけれど「ばかやろー」ということもありませんでした。しつこいですけど、私もあの頃にもどってみたくなりました。なにか、忘れかけていたものを見つけた気分です。

今まで有栖川作品では「46番目の密室」が一番気に入っていたのですが、今じゃこれがベスト。
読んでない人にはぜひ読んでもらいたい一冊です。








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英国庭園の謎 / 講談社ノベルス

国名シリーズ第四弾。「ロシア紅茶の謎」でも書いたがやはり有栖川氏は短編の方が非常に読みやすい。長編だと淡々と物語が進み、読んでいて辛くなる事が多かったりする。全ての有栖川作品を読んでいるわけではないので、全部が全部そうだとは思いたくないが・・
そうそう「46番目の密室」は楽しめました。

「雨天決行」・・なんだかかなり苦しいというか、私はあまり好きではないなぁ。簡単な結論なのにそこに行くまでが長い。ぐるっと回り道させられて辿り着いたら「なに、これっ」となってしまった。最後に驚きがあればよかったが・・

「竜胆紅一の疑惑」・・これは面白い。怪しげな人の見当はついてしまうが、その動機が素晴しい。この短編集では一番うまくまとまっているという印象。それにしても作家というのは大変な仕事であるなとしみじみ思ってしまいました。

「三つの日付」・・犯人のアリバイを証明しているのが他ならぬ有栖側君であったというのは面白いが、考えてみれば適任です。というか有栖川君、君しかいない。こういう事は誰にでもある、かもしれないな。彼もいろいろ大変ですなぁ。

「完璧な遺書」・・犯人側の視点からみた短編であるが、ちょっとこれあんまりでないかい。全然証拠になっていないと思うけど・・
心理的に揺さぶろうという火村先生の考えはわかるけど拍子抜けであります。これがテーマなのでこの話で締めくくるのはいいが、他の証拠もいくつか提示しておかないと納得しないのではと思ってしまう。

「ジャバウォッキー」・・なんだかこれ清涼院氏の「コズミック」を思い出してしまった。言葉遊びのゲームみたいなものか。まあでも後半のスピード感はいいですね。作中の有栖川君の頑張りが◯

「英国庭園の謎」・・暗号モノであるが本当にそれだけという印象。暗号作成に力を注いでしまって他の部分は力が抜けてしまったのでないかと思ってしまう。しかもこの暗号とても解けるとは思えない。もう少しヒントも入れてくれたら読んでいて楽しかったのではないかなぁ。でも英国庭園についての蘊蓄は勉強になりました。








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ロシア紅茶の謎 / 講談社ノベルス

国名シリーズ第一弾で有栖川氏初の短編集であります。それでこの短編集は非常に読みやすい。有栖川氏の場合、長編よりも短編にむいているのかもしれませんね。

「動物園の暗号」・・短編ならではの暗号モノですな。長編ではちょっと無理(笑)。パッと頭に浮かんだことをそのまま書いてみましたという印象です。

「屋根裏の散歩者」・・タイトル通り乱歩調の作品かと思いきや、これが笑える笑える。やはり暗号モノなんですが、これもパッとひらめいたそのままですね。まあそのひらめきが私の様な凡人にはないものなので、それはそれで凄いです。なにか有栖川氏のお茶目な一面を見た気がして少し親近感がわきました。

「赤い稲妻」・・なんだかこれは平凡な作品ですね。犯人消失の話なんですが、短編のために話を急ぎすぎている印象を受ける。これはもう少しページ数を使い中編位の長さにすればまた違った印象を持ったかもしれません。

「ルーンの導き」・・火村先生の同僚が巻き込まれたダイイングメッセージもの。これも例によって一発アイデアもので、このアイデアを生かすために有栖川氏が苦労しているのがわかります。しかしなぁ、ちょっと無理があるんじゃないかな。

「ロシア紅茶の謎」・・この短編集の中で一番好きな話です。このトリックは現実的かどうかということは抜きにして凄いと思う。私はこういうのは好きですね。久々に「なにっ」と思わせていただきました。

「八角形の罠」・・冒頭に平面図が掲載されていたので、これは館モノかと思ったのですが早とちりだったようです(笑)。これは舞台で上演されたものを小説化したとのことですが、小説版は平凡な話と感じてしまう。できれば舞台で見てみたかったな。








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46番目の密室 / 講談社文庫

犯罪学助教授の火村英生、推理作家・有栖川有栖。お馴染みの二人が登場する作品。
有栖川氏の作品はわりと好き嫌いがあると思いますが、この「46番目の密室」はいいですね。最初に読んだ、氏の作品「ダリの繭」が謎とき部分は面白かったのですが、そこまでの過程が辛いものがあり遠ざかっていたのですが・・・。タイトルに引かれ選んだこの作品は正解でした。
クリスマス、北軽井沢の屋敷に招かれた客達。辺りを徘徊する不審な人物。そして、9年前の事故。こういう設定ですと私の場合楽しくて仕方がなくなります。しかも、招いたのが推理界の大御所、客達が担当編集者と気鋭の推理作家達。となれば何かが起こるのは必然・・・。
有栖川氏の作品にしては大変読みやすいく、これなら今まで敬遠していた人でも楽しく読めること間違いなし。おそらくテンポよく事件が起き、中弛みがないからでしょうね。それに探偵有栖川も今回はわりと活躍しておるのも嬉しい。ただ不満なのは作中作として「46番目の密室」を登場させてほしかった。結局2人しか知らないままでは寂しいですよ。このさい続編でぜひ・・・。ってやはり無理かなぁ。
それにしても、このプロローグは一体・・・。








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月光ゲーム / 創元推理文庫










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スウェーデン館の謎 / 講談社ノベルス

「国名シリーズ」の一冊。前作「ロシア紅茶の謎」と3作目「ブラジル蝶の謎」が短編集であるのに対し、この2作目「スウェーデン館の謎」は長編です。








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コズミック-世紀末探偵神話 / 講談社ノベルス

「1200個の密室で1200人が殺される」というとんでもない設定の作品で非常に興味があったのですが、そのボリューム(ページ数)から思わず二の足を踏んでいました。これだけの長編になると面白ければ問題ないのだが途中で投げ出したくなってしまったら、と考えていたのですが最終ページまで投げ出さず読むことは出来ました。しかし・・
前半、「密室1」から「密室19」まで様々な密室で殺されていく被害者達の章はこの部分だけで通常の作品の一冊分程のボリュームがあるのですがもう夢中で読み進みました。一体どのようにしてこれを収拾するんだ、と期待感で一杯。ところが、この章が終わってからなにやら怪しい雰囲気が漂いはじめ、それでも密室の謎が知りたいために読み進んでいくと・・・。前半の緊張感はなんだったんだ、と唖然。そして脱帽です。
ところでこれはユーモア・ミステリーなのだろうか。凄い名前の探偵達が大挙登場してきて、それがまた各々独特の、というより漫画チックな推理法で真相を推理するのだが(「ファジィ推理」って一体何っ・・)なんだこれというのが正直な印象です。
最後には全員「わかった」となるのだが、各々の推理法でどういった過程でその真相に至ったのかわからない。昔の車田正美「リングにかけろ」を思い出すな。当初正統なボクシング漫画であったのだが途中から「ハデな名前の意味不明必殺パンチ」が炸裂するようになり、ちょうどこのミステリーと同じ様な展開に感じられる。もしかすると清涼院氏は車田作品のファン?
ほとんど探偵達は遊んでいるとしか思えない推理?しかしないので、こんなに大勢登場させる必要もないのでは・・
前半部分はあれほど面白かった(少しくどいけれど・・)のにギャップが大きすぎる。その前半も後半の説明では・・・。
どうやら「流水小説」は私には合わないのかもしれません。