ROMMY-そして歌声が残った/講談社ノベルス

ブランク後の第一作ですが、とてもいい作品でした。私が読んだ歌野氏の作品の中では一番かもしれません。
探偵信濃譲二が活躍する「家シリーズ」のようなトリックや殺人事件がメインの作品とはまるで違う雰囲気の作品です。「ROMMY」という一人の歌手の記録を描きたかったのではと思えるほど、読み終わった感想としては殺人事件の方は脇役という印象を受けますね。所々挿入される「コンサートパンフレット」や「ステージ衣装デザインのラフ画」「売り上げランキング」等を見てもその想いが伝わってきます。デビュー作「長い家の殺人」を読んでもわかる通り歌野氏は相当の音楽好きのようなので、本当はこの作品のように歌手のプロデュースというのをやってみたいのかも知れませんね。
物語は殺人事件が起きてからも淡々と進み、正直このあたりは読んでいてもそれほどの面白さは感じなかった。一応探偵役と思われる人物が犯人をいろいろ推理するのですが、それも取立てて面白いとは言いにくいなぁ。死体をバラバラに解体する場面など、いかにも精神に異常をきたしているような人物なのでこれはサイコな猟奇事件として幕が降りるのかなと思っていたくらいです。
ところが、ところがです。ラストの40ページを読むと愕然となりました。全ての謎というか苦しみがわかったような気がします。猟奇事件などと思ったのはとんでもない間違いだった。ここでそれまでの評価が一転し、じーんと心に残るいい作品だなぁと思うようになったのでした。どうもこの手の作品には弱いです。
いい作品ですので、よろしければ読んでみて下さい。








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長い家の殺人/講談社文庫

歌野氏のデビュー作でもある「家シリーズ」の第一弾です。








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