地底獣国(ロスト・ワールド)の殺人 1997年9月5日第1刷
芦辺 拓 講談社ノベルス 760円 ISBN4-06-181983-6

これはミステリーというよりも冒険小説の方が近いですね。
もちろん殺人が起こり探偵が事件を解決するというストーリーなんですが、それよりも恐竜が歩き回る太古の世界へ迷い込んだ一行の描写の方がメインといえます。おそらく作者もこの辺を書きたかったようで力のこもった描写で物語を盛り上げております。秘境探検物などに興味のある人にもお薦めの一冊かな。

さて冒険部分が大半を占めるこのミステリーですが、謎解き部分も手は抜かれておりません。現代の探偵が過去(この作品の場合、昭和初期)の殺人事件を推理する、という「回想の殺人」物ですが、至る所にきちんと伏線が張られており、さすが背表紙に「本格ミステリ」と謳われているだけのことはあります。
そして、最後のどんでん返し。
いや見事にやられました。おそらく大半の人が「やられたー」と思うでしょうね。
もちろん、これに関しても伏線が張られているので森江探偵のように真相を見抜ける方もおられるかもしれません。

ただ動機については不満。
あんな状況で殺人を犯す動機とはなんだろうと期待していたのですが、これについてはちょっと拍子抜けでした。まあ無難にまとまってはいるのですが私的にはもっと凄い動機を期待していたもので・・
「誰が犯人か」に重点が置かれているミステリーですので仕方ないかな。

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