花火と銃声 1988年6月5日第1刷
泡坂妻夫 講談社ノベルス 680円 ISBN4-06-181364-1

探偵が「美貌の元奇術師・曾我佳城」というだけあり、アクロバット的なミステリーが収録された短編集。
それにしてもこの「花火と銃声」というタイトル。単刀直入というか、味もそっ毛もないというか、これでかなり損をしているのではと思ってしまう。これが一話目の「石になった人形」というタイトルが使われていれば、もっと人目を引きそうなものだと思うだが・・

「石になった人形」
さてその「石になった人形」
腹話術師が登場するこの短編。つい我孫子武丸氏の「鞠夫シリーズ」を思い出してしまう。そして、この短編中に腹話術に関するある記述があるのだが、そうすると鞠夫は・・
普通に考えるとまずやられる結末です。
ところで、腹話術師の芸名が「小榎麗那(こえのきれいな)」というんですが、本当に声が綺麗そうでいいですね。

「七羽の銀鳩」
今回は「鳩使いの奇術」
ミステリーとしてはともかく奇術の話としては面白いです。

「剣の舞」
短編ということもあり途中で動機が想像つくのが残念。
でも奇術関係の話は面白いんだな、やっぱり。

「虚像実像」
これは面白い。舞台図も載っていて一番本格っぽいのでは・・
たまにはこういった奇術をゆっくり観たいな、と思ってしまいます。

「花火と銃声」
単行本タイトルの短編なんですが、これだけ奇術とは関係なく探偵・曾我佳城も登場しません。それが原因かもしれないが、なんだか印象薄い話です。
普通の捜査物という感じで、もうひとひねりあるとか、もっと派手な演出があればよかったかも・・

「ジグザグ」
短編タイトルの人体切断奇術の一つ「ジグザグ・イリュージョン」を扱ったミステリー。
その奇術に見立てて切断された死体が発見されるというストーリーで、陰惨な事件になるかと思うと、これがそうではないところがいいですね。
全体的に優しさがでているようで、この短編集中一番好きな話です。

「だるまさんがころした」
変なタイトルですが、これはミステリーではなく奇術マニアの話といったほうがいいかもしれない。
特に事件らしいものは起こらないのにどんどん読ませてしまうのは、奇術自体に魅力があるからなんでしょう。
この短編集を読むと奇術を観に行きたくなりますなぁ。

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