繭の密室 1995年12月20日初版
今邑 彩 光文社カッパノベルス 780円 ISBN4-334-07170-8

貴島刑事シリーズ第四弾です。

前作まではホラー調のタッチであったのですが今回は普通のミステリーになっており、その分非常に読みやすい。サクッと読めるので初めての貴島刑事ものはこれから読み始めるのがいいかも・・・。逆に今までのシリーズの雰囲気が好きだった人は戸惑うかもしれないな。

マンションからの飛び降り事件から次々に事件が起こっていくのですが、事件の謎についても前作までと違いソフトなもので、メインの飛び降り事件にしても中盤付近に書かれている「ある会話」で真相が見えてしまう。しかも、この「一連の事件」と並行して起こる「誘拐事件」との関連に気がつけば犯人までも解ってしまう、という非常に親切な構成になっています。きちんと伏線も張られているので、もしかしたら大抵の人は途中で解ってしまうかもしれない。ちなみに私は終盤近くまで解りませんでした。(笑)

全体的に軽いミステリーですが「エピローグ」だけは怖い。この「エピローグ」まで読み進んできてはじめてタイトルの意味がわかると同時に、実はまだ事件は終わらないのでは、と深い余韻を残してくれます。

最後まで読んで「このなんとも言えない怖さ」が、やはりこれは紛れもなく貴島刑事シリーズなんだな、と痛感しました。 できれば、このシリーズ、まだまだ書き続けてほしいものです。

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