鳩笛草 1995年9月25日初版
宮部みゆき 光文社カッパ・ノベルス 800円 ISBN4-334-07153-8

超能力を持った人間が登場する短編ミステリー集です。
以前はこういった超能力者が登場するミステリーは、もう何でもありの世界になりそうで好きではなかったんですよ。ところが西澤保彦氏の一連の作品を読んでからは抵抗なく読めるようになりました。

収録されている「朽ちてゆくまで」「燔祭」「鳩笛草」の三本共、特殊な能力を持っているために苦悩する人間が描かれており、どの人物も非常に痛々しい。SF小説では超能力者の主人公が大活躍するというストーリーが多いと思うのですが、この宮部作品ではどの話も暗いトーンで覆われており、結末も後味が悪いというよりも超能力者達の今後がどうなるのか深く考えさせられます。
特に超能力が失われていく恐怖を描いた「鳩笛草」は安直でもいいからハッピーエンドにしてほしかったな。最悪の結末もあり得るわけで、この先どうなるのか非常に気になります。まあ読む人によっては一転してハッピーエンドを想像するかもしれないので、読み手次第ということですかね。

ところで「燔祭」の意味が分からなかったので広辞苑でひいてみると「古代ユダヤ教で、供えられた動物を祭壇で全部焼いて神に捧げたこと。」とある。
なるほど。となると意味深なタイトルでありますね。

異色のミステリー集ですが、どの話も引き込まれる魅力があり秀逸です。
お薦めの一冊。

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