パズル崩壊 WEODUNIT SURVIVAL 1992-95
法月綸太郎 講談社ノベルス 760円 ISBN4-06-182034-6

「法月綸太郎の冒険」に次ぐ短編集第二弾です。
今回はなんとあの名探偵・法月綸太郎がほとんど登場しません。法月探偵は嫌いではないのですがちょっと愚痴が多くて・・(笑)
ところでこの短編集、前半と後半でまるで雰囲気が違う。後半はわかる人にはツボにはまって面白いとは思うのだが私には歯が立ちませんでした。

「重ねて二つ」
この短編集の中ではこれが一番お気に入り。
猟奇的な死体が登場し話のテンポもいい、ラストも勘のいい人は解ってしまうかもしれないが私は「おおっ」と思いました。法月氏にはこういうミステリーをどんどん書いてもらいたいです、ほんと。この短編集中、一番本格してます。

「懐中電灯」
これは捜査ものになるんでしょうかね。
淡々と進んでいき、ラストでの盛り上がりが見事。
一話目の「重ねて二つ」といい、この二話目といい法月氏は短編ミステリーに向いているのではないかと思うぞ。前短編集「法月綸太郎の冒険」も非常に面白かったもの。

「黒のマリア」
テレビの推理ドラマ用短編を小説用に書き直したお話。
密室物にちょっとオカルト風の味付けをしたものかな。なんとなく今邑さんの貴島刑事シリーズを思い出してしまう。
それよりこの関西エリアで放送された番組。法月氏他、綾辻行人氏(どんどん橋、落ちた・収録)、有栖川有栖氏(ペルシャ猫の謎・収録)の推理ドラマもあったようでぜひみたかった。

「トランスミッション」
このあたりから私の理解を飛び越え始めていきます。
本格物と思って読んでしまうのがいけないのでしょうねぇ。

「シャドウ・プレイ」
うーむ・・
これは私のお粗末な頭ではよくわからない。
とにかくシュールなお話です。

「ロス・マクドナルドは黄色い部屋の夢を見るか?」
結構面白く読めたのですが、これはパロディ小説なんでしょうねぇ。
元ネタがわからない私としては、結末がなんとも意味不明・・
こういったパロディの場合、わかる人にはとても面白いと思うのですが・・

「カット・アウト」
絵画の世界を扱ったミステリーと呼べるのかな。
最後は「ああ、なるほど」と思うものの、その方面の知識が欠如している私としては、先のパロディ小説同様それ以上の感慨が湧かなかったのが残念。

「......GALLONS OF RUBBING ALCOHOL FLOW THROUGH THE STRIP」
途中で投げ出した長編の冒頭、ということです。
というわけでこの短編?にだけ法月探偵が登場しますが、もしこの長編が完成していたらある意味ものすごい小説になっていたのではと思うぞ。
ほんのさわりの部分だけでそれがわかってしまうというのも名探偵・法月綸太郎ならではのことですな。(笑)
誤解なきよう書いておきますが、私は法月綸太郎氏のミステリー、結構好きなんですよ、ほんと。

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