異人たちの館 平成8年2月1日発行 平成8年2月25日2刷
折原 一 新潮文庫 680円 ISBN4-10-143911-7

折原氏のミステリーは「いったい何なんだ」と思うようなラストが多かったので(一つ手前で終わってくれると分かりやすかったりするのですが・・)それほど好んでは読んでいませんでした、今までは。

ただ、この新潮社のシリーズは綾辻行人氏の「霧越邸」や岡嶋二人氏の「クラインの壺」など名作が多く、この「異人たちの館」も傑作と評判だったので実は気になっていたのですが・・・
ところがいざ読んでみると、読みやすく・わかりやすく・面白い。さすが傑作といわれるだけあると実感。

ゴーストライターをする主人公が、失踪した小松原淳なる人物の伝記を書いてほしいという依頼を受けるところから長い物語がはじまり、例によって、現在の記述・過去の記述・作中作等、読者を煙に巻く仕掛けが多々でてくるのですが、それがうまく計算されていてどんどん引き込まれていってしまう。そして読了後、おそらく大多数の人がもう一度最初から読みなおしてみようとするのでは・・
折原氏のミステリーでは「覆面作家」「螺旋館の殺人」等、こういった「作家」が主役の作品が多いと思うが叙述トリックを使う上では恰好の設定といえますね。ただ今まで読んだものは、それがためあまりに多くのトリックを仕掛けすぎたように思う。それが今回は考え抜かれたシンプルさであるため抜群の効果を発揮したんだな。これで最後に妙な奥付でもあったら興醒めだったところです。

これはまさしくミステリーファンなら必読の折原一会心の一冊ですね。

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