夏の死 1991年8月5日第1刷
斎藤 肇 講談社ノベルス 720円 ISBN4-06-181543-1

過去の事件が現代に影響を及ぼすクリスティが得意とした回想の殺人物です。
こういったミステリーの場合、過去の事件が魅力的なものでないと詰まらない話になってしまうと思いますが、この「夏の死」の場合は合格点に達していると思うな。
そして事件が起こってから五年後、亡くなった彼女の恋人が関係者を集めてテーブルトークRPGで犯人をさがそうとする、という結構魅力的なストーリーであります。

序盤はホント面白く引き込まれて読んだのですが、中盤以降の展開はいったいどうしてしまったのかと思えるほど滅茶苦茶になってしまったのが残念。序盤は現実の視点とゲーム中の視点が章毎に分かれていて読みやすく期待感も高まったのに、途中からゲーム視点で進行中にいきなり現実の会話が入ったりと境界がなくなってしまう。しかも、なんのために現れたのかわからない探偵役風の人物まで登場して最初の設定などお構いなし状態。
こういった設定ならば、ゲーム終了後に真相があらわれるという展開(確かクリスティのポワロ物でカードゲームで真相を見抜く、というのがあったように思う)の方が面白いと思うのだが・・
まあでも実はゲーム主催者には別の意図があった、ということなのでこのような展開も仕方ないのかなぁ。

斉藤氏としては、ノスタルジックなラストを描きたかったようですが、私としては別な感動の余韻に浸りたっかった、というにが本音かな。

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