妖霧の舌 1992年11月20日初版1刷
竹本健治 光文社カッパノベルス 740円 ISBN4-334-07013-2

武藤類子・牧場智久シリーズの第二弾。

実は前作「凶区の爪」が投げ出したくなるのを無理に読んだ、という記憶があるので竹本氏の作品は私には合わないなと思ったのですが今回はパソコン通信絡みの事件ということで読んでみた次第。
一読して非常に読みやすくなったという印象。妙な蘊蓄もなくさっぱりしていて、これなら私同様今まで竹本本が苦手だった人にも抵抗がないのでは、と思いますな。これだけでもこの作品の評価は高いです。
ただ、パソ通やアニメに関する登場人物達の濃い会話があるので、そういうのが生理的に苦手な人にはやはり駄目かな。私は許容範囲内でしたが・・

事件自体も今回の作風同様さっぱりしたものでテレビの二時間ミステリーなんかにちょうどいいかも。まあ、濃い部分はうまくドラマ向けにするとして・・
これだけだとごく印象の薄いミステリーになってしまうんですが、この作品を忘れがたいものにしているのが主人公・牧場智久のライバルとなる桃井四段。
彼の強烈なキャラクターは主人公を喰ってしまっています。どちらかというと牧場智久は線の細い印象なので、強烈個性の桃井四段を主役にしたほうがインパクトあるのではと素人考えで思ってしまうなぁ。
実際、彼が探偵として活躍するミステリーを読んでみたい、と思うぞ。

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