新ホール建設ラッシュの一方で惜しまれつつも使命を終える
古き良きホールたち。ホールの真価とは。(97/04/21 掲載)
(97/07/01 改訂)
(97/10/20 追加)
小学校の講堂のその後についてお知らせします。 解体が来年早々の議会で決議されていらい、文化を守る会といっしょに 活動を続けております。
前回お話したとおり指揮者、 加奈井洋介氏と 番組製作者の鎌田氏と電子メールで知り合うことができ10月13日に波佐見町に きていただき講堂を見てもらいました。加奈井氏はサントリーホール、 カザルスホールも周知の方ですが6本の指にも入る音響的に見てすばらしい ホールと誉めていただきました。10人あるいは声楽と結び付けたコンサートなど、 小規模コンサートに十分利用できるとコメントをもらいました。 鎌田氏はNHKなどに番組を紹介する仕事をしておられ、 もし保存の方向に向かった時は2時間わくの番組の制作を約束してくれました。 波佐見町の紹介とミュージシャンをいれてコンサートを開くという番組らしいです。
また10月24日に雑誌無線と実験による音響測定が決定。 測定は長崎のかたにすでにやっていただいていますが、12月の雑誌に 掲載されるとあって全国の方にも見てもらえるすばらしい企画です。
ただ町長にも表敬訪問を加奈井先生とも行きましたが、問題はお金です。 修復に2億円ほどかかります。また新しいホールが建設されています。 来年4月完成予定です。誰かが資金援助してくれればよいのですが。
町議会議員と地元有志が県に陳情に行きます。 国指定の文化財に指定できると固定資産税を少なくてすむとか、 修理費用の補助などもあるそうですが、、、(97/10/20)
なによりもこの講堂がすばらしいのはその柔らかい響きにあります。木造漆喰構造の
せいでもあります。九州交響楽団第一フルート奏者永田さんが初めてこの地を訪れ
「ここの講堂は九州でも5本の指に入るすばらしいホールだ、 機会があれば録音を
したい。もし取り壊すことがあれば署名でも何でもします、是非連絡ください。」と
コメントもらいました。
新しいホールが建設中ということや、改修保存維持がかかるということで、町議
会の決議では僅差で、とりこわしを今年12月以降に800万円で実施するという
回答が来ました。
長崎総合科学大学1994年診断結果の報告を抜粋
当公会堂残響時間は空席時500Hzで1.9秒、1KHzで2.1秒、2KHz で2.2秒と中高域に山を作る残響時間。このように残響時間の長いホールは コンサートホールにてきしており、室容積からして室内楽アンサンブルむきである。 またとう公会堂は東京主婦の友会館のカザルスホールの残響時間に似ている。 音の拡散もよいことから、ホールの音響評価の高いカザルスホールと同程度の性能を 有している。チトセピアホールの残響時間特性やエコーパターンと比べても音響性能 は遜色がなく、音楽ホールとしては1級のホールであることが判明した。当公会堂は 木造ホールという希少価値と室内楽小ホールとしても1級品である。保存する価値は 十分であり運営の仕方によっては町づくりの中核施設となりうる。どうぞなにかいい知恵を授けてください。(97/07/01)歴史的価値
1)昭和前期の希少な大型木造館であること。
昭和前期は関東大地震後、次第に鉄筋コンクリート構造や鉄構造の普及に伴って 石造りや煉瓦作りの洋館はもはや建設されなくなった。元来少ない建築類型であるに 加えて、 戦後の立て替えや老朽化による取り壊し等により、今日ではきわめて 希少価値を有する存在となっている。2)建築技術史的にも貴重な遺構であること。
初期の木造洋館は、外観意匠として洋風を旨としたのに対し 構造的には伝統的な 和古屋を用いるのがほとんどで、双方がともに洋式に変化して、名実ともに洋式の 建築が成立するためには 本格的な設計、施工の技術の取得、普及が前提となる ため、かなり時代が遅れるのが一般的であった。その意味でこの建物は 大空間を 洋式トラスで架構した、練達期の木造技術をみることができる。加えてモルタル仕上げ の門柱、ポーチやホール内部の漆喰仕上げの諸要素はすべて左官仕事であるが、現在 に至るまでひび割れ一つ出ていないみごとな出来映えである。3)設計者、施工者が判明している点で学術的価値が高いこと。
長崎県東彼杵郡波佐見町宿
堀池吉和
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