漆は美しい塗料であると同時に、すぐれた接着剤でもあります。
古来より、漆の接着効果を利用して、割れたり欠けてしまった陶磁器の修理が行われてきました。金継(きんつぎ)・金繕い(きんつくろい・きんつくらい)と呼ばれています。

壊れてしまった器をあきらめるのではなく、修理して大切に使い続ける。さらには、その傷を隠してしまうのではなく、あらたな景色として活かす。
日本独特の、すばらしい考え方だと思います。


「金継」だからといって、必ずしも金粉を使う必要はありません。金でなくとも、銀が似合う器もあります。黒や朱の漆そのものの色が映える器もあります。
破片が揃わない場合も大丈夫です。欠損部分を補完して修理できます。
九谷のこっくりした色合いにしっとりと光る金粉が良く似合います。

広い金色の部分は破片が無かったところです。木で破片の形を削りだし、漆で接着することで元通りの器の形に復元しました。(小さい欠損なら、木を使わず漆の下地で作ることもできます)
染付の青に金粉が映えます。こちらはあまり磨きすぎずさらりと仕上げています。
柔らかい釉薬の色を邪魔しないよう、金粉ではなく銀粉を蒔いています。