battle4(2月第3週)
 
[取り上げた本]
 
1 「歪んだ創世記」       積木鏡介           (講談社)
2 「記憶の果て」        浦賀和宏           (講談社)
3 「Jの神話」         乾くるみ           (講談社)
 
 CAUTION! 今回は「Jの神話」がややネタバレ気味です!まだ読んでない方はここで止めるか、
      本文中のCAUTIONサインの所でお止めになることをお勧めします。・・・HOME
 
Goo「なんかしばらく音沙汰ありませんでしたが、どこか出かけてたんですか」
Boo「うん、取材でね。長野に一週間ばかし行ってたんだよー」
Goo「え!じゃあ、オリンピックの取材ですか?」
Boo「違う違う、光学機器の会社の取材。工場があっちの方にあってさー。工場見せてもらって研究
  所の人の話を聞いてた」
Goo「ウマイもん食べました?」
Boo「それが最低!温泉入り放題で夜は宴会づくし〜なーんて調子のいいこと言われたんだけど、嘘
  八百でさー。なんせすんげえイナカで店なんかなあんにもないのよ!泊りは社員寮でメシは寮の
  賄い(泣)」
Goo「と、ともかく機嫌直してメフィスト賞3連発と参りましょ」
Boo「長野の長い長い夜を、さらにさらにイカリに満ちたものにしてくれた3冊……クックックッ今宵
  の虎徹は血に飢えておるワ!」
Goo「……ま、まずは「歪んだ創世記」から。これは近ごろはやりのメタミステリというやつでしょう
  か。宇宙人からJ・パランスからクトウゥルーまで出てくる、型破りの作品でしたね。作者はF・
  ブラウンのファンだそうですが、アイディアはまさにブラウン的で、「後ろを見るな!」でしたっ
  け、あの短編を思い出しました」
Boo「何処がやねーん!ブラウンが泣くわい!私に言わせればこの作者は……」
Goo「この作者は?」
Boo「西澤保彦風の設定で「流水大説」を書こうとして思いきり!失敗してヤケクソになった「清涼飲
  料水」の弟子」
Goo「ま、確かに満艦飾の文体はいかにも同人誌風というか、若書きですが、あのアイディアは破天荒
  だったじゃないですか」
Boo「フツーあのネタで長編書くやついないって!まーそれこそブラウン風の短編がせいぜいのネタよ
  ね。それにしたって古くさすぎるけどねー」
Goo「えっと、次に何を書いてくれるのか?未知数の魅力があります!はい次!」
Boo「ま、この手は二度と使えないからね〜、次は何を書くのかたしかに楽しみではあるわね。
  んじゃ仰せの通り「記憶の果て」に行きましょうか。これは自意識過剰のマスターベーションって
  ところだわ。も・ち・ろ・んミステリーではありまっせーん!作者はラストで謎解きを放棄した上、
  あろうことか「コレはミステリではない!」と開き直ってる。まーご立派だコト」
Goo「ま、押さえて押さえて。これも人工知能ネタですが、その人工知能の正体は一ひねりしてあって
  面白かったですね。アイディアを活かすという意味で、青春小説仕立ての語り口も懸命な選択だっ
  たんではないでしょうか」
Boo「こんな自意識過剰野郎のグジグジした青春なんぞに付き合って、何が愉しいわけ?まあったく、
  このネタでクーンツかクライトンあたりに書かせれば面白いテクノホラーができたでしょうにねえ」
Goo「クライトン、嫌いだったんじゃ?」
Boo「この作者に比べれば100倍マシよ!ともかく私は、読者を無視したこういう独りよがりの姿勢が許
  せないのよね」
Goo「食べ物のウラミは怖いですね〜。いささか公私混同という気もしますが。僕は嫌いじゃないですよ、
  この作品。青春小説として読んでもそれなりにユニークだと思うし。なんかこう自意識過剰というこ
  とまで意識している自意識過剰さ、というか。なんとなくわかる気がするんです」
Boo「あんたいっぺんセラピー受けた方がいいと思うわ」
 
再びCAUTION! 「Jの神話」ネタバレ警報です!……HOME
 
Goo「も、何とでも言って下さい。次行きますよ「Jの神話」です」
Boo「これもねえ、ミステリじゃないわよね」
Goo「んー。まあ、ホラーですかねえ。でもこの3作の中ではエンタテイメントとして一番面白かったと
  思います」
Boo「ほほう、何が面白かったわけ?」
Goo「そりゃもちろん「J」の正体にまつわるアイディアですね。バイオホラーネタかと思ったらキリス
  ト教神話にまで結びつけていくんですからね……たいした剛腕ぶりですよ」
Boo「(^o^)(^o^)(^o^)(^o^)(^o^)」
Goo「なんですか、僕、なんかおかしいこと言いましたか?」
Boo「あんたねー、あのネタはギャグでしょーがー。だってさーナニがナニなのよー目玉がついてて走り
  回るのよーこりゃもう笑うっきゃないでしょー」
Goo「…………」
Boo「あー悪い悪い。でもさー「絵」として思い浮かべてごらんよ、いい?思い浮かべた?ねーギャグで
  しょ!少なくともそれがコワイって感じられるハズないでしょー?」
Goo「僕はでもけっこうスゴイ!と思いましたよ。たとえば前半の少女小説風の作りも、ある意味ミスデ
  ィレクションになってたようにも思えるし」
Boo「なるほどねー、キミはマジで読んだんだ。しかしさ、あれってAV的な発想だよね」
Goo「AVって、アダルトビデオですか?」
Boo「そうそう。だってさ、よくあるパターンじゃん。思いきしステレオタイプな女性キャラクター、た
  とえば清純な深窓の令嬢風の女子高生やら、革ジャンで身を固めた女探偵を、とことんなにしてしま
  うという。しかもあらゆる女を支配してしまうという」
Goo「なんかそれって……」
Boo「そ。これは男の身勝手な願望を忠実に実現したアンチフェミなポルノグラフィなわけ。というか、
  そのパロディかな。いやまあ、その程度には作者にも自覚的であってほしいと思うわけだけど」
Goo「うーん。それはちょっと言い過ぎでは?僕は「パライヴ」や「レフトハンド」の系列に連なるバイオ
  ホラーだと思いましたが」
Boo「まーいいけどね。あんたがどう読もうと。話違うけど、これってどっかで映画化してくんないかなー。
  まあ、日本じゃ絶対無理だけど」
Goo「リンチあたりに撮らせたら、面白いかも知れませんね」
Boo「いえてるー。私はぜひダリオ・アルジェントに撮ってほしい」
Goo「やれやれ。しかし、AYAさんなんでAVのことなんか知ってるんですか?」
Boo「出てたわけじゃないわよ。これも仕事でね、必要があって何本か見たの。つまんなかったー」
Goo「なるほど、そういった方面にも進出してたんですね」
Boo「弘法は筆を選ばずってやつよ」
Goo「なんか違うような気がしますが」
Boo「ま、いいじゃないの!ともかく今日の教訓は……」
Goo「はい?えらく突然ですね。ま、いいか。教訓は……?」
Boo「メフィスト賞にミステリを期待すんな!」
Goo「……やれやれ」
 
 
#98年2月某日/某北の家族にて
 
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