battle75(3月第2週)
 
[取り上げた本]
01 「聖悪女」 土屋隆夫          東京創元社
02 「牙王城の殺劇」 霞 流一          富士見書房
03 「事故係 生稲昇太の多感」 首藤瓜於          講談社
04 「学園祭の悪魔」 浦賀和宏          講談社
05 「桜姫」 近藤史恵          角川書店
06 「グランギニョール城」 芦辺 拓          原書房
07 「猫探偵・正太郎の冒険1」 柴田よしき         光文社
08 「それでも君が」 高里椎奈          講談社
09 「両性具有迷宮」 西澤保彦          双葉社
10 「パイド・パイパー」 ネビル・シュート      東京創元社
Goo=BLACK Boo=RED
 
●グッバイ・マスター……聖悪女
 
G「本邦本格ミステリ界の長老のお1人、土屋隆夫さんの最新長篇『聖悪女』が出ました。前作の『ミレイの囚人』から数えると、3年ぶりということになりますが、あのお歳からすれば新作を、それも長篇をお出しになるなんて、それだけでスゴイ! と思いますね」
B「あのお歳って……いったいあの方おいくつなの?」
G「え〜っと。1917年のお生まれですから、今年で85歳ということになります」
B「!……そりゃスゴイや」
G「まあ、年齢のことは別として、デビュー以来半世紀余にわたり一貫して本格ミステリ畑を歩み続けてこられた斯界の重鎮ですよね。どちらかというと地味で堅実な作風で。マニア受けするけれんがほとんどなく、しかも寡作ということもあって、その実力や活動期間の長さの割に目立たなかったんですが、創元社から文庫で作品集成が出始めたしこうして新作長篇も出た。確実に再評価の機運が盛り上がっている感じはありますね」
B「この方は、若いころから“本格の論理性と文学の融合”を1つのテーマにしてきたんだよね。それだけに“いかにも本格”なけれんがお嫌いのようで。そういえば、作中で使用するトリックは全て実際に“試し”てから使うという伝説があったわよね」
G「地に足のついた本格ミステリ技巧と、文学的なテーマを融合させた作品を着実に生みだしてきた……そんな感じですね」
B「代表作は、日本推理作家協会賞受賞作の、トリッキーなアリバイ崩し長篇『影の告発』かな」
G「ぼくは、シンプルだけど鮮やかな心理的トリックが印象的な『危険な童話』が好きです」
B「うーん、ロマンチックやのォ!」
G「ほっといてください。で、新作ですが。この作品は氏にとって“本格と文学の融合”という氏のテーマを強く意識したものであるようです」
B「そういう旨の記述が本文中にあるからなあ。しかし……うーん、これはどうなんだろう。昭和30年代のお話という設定だが、まさに作品自体がその頃に書かれたんじゃないかと思いたくなるような、古色蒼然たる書きぶりでさ。それも筋立ては中途半端な大衆小説そのものみたいで、正直いささか閉口しちゃったなあ」
G「まあ、たしかに文章だけでなく筋立ても少々古めかしいですよね。簡単に紹介しますと……これは不幸な生い立ちの女が辿った数奇な運命というやつで。あるハンデともいえないようなハンデを背負ったヒロインが、そのハンデゆえに遭遇した事件をきっかけに悪女を志し、各地を渡り歩きながら男をだまし1人で生き抜いていく。というのが前半」
B「ストーリィは古めかしく通俗な話で、とくだん何の新味もない。しかも肝心カナメのヒロインの心の動きがしばしば不自然で、リアリティに欠ける」
G「さすがに書き慣れた語り口でさくさく読ませますけどね。それに昭和30年代という設定からすれば、逆に時代色がよく出ているといえるでしょう」
B「いや、なんていうかこういった風俗小説っぽいものを書くには作者自身の感覚が決定的に古く、現在とズレている感じなんだよな。ヒロインの“悪女ぶり”も慎ましやかなものでさ、現代の読者の感覚ではいったいこの何処が悪女ななんだか分からないんじゃないか? そのくらいフツーの人なんだよね。だからぜんぜんインパクトがない」
G「ぼくらも含めて今の読み手は刺激物を摂りすぎて、スレまくってますからねえ……」
B「きみのいう通り、手慣れた書き振りでそれでもそこそこ読ませはするんだけどね。正直印象に残るようなエピソードは1つもなかったな。前述のようにキャラクタも影が薄いし。文学との融合といわれても、困ってしまうな」
G「ミステリらしい事件が起こるのは3分の2が過ぎたあたりですかね。いちおうフーダニット形式にはなっているんですが……」
B「これもいささかストレートすぎたかなあ。謎もトリックも謎解きロジックも、ことごとく短編向けのごとき小ネタであり、使い方にもあまり工夫が感じられないんだよ。前作では、それでもけっこう意欲的な大技を使っていたんだが……残念ながら巨匠老いたりの感がヒシヒシ。『ミレイの囚人』にはまだしも存在していたミステリへの挑戦心がもはやすっかり枯れ果てたかのようで、哀しくなってしまった。なんちゅうか作者も作品自体も時代からズレてしまった感じ」
G「いや、作者の一連の作品の中では、クオリティ的な面を別にしても異色作という位置づけになるでしょうね。ひょっとしたら将来珍品扱いされるのかも。その意味ではファン向けというか好事家向けですかねえ……本格としての期待をしなければそこそこ読める気はするのですが」
 
●バカミスという言訳……牙王城の殺劇
 
G「バカミス・キングとしてその名も高い霞さんの新作長篇は、話題の富士見ミステリー文庫からの登場です。えっと、当然これもシリーズもの(予定)なんですね。『フォート探偵団ファイル』(1)なんだそうです」
B「う〜む。わたし的には是が非でもシリーズ化は阻止したいところだが……ともあれ。えー、UFO、ネッシー、サスカッチといった奇現象の研究家として知られる“奇現象の父”チャールズ・フォート。その名前を冠したクラブ・フォート探偵団の3人組の元に、奇妙な捜査依頼が飛び込んできた。それは鰐ビジネス(ってなんやねん!)で巨万の富をなした、大金持の居城“牙王城”で発生した鰐誘拐事件だった」
G「天高く聳える巨大な天守にはエキセントリックな財閥一族が暮らし、ディズニーシーほどの巨大な敷地に80数匹の愛鰐たちが踊る牙王城……奇現象の予感に震えつつ勇躍乗り込んだフォート探偵団の一向を待ちうけていたのは、奇々怪々な連続首斬り殺人でした! 甲冑姿の騎士は籠を担いで走り、天守閣は消失し、UFOが出現し、鰐は空を飛び、鰐に食いちぎられた生首は雪密室状態で発見される。とーもーかーくッ! 次から次へと連発される奇現象、不可能犯罪の嵐は壮絶なほど。ボリューム的には薄手の文庫本なのですが、そこに盛り込まれた不可能犯罪怪現象の数といったらもう!(5分間絶句)」
B「なぁにいってんだか、このバカは。量が多けりゃいいってもんじゃないだろう。総体としてみるとてんこ盛りのトリックはいかにも玉石混交、というより石だらけ。お話自体も動機や犯人の動きなど、心理的な側面があまりにも不自然なので個々の事件のつながりが悪く、トリックの無理っぽさがいちだんと鼻についてしまったね。総括すれば、子供だましのアイディアを力づくで強引に小説“風”に仕立て上げているっていうレベルだな」
G「むー、たしかにおっしゃる通りなんですが、そうはいってもこの不可能犯罪の物量には、ただそれだけでびっくりさせられるでしょ。ぼくはこのビックリ感も貴重だと思うんだけどな。まあね、まともなミステリ読みからすれば、例によって大バカトリックの連打に過ぎないのは確かなんですが、それでもところどころで存外かっちりした仕掛が施してあって、油断できませんよ」
B「あー、鰐誘拐の“雪密室状態の檻のロジック”とかね。あれは私もけっこう感心した。でも、それだったらその“かっちりした部分”を中核に据えて、きゅっと引き締まった本格に仕上げてほしかったね。鬱陶しいだけの子供じみた大バカトリックの山は潔く切り捨ててさ」
G「そうかなあ。こういうのもありだと思うんだけどな」
B「ついでにいえば、いつものパターンからお下品さを抜いただけで、いちだんと締まりが無く陳腐なギャグも不発。キャラクタメイクのアイディアのなさ・薄っぺらさとも相まって、ことごとく滑りまくってひたすら寒いだけだもんなあ。ついでに文章もまたいつも以上に粗っぽいわよねー。シノプシスの荒書きそのものという感じで……これを青少年に読ませたらアカンだろ、といいたくなるくらいのお粗末。読んでいてダンダン哀しくなってくるぞ!」
G「むー、でも前述の通り光る部分はたしかにあるし、引っ繰り返したオモチャ箱みたいなこの賑やかさは好きですね」
B「きみってばつくづく趣味が悪いよなー。結局のところコレってさ、下手なてっぽも数撃ちゃ当たるよろしく乱れ打ちしたアイディアがたまさか1つ2つ光っているだけで、全体の9割は中途半端だったり半煮えだったり……はっきりいって読むに堪えない」
G「練り込み、作り込みが足りない、と」
B「そういうこと。なんだか作者はバカミスであること、ライトノベルであることを、作り込みの甘さの言訳にしているんじゃないかとまで思っちゃうほど。まさかそんなことはないと思うけどね!」
 
●警察官成長物語(純情篇)……事故係 生稲昇太の多感
 
G「続きましては首藤瓜於さんの新作。『脳男』で第46回乱歩賞を受賞した作者さんですね。そしてこれが氏の受賞後第1作ということになります」
B「第46回乱歩賞は2000年のことだからねえ。……ずいぶん時間がかかったもんだなあ」
G「いや、でもこの作品は連作短編で、雑誌『小説現代』に2000年10月から2001年11月にかけて連載されたものですから。発表されはじめたのは受賞直後なんですよ」
B「……って、短編5篇で1年以上かかってるのかー。なんだかたいへんだなぁ」
G「ともあれ、内容をご紹介しましょう。処女作は特異なヒーローを主人公に据えたサスペンスだったわけですが、この新作ではガラリと趣向を変えて、交通事故係に勤務する若い警官を主人公にした熱血(?)警察小説です」
B「まあ……そうだよね。リアルな警察モノっていうと、最近では横山さんなんかが思い浮かぶけど、こちらはミステリとしてはもう少しユルイつうか……NHKの連続TV小説みたいな青年警官成長ものだな」
G「主人公は愛宕南署に勤務する、22歳の交通課交通事故係巡査・生稲昇太。一生派出所の巡査だった父親に憧れて警察官となった、今どき珍しい一本気な青年警察官です。1つ目の『交通事故係』は主人公が働く交通事故係の日常、かな。事故現場を逃れて自宅へ帰ってしまった運転手の粗暴な態度から、飲酒運転を疑う主人公。だが上司はそれを握りつぶそうとします……青年らしい正義感の前に立ちはだかる小さな“現実”ってやつですね」
B「ありがちなテーマをありがちなネタで描いたありがちな話。交通事故処理係の仕事蘊蓄はちょこっと面白いけどね」
G「まあ、定番といえば定番ですが、ここまで一本気な……というかほとんど単細胞に近い主人公というのが逆に新鮮でしょ?」
B「わたしゃこういうやつが警官やっていいのかな、とか思っちゃったけどね。特に次の『現行犯逮捕』なんて警察ファッショそのものじゃん」
G「自転車に乗っ老婆が交差点で倒れ、そのまま死亡しちゃう話ですね。老婆のすぐ後ろにいたシャコタンの青年は、彼女が勝手に倒れたと主張するけど、主人公は接触と判断して逮捕しちゃう。しかし……」
B「直情径行、近視眼的な正義感が空回りしてばかりの主人公は“坊っちゃん”みたいだよな。こんな予断だらけの警官がいたら、やっぱ困るだろう。小説としても単純すぎるし」
G「けど、だからこそ結末の苦さがよく効いてるし、追々続いていくお話での主人公の成長ぶりがしみじみ伝わってくるわけですよ。続く『新年会』では主人公はさらに苦い現実を味わいます。警察署内の政治、己の未熟さ、敵意を向きだしにする市民……まさに主人公は八方塞がりに追い詰められるんですが、最後の最後でささやかな“真実”が明かされ、主人公も読者もホッとします」
B「まあなあ、ありがちな話を読ませて“巧い!”と言わせるには、作者にはまだキャリアが不足している感じだな。続く『物証』は、これも警察絡みの蘊蓄ネタが面白いね。というのは民間の“事故車運搬業者”の話なんだけど、この業者が、自分の運ぶ事故車に乗っていた無残な遺体をきれいに整えることを習慣にしているんだな」
G「先月の『ダーウィンの剃刀』の事故復元調査員よろしく、事故調査のプロである警官が見逃されていた物証を鮮やかな推理で見つけ出すエピソードは好きですね。こういう“プロの物語”ってジャンルを問わず面白いです。ラストの『まみ』は同じコンセプトですが泣かせる話。ささいな事故の犯人として拘置された男は、騙されて身代わりにされた? 不器用に不格好に真実を追う主人公を、黙って支えてくれるプロたち……泣かせますねえ!」
B「ていうか、キミってば単純すぎ。作品としてのコンセプトが定番っぽいのは悪いことじゃないけれど、だったらもう少し小説として工夫してほしいじゃない。何もかも読者の想像を一歩も外れない展開しかしないってのは、どうかと思うぞ」
G「ぼくはむしろ、このストレートさがシリーズの売りなんじゃないかと思いますよ。主人公自身がともかく一本気な男なんですから、突進しては頭をぶつけ、あっちこっちで摩擦を起こしながら、それでもまっすぐなまま成長していく……なんかこう気持の良い小説だったな。ミステリとしては確かに見るべきところはさほど無いけど、ぼくは好きですよ」
 
●“あっち側”へ……学園祭の悪魔
 
G「なんだかんだいいながら、これでシリーズ6作目。『学園祭の悪魔』はじつはけっこう順調に巻を重ねている浦賀さんの安藤直樹シリーズの最新作です」
B「なんだかんだいいながら、それにつきあってる自分が信じられない気もするが……。ついにというかとうとうというか、ここ数作の逸脱ぶりもここへきて極まったようで、いよいよ“あっち側”へ片足突っ込んだ感のある作品だったなー」
G「まあ、もともと何でもありといえば何でもありのシリーズですが、それでも“これ”にはちょっとばかし驚いたでしょ。内容、行きます。語り手は女子高生ですね。えっと……学園祭の模擬店でフランクフルトを売る彼女の元を訪れた、3人の大学生。その1人、同級生の彼氏だという安藤直樹が妙に気になるヒロイン。折しもご近所では謎めいた連続殺犬事件が多発し、全国規模で続く女性連続惨殺事件の影が徐々にヒロインの生活を脅かし始める。歪んだ悪意と裏切り、掟破りな密室。どんでん返しの果てに“名探偵”は、ヒロインを救えるのか、それとも」
B「なんともはや要約しにくいお話だよな。まあ、いつもの憂鬱さは100倍増しだけど、本自体は薄いし事件は続発するしでクイクイ読める。読めるが後味はおっそろしく悪いから、クイクイ読んだことを後悔したくなるという仕掛け」
G「このメインアイディアは、しかし掟破りな浦賀作品の中でも相当以上に強烈ですよね。正直びっくりさせられました。本格としてのまとめ方もいつになく(ある意味)コンパクトに、シャープにまとまっている感じで……ただ、シリーズ読者でなければついてこれないのは確かですけど」
B「でもさぁ、いっちゃ悪いけど浦賀さんの逸脱の仕方ってスマートでないよね。まあ、殊能さんや麻耶さんといった怪物じみた才能がひしめく方向性だけに、辛いというのもあるんだけど。きれいに決まらないというか、ヤブレカブレというか」
G「ぼくは面白かったですけどね。少なくとも作者がやりたいことは明快でしょ。“シリーズもの”ということを本格ミステリとしてのネタにした作者のアイディアはユニークだし、計算もそれなりに行き届いていると思うんです」
B「そうかな。どっちかっていうと、その“絵”の描き方も“計算”も自己満足で終わってしまっている気がするね。もう少し読者という存在を念頭に置くべきではないかなと、そんな風に思っちゃうなあ」
G「たしかに、好き嫌いがモノスゴはっきり出そうな……というか、好き嫌いでいえば好かれることはほとんど無さそうなお話ですが、あのアイディアは、こりゃやっぱり一見の価値があると。ぼくは思いますよ」
 
●完璧な世界……桜姫
 
G「近藤史恵さんの新作長篇『桜姫』は、定評ある“歌舞伎もの”。歌舞伎は見たこともないし興味も全くないぼくのような読者でも、楽しく読めちゃうんだからスゴイですよね」
B「巧いと思うし、作者自身の歌舞伎に対する思い入れがとてもいい形で発揮されている感じだな。シリーズ前作の『散りしかたみに』でも語り手を務めていた歌舞伎役者・小菊が視点人物として再登場し、名探偵役も同じく私立探偵小泉文吾なんだけど、今回はもう1つ別の視点が導入されることで、物語に一段と奥行きが出ているね」
G「というわけでアラスジです。まずは、その“もう1人の視点人物”笙子の物語です。梨園の名門に生まれながら、父親に反撥して1人暮らしをしている女性・笙子は、希有な才能を持つ大部屋俳優・中村銀京と知りあい、やがて愛しあうようになります。2人に共通するのは、今は亡き笙子の兄・音也の遠い思い出。なぜかその音也を殺す悪夢を幾度も見ていた笙子は、銀京の語る兄の思い出にも微妙な違和感を感じます。夭逝した音也の死に隠された秘密とは、何なのか……」
B「では、もう一方は私が。えっと、豊かな才能と如才なさでぐいぐいと頭角を現す銀京……しかし、その手段を選ばぬ上昇志向に、小菊をはじめ反感を覚える者も少なくない。さらに銀京と笙子の交際は、計算高い銀京が笙子を利用しようとしているのだという憶測が広がって、梨園はただならぬ雰囲気につつまれる。そんな折、舞台で起こった事件。子役の少年俳優が終演直後から失踪し、翌日死体となって発見されたのだ……少年の死は事故として処理されるが、小菊の師匠・菊花は小菊を通じ、小泉文吾に秘かに事件の調査を依頼する」
G「遠い過去の兄の死、そして子役少年の死という一見なんの関係もなさそうな2つの謎解きが、歌舞伎の世界観を通じて呼応しあい、1つのテーマとして浮かび上がってくるラストへ至る構成は、なんというか実に見事としかいいようがないですね。さらにいえば、見る人によってまったく正反対のイメージに変わる中村銀京という謎めいた役者の造形も素晴らしくて、このキャラクタ自体が2つの謎解きを結びつけていく設定も鮮やか。実に隅々まで作者の計算が行き届いているんですね。なのにその計算高さを一切感じさせない完成度の高さは、さすがというかなんというか……。見事なサプライズエンディングと共に、恐れ入りました! というしかありません」
B「たしかにそうだね。今どきの長篇としてはごく薄手のボリュームなんだけど、そこで描かれる世界の濃密さ、そして広がりは只事ではない。歌舞伎という題材とミステリとしての仕掛け、そして作者が用意したテーマが見事なまでに重層的に響きあっているんだな……ただしミステリ的な仕掛けを摂りだしてみればごく薄口。謎解きもいってしまえばご都合主義なもので、そういった面での満足感はほとんどない。むろん、これはけっして作品としての瑕ではないけれど、もう一段ひねりがあっても良かったような思いもある。あと、中村銀京という興味深いキャラクタの扱いには、もう一工夫ほしかった気がしないではないな」
G「そうかなあ。これはもうこれで、発端からラストまで一部の無駄もないし隙もない。完璧に完成されているとぼくは思いますね。小さく閉じた、それも特異な世界ですが、その輝きは本物です。歌舞伎というとちょいと敷居が高い感じがするんですが、前述の通りそんなこと全然ないですし。もっともっと多くの人に読まれて然るべき、質の高〜いミステリ小説ですよ」
 
●正統にして挑戦的……グランギニョール城
 
G「続きましては芦辺さんの『グランギニョール城』、行きましょう。例の原書房の本格ミステリ叢書“ミステリーリーグ”の1冊で、第2回の本格ミステリ大賞候補作品。政宗九さんのトコの“ネットミステリ者が選ぶ「本格ミステリ大賞」”では堂々の大賞受賞作品となりました」
B「ああ見えて精力的に、そしてマニアックに、ひたすら本格ミステリを書き続けている芦部さんらしい“こだわりとチャレンジ精神”あふれる作品ね。ただ、わたし個人としては、これが芦部さんの2001年度最良の仕事とは思わないけどね」
G「というわけで内容です。舞台はヨーロッパの深い山中にそびえる城・アンデルナット城。歴史と伝統に彩られたこの城も、いまやアメリカの富豪に買い取られ移築工事が始まろうとしています。そこでその偉容の見納めにと数人の客が招待され……いわくあり気な客たちが、この古城を訪れたところから物語は幕を開けます。名探偵あり、美女あり、謎の中国人ありという多士済々の客たちが訪れたその夜、嵐によって城は外界との連絡を絶たれて孤立します」
B「何から何まで黄金期の古典本格のお約束通りに展開するわけだけど、これまた深い作者の企みのうちということで……むろん! 嵐の夜、惨劇は起こった。不可能状況下のもと次々と発生する残虐な殺人は、さながらグランギニョールの殺人劇を思わせ、事件の背後には深い歴史の闇をうかがわせる。一方、ところ変わって現代日本。名探偵森江春策は、旅の途上である人物の死を看取る。森江の目の前で毒死した被害者は、なぜか幻のミステリ雑誌『ミステリー・リーグ』の廃刊号を所持しており、その雑誌には覆面作家による本格長篇『グランギニョール城』の問題篇が掲載されていた。雑誌の廃刊にともない失われたその解決篇、さてまた謎めいた毒死事件の謎を追ううち、名探偵はいつの間にか『グランギニョール城』の世界に入り込んでしまうのだった……。時を越えて不可能趣味あふれる古城の連続殺人に挑む、名探偵の推理やいかに!」
G「古典本格の道具立てとスピリットを今日的な本格ミステリの技法と結びつけるという、そのコンセプト自体はさほど珍しいものではありません。が、作者は昨今流行りのメタフィクショナルな趣向を応用。しかもそこに前例のない、いかにも古典マニアらしい“こだわりの大技”を用いて、距離的にも時間的にも、そして“次元的にも”かけ離れた2つの世界を結びつけ、レギュラー探偵である森江春策にグランギニョール城の不可能犯罪を解かせる、という離れ業を見せてくれます。……これには本当にびっくりしましたね!」
B「うーん、この大技の是非については議論の分かれるところだと思うなあ。まあ、昨今のメタ趣向に飽き足りない作者のこだわりが存分に発揮されている感じで、個人的にはこういうの大好きなんだけどね。ただ、いかんせん詰めが甘いとも思うのよ」
G「詰め?」
B「うん、要はその大技を取り巻く小技トリックの数々がいかにもおざなりというか、芦辺さんらしからぬ大味な仕上がりで、全体としてみたときにいまひとつ完成度に物足りなさが残る。大技を使っているからというよりも、仕上げの部分で練り込みが足りなかったような、そんな印象なんだね。だからなんとなし、ゴチゴチとあちらこちらで歪な角が残って大味で、しかも軽くて。せっかくの古典本格趣向にどこか浸りきれない恨みが残るんだよね」
G「でも、たとえば本叢書の元ネタとなっている雑誌『ミステリー・リーグ』を、重要な小道具として登場させていることをはじめ、全編にちりばめられたこだわりの深さ、遊び心の豊かさは思わず頬が緩みますよね。もちろんメイントリックの趣向も含めて、古典本格の遊び心に徹底してこだわった、マニア好みの1作だと思います」
B「いやあ、好きだよ、私だって。好き嫌いでいえば大好きなんだ。だけども今日の本格としてみたとき、その完成度というか洗練のされ方という点では、いささか不満が残るということ。好きなだけにもったいないなあと、そう思っちゃうわけだ」
G「でもまあ、いずれにせよ本格好きなら読んでおいて損の無い、というか読んでおくべき1冊であることに変わりはないでしょう。いまもっとも脂の乗った本格ミステリ作家の、これは正統的にして挑戦的な作品なのですから!」
 
●手堅い猫エンタテイメント……猫探偵・正太郎の冒険1
 
G「長短編どちらでも大活躍の“猫探偵・正太郎シリーズ”の、これは短編集。柴田さんはたいへん作風の幅が広い作家さんですが、本格ミステリの領域はこのシリーズでもってカバーしている感じですかね」
B「そういうことになるかな。まぁ、いかにも幅広い作風をもつ作家さんらしい本格味薄口の軽エンタテイメントって感じだな。6篇の短編が収められているけど、これは特に1つ1つ紹介するまでもないだろう」
G「たしかに本格プロパーの作家さんの作品に比べると本格味は薄口ですが、さすがにツボは心得ているというか。本格としてのポイントはきっちり押さえつつ、読みやすさを強く意識した口当たりの良さはさすがです。あと、もちろん“猫探偵”という探偵役の特殊性を活かした事件ー謎ー謎解きは、薄口ながら気が利いているものが多いと思いますよ」
B「そうそう、この作家さんってセンスはあるんだよなー。だったらきっちりぎっちり最初から最後まで本格ミステリ尽くしの作品を作ってくれたらむっちゃすげえもんができるような気がするんだけどね。ま、そういうコンセプトのもとに書かれたであろう“ミステリー・リーグ”の『風精の棲む場所』だって、あのありさまだったからなあ……プロパー本格はあまりお好きではないんだろうな、きっと」
G「とはいえ、今回の『正太郎シリーズ』はいままでとは少々違ってますよね」
B「だな。従来のシステムだと、猫の正太郎の視点で事件の発生〜解決が描かれてたもんね。で、猫とその仲間が猫流のやり方で謎を解いていくのが売りだった。ところが今回は収められた6篇のうち半分が人間の視点なんだよな」
G「しかも、その視点人物ってのが犯人役のストーカーだったりするわけで。倒叙というか、サスペンス風の物語になっているんです。むろんいずれも謎解き役/解決役は正太郎なんですが、視点が180度異なる2種類の方向性で描かれることによって作品世界に幅が出ているし、短編集としてもアクセントが効いて一段と面白いものになっていますね」
B「どっちかっていったら、人間視点の方がよくできている気がするな。まぁ、いつもの猫視点の作品は“日常の謎猫バージョン”という以上の工夫は何もない平凡なパズラーだから、こっちの点が辛くなってしまうのかもしれないけどね」
G「この手の作品についてよくいわれることですが、猫好きな方には、安心してお勧めできる手堅いエンタテイメントって感じはしますよ」
B「悪いね。あたしゃ猫派でも犬派でもないんでね」
G「じゃ、何派なんです?」
B「うるさいな〜。動物は嫌いなの!」
 
●ディティールだけの世界……それでも君が
 
G「えっと続いては、ayaさんの強い希望によりGooBooでは扱うのをご遠慮させていただいている『薬屋さんシリーズ』で有名な、高里椎奈さんの新作長篇『それでも君が』。密室本ということで、久しぶりに取り上げてみます」
B「これも『薬屋さんシリーズ』同様に“強い希望”しちゃダメ?」
G「ダメ!」
B「……どうなっても、しらんぞ」
G「……。というわけで! こちらは作者の看板シリーズである『薬屋さんシリーズ』ではない単独長篇。ちゃんと密室もでてきますしね、謎解きもある……異世界もの本格といっていいかと、思ったりもするのですが」
B「ほにゃらかファンタシィ“ミステリ篇もどき”つうところか……。さっさと内容を紹介したって!」
G「はいはい、えーと。そこはいずこともしれない小さな、閉ざされた世界。どこからともなく丘の上に現れる記憶を失った子供たちは小さな家族を作り、平和に暮らしています。森の向こうの町に暮らす不思議な一族とも仲良くつきあう平和で牧歌的な日々が流れ……けれど、新しく家族の一員として少年・キンカンが加わり、流星雨が降った日の夜明け。事件は起こります。無惨に切断された死体が発見されたのです。小さく閉ざされ、誰もが顔見知りのこの世界にあっては、殺人を犯すのは異邦人しかいない。不幸な偶然から疑われることになったキンカンは町の住人たちから追われ、必死に逃げ回ります……」
B「異世界ということは読み初めてすぐ分かるのだが、そこがどんな異世界なのかはなかなかわからない。少女趣味満載な幻想世界ライフのディティールは、これでもかというほど丁寧に描かれているんだけど、世界の原理そのものに関して作者はあまし考えてない様子なんだよな。とりあえず密室だから……ということで都合よくでっち上げただけの容れ物だから、その容れ物の世界としての原理までは考えが及ばないというか」
G「とはいっても、異世界ものとしての密室のアイディアは、シンプルだけどちょっと面白い。サプライズもそれなりだし、素っ頓狂な味さえあって……密室本のなかでは、ある意味もっともストレートに密室に挑んでいる作品の1つだと思いますよ」
B「“密室のため”にだけ作られた世界はいいさ。密室本なんだから。ただ、そのアイディアのミステリとしての処理の仕方、トリックの扱い方には疑問が残りまくりだな〜。謎解きもえーかげんだし。だいたいサプライズっていうけどさ、こいつの場合は“そりゃないでしょ!”って感じの驚きだよ」
G「ミステリとしてのネタの扱い方は、たしかにスマートとは言いかねますが、ファンタシィな世界観にはフィットしているといえるのでは。ま、そうはいっても読み所は、この作者お得意の“繊細な心と心の葛藤”でしょうが」
B「んなの単なる鬱陶しいウダウダだ! とは、まぁいわないけどね。私はもう読みたくないのはタシカだぞ。あとさあ、この世界の原理に関してラストで小さなオチがつくんだけど……これも幼稚すぎやしないか? ファンタシィとしては手垢つきまくりの、いっちばん陳腐なオチだと思うのだが……それともこーゆーのが最近は新鮮なのかね?」
G「んー、まあ、どんでん返しとかであっといわせるつもりは、ないんじゃないかなーって気もしますけどね……」
 
●面白楽しいおゲレツ……両性具有迷宮
 
G「続きましては西澤さん、行きましょう。長篇『両性具有迷宮』は、本格でもないし、ミステリとしてもキワドイところ。GooBooの守備範囲ではないような気もしないではないんですが……面白いからまあいいか。西澤さんだし……って感じで」
B「勢いあまってこんなんできましたってノリだわな。或いはこういうのを書いて息抜きしているのかも。まあ、これまた作者の作風の幅の広さを示す1冊ではあるだろう」
G「内容ですが。ヒロインは、かの白百合小説家・森奈津子さん(いうまでもなく実在の人物)。ある晩、コンビニに寄ったヒロインは、居合わせた十数名の女性客と共に突如昏倒。目覚めたら何やら奇怪な現象が……女性であるにも関わらず、コーフンすると股間からペニスが立ち上がるという、嬉しいもとい困った体質になってしまったのでした。夢に登場したおぽんちな宇宙人によると、彼らの侵略兵器が誤爆した影響だとか。これ幸いと大喜びで“使いまくる”ヒロインでしたが」
B「なぜか突然身辺で次々と殺人事件が発生しはじめる。コンビニ店員が殺され、女子大生が1人、2人と殺されて。被害者を結ぶ糸を見つけられない捜査陣を横目に、ヒロインはひらめく。もしやこれってあの時コンビニに居合わせた女たちなのでは!? ……特異な体質を活かしまくったヒロインの捜査が始まる!」
G「ミステリ的な仕掛けはミッシングリンクテーマのホワイダニット。特殊ルールを応用した1アイディアは、西澤作品としては小粒ですが、これはまあ主題ではないですからね。ともかくこのかっちりしたミステリネタを中心に置くことで、単なるすちゃらかSFエロホラ譚にしっかりした流れが生まれています」
B「まあ、作者が書きたかったのは、この強烈なヒロインの波乱万丈ポルノなんだろうけどね。たしかにあの手の物語はえてして一本調子の単調なものになりがちだから、お得意のミステリねたでサスペンスを生み出しているのは巧い仕掛けといえるだろうね。笑えるポルノとしてよくで来た作品だと思うよ」
G「西澤さんのねちっこい文体がポルノ描写にうまいことはまったようで、なんというか“読んで面白いお下劣さ”が巧みに醸し出されていますよね」
B「私的にはSFネタの部分はもっともっとぶっ飛んだ、とことんスチャラカなホラ話になってもよかったんじゃないかって気がする。ヒロインの強烈さに比べると、物足りない脱力ぶりで。まあ、どうこう批評するなんてヤボに思えてくるたぐいの作品だけどね。読んで、笑って、ハイオシマイ。それでいいんじゃないの?」
G「しっかし、これで初めて西澤作品に遭遇した人は、ビックリするだろうなあ」
B「それもまた出会いの1つではある、と」
 
●良い小説を読む喜び……パイド・パイパー
 
B「あ、なんだ。『両性具有迷宮』が10番目の椅子じゃなかったのか」
G「まあ、それでもよかったんですが、今月はどうしてもこの『パイド・パイパー』も紹介しておきたかったんですよ……いい本でしょ?」
B「うん、これはいいね。とてもいい」
G「というわけで、ネビル・シュートさんの長篇冒険小説『パイド・パイパー』をご紹介します。ネビル・シュートという作家さんは、日本でもSF畑においてはたいへん有名な方で。特に『渚にて』という人類破滅もののSF長篇は、破滅ものSFの里程標的作品としてよくオールタイムベストなんかにもあげられていますね」
B「私もずいぶん昔にその『渚にて』を読んだくらいだなー。正直、他の作品のことはほとんど知らなかったよ」
G「破滅もののSFとしては異様なくらい静謐な……いってしまえば地味なお話でしたよね。これは映画にもなってますね。そちらもなかなかよい映画なので、ご興味がある方はご覧になってみてください。で、そんな経緯もあって、この作家さんについてはいわば地味でブンガクテキな作家というイメージがあったのですが、じつはこの方ってSFだけでなく冒険小説なんぞも幅広く書いてらっしゃる、欧米では結構知られたベストセラー作家さんらしいですね」
B「らしいね〜、私もビックリした。もちろん『パイド・パイパー』を読んで、もっとびっくりしちゃったんだけどさ」
G「というわけで『パイド・パイパー』ですが、これは作者の最高傑作といわれる冒険小説でありまして。サブタイトルに『自由への越境』とあることからも分かる通り、第二次大戦を背景に、敵地からの命がけの脱出行を描いた物語なんですが……だからってこれを、単なるアクション&サスペンスストーリィと思ったら大間違い! なんですよね〜」
B「ぐだぐだいってないでアラスジ行こ、アラスジ!」
G「了解です。舞台は第2次大戦の暗雲迫るヨーロッパ。息子を戦争で失い、英国で孤独な暮らしを送っていた老人ハワードは、無聊を慰めるために趣味の釣り道具を持ってフランスへ出かけます。ところが。ハワードが釣り三昧を楽しんでいたところへ、突如ナチスドイツがフランスへ宣戦布告。猛然とフランス本土への侵攻を開始します。すわ一大事とばかりに英国へ帰還しようとする主人公」
B「ところが義理ある人から頼まれ、人の良い老人は2人の幼い子供を戦火の及ばぬ(当時)英国まで連れていくことを約束してしまうんだな。破竹の勢いで迫り来るドイツ軍、寸断された鉄道網、混乱しきった難民の群。最悪の状況下、不案内な土地に放りだされた老人と2人の子供は、遥かな英国をめざし、おぼつかない足取りで一歩一歩あるき始める……と。……なんというかな、冒険小説の定番をとことん裏返したような設定にまず驚くね。主人公は心臓を病むひ弱な老人だし、連れは事あるごとに熱を出すわ腹を減らすわ、やるなと言われたことばかりやりたがるわ、の子供たち。何しろ占領下の地域では英国人であるということが知れただけで拘束されちゃうわけだから、老人は必死でしゃべらせまいとするんだけど、いくら止めても子供は喋ってしまうものねぇ。しかもさあ、ハワードが連れていく子供たちの数は、旅路が進むにつれドンドン増えていくという笑えない喜劇的状況まであったりして、なんともかんとも」
G「まさにそういった絶体絶命の連続を、老人は持ち前の忍耐力と知恵と“善意”でもって1つ1つ乗越えていくんですよね! そこには派手な殴り合いも撃ち合いもありません。いってしまえば、冒険小説であるにもかかわらずアクションシーンなんて1つもないんです。なのに作中では終始、強烈なまでのサスペンスみなぎっているんですね……。これはもちろん前述の設定自体の妙もあるんですが、なにより登場人物が1人残らずくっきりと、見事に立ち上がっている点が大きいんじゃないでしょうか」
B「それはいえるなー。特に老いの無力感と強い意志を合わせ持つ主人公は、じっつに強烈な印象を残すね。なんたって彼はその絶体絶命の状況下にあっても、意志の力以外なに1つ頼るものが無いわけでさ。なんちゅうか、これがあのジョンブル魂ってやつか、とシミジミ実感しちゃったくらいだよ」
G「もちろん他の登場人物たちも同様ですよね。敵であるドイツ軍兵士も含めてどのキャラクターも、簡潔に、しかし紛れもなく人生を背負った人間として描かれている。このことが丁寧な旅路のディティールの描写と共に、シンプルな物語に豊かな彩りと深い奥行きを生みだしているんですよ。……なんといいましょうか。これが小説というもんだなと、ええもん読ませていただきましたと。久しぶりに作者さんと出版社さんに感謝したくなっちゃいましたね!」
B「読み始めたら止められない波乱万丈の冒険小説であり、しみじみ胸に染みてくる老人小説であり、切なくなるようなラブストーリィでもある。まさに良い小説を読む喜びが、ここにはぎっしり詰まってる……傑作だよ、これは」
 
#2002年3月某日/某スタバにて
 
HOME PAGETOP MAIL BOARD