cure1  発狂した世界の寂しいフリークスたち  MOON(PS)

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ここではだれもが自分だけの小さな秘密を抱き、自分だけの深い心の傷を負う。
幸せの形も不幸の形も人それぞれであるように、狂気の形もまた人それぞれ。
だから、だれにも気づかれないまま、みんな静かに少しずつ発狂していく。
悲しくて寂しくて。いびつな心をますます歪めて、誰もがいつか狂ったフリークスになる。
だからといって、それを救ってやろうだなんて、思いもしない。
そもそも何が解決か、何が救済か。
知ってるやつはどこにもいないのだから。
ぼくにできるのは、彼らの話に辛抱づよく耳を傾けること。
ただそれだけ。
そうして、ぼくはかれらと共に、幾重にも重なり合い縺れあった寂しさの糸を紡ぐ。
何がいいとか悪いとかそういうことではなく。
ましてや救うだなんて思いもせずに。
少しずつ、ぼくらはぼくらのささやかな狂気と絶望を共有し傷を舐めあう。
癒すことで癒され、癒されることで癒す。
奇跡も、伝説も、魔法も、英雄も、なにひとつ存在しないこの“リアル”では、
それだけが、 たった一つ残された、救済なのだから。
それにしても。
果てしない絶望と共に在ることの、この、なんという甘美な安らぎ……。
 
 
cure2  死して屍、拾うものなし  天誅(PS)

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夜の闇が城下の町を覆い尽くし、月はもとより星さえ見えぬ。
遠く犬の遠吠え。街角に、ひと気も絶えた。
われら闇に生きるもの。夜こそが忍の在る場所なり。
町民の視線を避け、犬どもからも気配を断って、闇を縫うて走る。走る。
鉤繩を放つ。そして一気に屋根の上へ。
見下ろす屋敷のそこここに、一ツ、二ツ……見張りの姿がぼうと浮かび上がる。
屋根を飛び降り、壁に吸い付き、まずは一人。背後から忍び寄り喉元を一太刀で。
血飛沫を避けて地に伏せ、木の陰へ跳ぶ、そしてまた一人。剣を使わず首の骨を一撃。
不覚!見られたッ!膨れ上がる敵の殺気。咄嗟に煙玉を地面に叩き付け、白煙に紛れて再び屋根に上る。
そして、また殺戮へ。……一刻も経たぬうち、屋敷は屍の山に覆い尽くされる。
噎せ返るような血糊の匂いを纏うたまま、天井裏から座敷を窺えば、
悪徳商人は異変に気づかぬまま、女遊びにうつつを抜かしている。
ほう、ここにも外道がおるわ。
知らず、口もとに酷薄な笑みが浮かぶ。ぬしはすでに屍じゃ……。
外道であろうよ。鬼畜であろうさ。われら、人にして人にあらず。忍びなり。
いのちなど、友など、妻など、おもい人など、もとより持ちあわせぬやからなり。
さればこそ、われら忍の者。死して屍、拾うものなし。