YABUさんの推理-2
 
YABUさんのこの推理には、実は非常に感服しました。 
なぜなら、ぼくの「解決」とはまったく違う視点からのアプローチであるにも関わらず、 
基本的な謎は、すべて論理的に解かれてしまっているのです! 
おそるべし、迷&名探偵YABUさん!
 
 なんだかんだいって、結局、act1は解かれてしまいましたね。
 ふふふ。モース警部と呼んでくれたまえ! ちなみに今度のact2は、んもー一発で正解する自信あり!
 ほほぉ。ま、うかがいましょう。
 では、説明しよう。……この事件、関係者の証言を検証してみると、明らかに矛盾する部分があるわけです。
 そうですね。で、それは?
 もちろん!光子さんの証言で、鬼瓦と格闘している内に田中さんが転落したはずなのに、
  死体の状況は“田中さんの死体の下に鬼瓦の死体がある”という部分です。
 たしかに矛盾していますね。先に落ちたはずの人物の死体が上になっている。
 この矛盾した状況を説明する推理としては、これしかありません。
  つまり、「田中さんが転落した時、既に鬼瓦権三はその場所で死んでいた」のだぁ!
 え?え?え?え?
 信じられないような結論ですが、論理的にはこれしかあり得ない。……とすればです。
  田中家に押し入った強盗は鬼瓦権三ではあり得ないことになりますね。
  なのに、光子さんは死んでいた鬼瓦権三が強盗と同一人物だと証言している。この矛盾はなんなのだ!
 そうですよ〜、むしろそっちの矛盾の方が大きいくらいじゃないですか。
 この不可解な謎を解くカギは、実は鬼瓦権三という名前のなかにあります。
 なまえ〜?なんですかそれ?
 ええい、まだシラを切るか!……ま、いいでしょう。
  「権三」という名前、これはどう見ても三人兄弟な末っ子の名前です。
  つまり、彼の上に「権一」もしくは「権太」、それから「権二」という2人の兄がいるに違いないのです!
 あ……こりゃ、驚いた。なるほどね〜。
 事実、私自らが調査した結果、鬼瓦権三は実兄の権二とコンビで強盗を働いていたのです。
  しかも、この二人は兄弟だけあってよく似ていたそうで。
 YABUさんも自前で調査するタイプの探偵さんだったんですか……。
 さて、この驚くべき新事実に基づいて、事件当夜を再現してみましょう。
  あの晩、鬼瓦権三は兄と共にが押し込む予定の部屋の下見に行っていたんです。
  で、彼は田中家のベランダの真下あたりの路上で当の田中氏が帰ってくるところに出くわしたんですよ。
  「これ幸い」とばかりに権三はそこで田中氏を襲いますが、
  田中氏の思わぬ抵抗で地面の石に頭を打ちつけられて死んでしまいます。
 返り討ちにされちゃったわけですね。
  でも、だとしたら、検死で権三が撲殺されたのであることはわかりそうなものですが……。
 う〜ん、まあ、その医者が墜死という先入観を持っていたせいでしょうね。
  ともかく!それで怖くなった田中氏は家へと逃げ帰ります。
  ところが、現場には田中氏と入れ違いに鬼瓦権二がやってきて弟・権三の死体を見付け、
  逃げる田中氏が犯人と確信し、田中氏の後を追い、光子さんを脅して家中に侵入したのです。
 うまい!……つまり強盗事件が発生した時点で、すでに権三は死んでいたわけですね。
  ウン、実に斬新な推理ですな!けど、ちょっと偶然が多すぎやしませんか?
 いやいや。この程度の偶然なら許容範囲だと思いますね。ともあれ、驚いたのは田中氏です。
  死んだと思った鬼瓦が再び襲ってきたのですから。
  で、否応なく2人が格闘するうちにベランダから田中氏が転落。で、ちょうど鬼瓦権三の真上に落ちたわけです。
 う〜ん。ま、それは後で検討するとして、その後部屋の中で起こった格闘の音はどう説明するんですか?
 ふふふ。簡単ですよ。……弟の仇をとった権二が金目のものを物色しているところへ、
  二人の格闘で割れた窓から、あるものが飛び込んできたのだぁッ!
  それは台風で寝ねぐらを奪われた鳥だったのです。……あぁ、ヒッチコックの世界!
 鳥ねぇ……。
 勝ち目がないと思った権二は鍵を開けて玄関から逃げ、その時一緒に鳥も外に出ていってしまいます。
  結果、光子さんがクローゼットから出た時は、鳥も鬼瓦もおらず、鍵もあいていた、と。
  Q.E.D.!
 いやいや、ちょっと待って下さいよ。
  たしかにその推理で一応のつじつまは合いますが、やはり少々偶然が多すぎますね。
 Q.E.D.!
 だからぁ〜。まず、後から落ちた田中氏が「偶然」弟・権三の死体の上に落ちる確率はかなり低いでしょう。
  ましてや当日は強風が吹いていたことですし。
  それから、人を殺した権二が「鳥に勝ち目がないと思った」というのも少々無理があるんじゃないかな。
 いや、実は彼は「鳥恐怖症」だったんです。
 その「実は」っちゅうの、なしにしません? 残念ですが、今回は……。
 けち〜!
 
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