葉月さんの推理
 
葉月さんのこの奇想天外な解答は、「迷探偵狙いのなかば確信犯」とMAQは睨んでおります。なにしろ並記された氏のもう一つの解答ときたら、作者の心胆寒からしめるパーフェクトなもので。あっさり殿堂入りをも、お決めになってらっしゃるのですから。返す返すも脱帽!!
 
=葉月氏 =MAQ)
 
 「この問題のポイントは、圭子さんのアルバイトはなんだったか、ですね」
 「はぁ? アルバイト、ですかぁ?」
 「そーですッ! しかも圭子さんのそれは、ちょっと特殊なバイトだった。それ
   は……」
 「それは?」
 「ケーキの空中宅配便だったのです!」
 「……(5分間絶句)……くうちゅうたくはいびんって、もしかして……」
 「そーですッ! サンタの格好をして気球に乗り、空からケーキをお届けする。
   この時期、ちょっとオシャレな女の子のバイトといえば、コレでしょう。冒
   頭の点景で描かれた気球漂流のニュースの描写は、私にとってミエミエの伏
   線でしたね!」
 「あれはミスリードのつもりだったんですが……っていうか、そのどこが『オ
   シャレな女の子のバイト』やねーん!」
 「えーい、往生際の悪い! 証拠ならいくらでもありますよ。たとえば、部屋に
   入った母親を圭子さんはなぜ怒ったのか。それは……彼女が『部屋で熱気球
   を手作りしていた』からなのですッ! しかもバイトに行く時は、『気球を暖
   めて自室の窓から出かける』習慣だった。だからこそ、彼女はサンタの格好な
   のに裸足のままだったんです! おお、なんとパーフェクトな推理!」
 「だんだん眩暈がしてきたんですけど……んじゃ、彼女が広場中央で墜死して
   いたのは?」
 「高い場所が何もない広場の中央、すなわち空中ですね。答えは簡単、気球が
   ちょうどその場所に来た時、墜死したんです。実は彼女はバイトを終えた10
   時頃に友人達を呼び出し、ロープをつたって広場中央に颯爽と登場するはずだっ
   たのですが、そこで手を滑らせて落ちてしまった」
 「あの〜、なんでそんな『怪人二十面相みたいなマネ』をしなくちゃいけないん
   ですか?」
 「(聞いていない)広場に集まっていた友人達はそれを見て逃げ出し、目撃者と
   しても名乗り出なかった……その後、彼女が作った気球は空中に残っていまし
   たが、黒い色の熱気球だったため、誰も気付かなかったのです」
 「しかし『熱気球を自室で自作する中三の女の子』というのが、ぼくにはどうに
   も信じがたいんですけどね〜」
 「ふっふっふっ。『論理的にありえないものを除いていって残った答は、それが
   どれほど信じがたいものであっても、真実である』……MAQさんにはこの偉大
   な先達の言葉を進呈しましょう」
 「っていうか、論理的にいちばんありえない答って気もするんですが……あ、そ
   うだ! そしたら彼女が商店街で購入した『奇妙な物』って、なんだったんです
   か?」
 「フフ。まだわかりませんか?」
 「……わかりたくないって気もしてきました」
 「じゃあお教えしましょう。それは熱気球を暖めるための『固形燃料』だったの
  です!」
 「おおおおッ。そーだったのかぁ! ……って、いーかげんにしてくださいッ!」
 
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