プログラム考
 
みなさんは映画館で映画を見るとき、プログラムを買う方ですか?
マジメな映画ファンほど、買わない気もしますね。
なにしろお値段は500円から、高いものだと1000円ほどもするのに
内容は通り一遍のことしか書いてないし、資料的価値もさほど高いとはいえない。
まぁったくあこぎな商売してやがんな、って感じですものね。
ですが、じつは僕は小学生の頃からずっと、映画館に行くたびにプログラムを買っています。
といっても意識してコレクションしているわけではないので、
古書店で自分が見てもいない映画のプログラムを買ったりはしません。
あくまで自分が見た映画のプログラムを、見た劇場で買う。
まさに「鑑賞のご記念に」というわけです。
 
書いてるうちになんだか非常に子供じみた習慣に思えてきましたが……
これはもう直しようがないようで、実際、その映画がどんな愚作であっても
ともかくプログラムだけは買ってしまいます。
たとえばタダ券をもらって見に行って心底後悔した「稲村ジェーン」の、
バカでかい1000円もするプログラムも、(かなり迷いましたが)やはり買ってしまいました。
だから逆にプログラムが入手できないと、
映画の内容に十分満足してもなんだかやり残したことがあるような気分が残る。
そもそもプログラムを置いてない場合が多い名画座や単館上映とか、
チャチなチラシかプレスシートしかくれない試写会とか、
いつもちょっとだけ物足りない気持ちで劇場を後にしています。
 
ご存知だと思いますが、新作映画の封切直後に販売されるプログラムには
表紙の部分にその小屋の名前がプリントされている場合があります。
この劇場名が入ったプログラムは初版だけの限定版なので、
封切り後1週間もすれば再版されて劇場名抜きの版になってしまいます。
だから映画専門の古本屋などに売る時も、劇場名が入っていればいくらか高く買ってくれるそうです。
行列も立ち見も大嫌いで封切り直後は可能なかぎり劇場に近寄らない僕にとっては、あまり縁のない話ですが、
たまさか、あまりヒットしなかった作品ですと、封切り後数週間過ぎてからのんびり出かけたにも関わらず
この劇場名入りのプログラムが残っている場合もあります。
だとすれば、僕が劇場名入りのプログラムを持っている作品は、
あまり当たらなかったということになるのかも知れません。
最近のものでは「コンエア」にスカラ座のロゴが入っていました。
 
さて、昔からあるロードショー劇場はいまだにかわりばえのしないA4サイズのプログラムですが、
最近はアート系のミニシアターなどで判型や内容にも凝ったお洒落なプログラムを作るところが多いようです。
僕が好きなのは銀座の「シネ・スイッチ」のプログラム。
デザインも良いし、内容も濃いし。
まともな評論家の文章に監督インタビュー、詳細なフィルモグラフィーにシナリオも再録してありますね。
最近はあまり行ってないので現在はどうかわかりませんが、
かつては上映している映画に関係なくいつも同じ体裁・同じイラストレーターの手になる表紙絵で、
いわばシネ・スウィッチという劇場の機関誌風のプログラムでした。
たしか宝塚劇場のそばのシネ・シャンテも同じ作りでしたか。
 
最近、入手したもので嬉しかったのは、去年夏の「ウォレスとグルミット、危機一髪!」のプログラム。
といってもこれはちゃんと背のある小振りな平綴本で、絵コンテまで収録した豪華版でした。
また昨年秋の「ラヂオの時間」のそれも、
「ラヂオの時間」そのものでなく劇中劇の「運命の女」のシナリオを収録するという、
三谷さんらしい遊び心にあふれた楽しい一冊でした。
これらは作品そのものへの愛着もあって、お気に入りの2冊となっています。
一方、なんだかなあと思ったのは「THE END OF EVANGELION」。
A4変形のワイド(つまり横開き)という体裁はともかく、後半8ページにわたってモノクロ1色で、
ひと見開きに1キャッチとリードコピーが4-500字のみ!ヴィジュアルは一切なし!
というおそろしく贅沢な構成で。
落丁かと思わせる白紙ページがあったりして、
まぁEVAらしいといえばいえるのですが、これで800円はやはりぼったくりでしょう。
 
ともあれ小説などとは違って、形あるものが何も残らない映画というメディア。
好きな作品ならもちろん、どーしよーもない作品もそれなりに。
何か形のあるものを残しておきたい僕にとって、プログラムは大切なコレクションなのです。
 
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