会社をつくる

 
まから12年前。
僕はデザイナーやイラストレーターの友人とともに、小さなデザイン事務所を作りました。
それまで勤めてた会社を思い切りよくやめて、乾坤一擲の勝負ってやつです。
最初はフリー集団の「事務所」のつもりだったんですが、
いつの間にか法人にしようという話になっていました。
税金の面でもその方が得だよ。って知ったかぶりの口を利くやつがいたりして。
ともかく「会社」を作ってリッチになろう!というわけです。
 
とくちに法人といってもいろいろな種類があります。
株式、有限、合資、合名etc。その中でとりあえず僕らが考えたのは「株式」か「有限」か、という点でした。
まぁ実際に事業を始めてしまえば、この2つにさしたる違いはないんですけどね。
手続きという点ではむしろ有限会社の方が簡単ですし、必要な資金も安くて済む。
でも、ぼくらは株式の名にこだわりました。見栄もありましたが、
たとえば大手企業と取引きしようとすると、有限会社の肩書きでは難しい場合もありまして。
その時点では、べつに大手と取り引きできるアテがあったわけではありませんが、
とりあえず少しだけ背伸びをしたかったのです。
(実際、その後「株式会社」の肩書きがモノをいって、
大手企業と直取り引きするようになったのですから、この選択は正解だったといえるでしょう。)
 
、当時法律で決められた株式会社の最低資本金が200万円だったので、
まずそのお金をかき集め、銀行に預けて保管証明
(確かに200万円のお金がありますよ、という証明書ですね)をもらいます。
次は会社の本社所在地。これはアパート借りても仲間の自宅でもなんでも大丈夫です。
そして役員を選出し発起人を7人集めれば、とりあえず準備はOK。
発起人とは会社設立に賛同してくれる人で、これも誰でも構いません。
ただし役員と発起人には印鑑証明が必要なので、
もってない人はこれも作っておきます。あともちろん会社の実印・銀行印も。
書類が用意できたら具体的な法人登記の手続きですが、これは税理士さんに任せてしまいました。
いちおう勉強はしたのですがね。プロに任せた方が安心ですから。
むしろ、信頼できる方を見つけることの方が大切でしょう。
ちなみに僕らはメンバーの1人の母親から、懇意にしている税理士さんを紹介してもらいました。
そんなこんなで僕らはめでたく株式会社を設立しました。
もちろんなんだかんだで銀行口座はすっからかん。
本社といっても民家の二階に間借りした6畳間に、
ゴミ捨て場から拾ってきた机と電話が1本あるだけのガランとした部屋でしたが、
仲間たちと乾杯した缶ビールの味は忘れられません。
 
かがでしょう。けっこう、簡単そうでしょ?
現在では、株式は最低資本金が1000万になったのでちょっとたいへんだけど、
有限会社ならたぶん誰にでも作れます。
難しいのは、だからその先。会社を続けていくことです。
当時、税理士さんからいわれたんですが、
新規に設立された会社というのはその半分が3年以内につぶれ、
また5年以内にそのまた半分がなくなるそうです。
なにも「これからやったろう!」という時に、そんなこといわなくても……とは思いましたが、
その言葉の重みは後にたっぷり実感できました。
実際、自分たちの会社といっても、思い通りになるのは社名くらいだと思ったほうがいいわけで。
リッチになるどころか、お客さんにも銀行にも「おじぎ百万遍」というのが実感です。
ともかくもらえる仕事は全部やる。ヒトがやらない仕事も進んで受ける。無理を言われても笑顔でおっけー。
アタマを下げる回数は、勤め人時代よりはるかに増えたはずです。
 
からね、ほんとしんどいです。
すっごくしんどいけど……それでもやっぱ愉しい。
だってこれは誰のものでもない、僕らの会社なんですから。
 
PS ここで書いた会社設立の手順は、12年前のおぼろげな記憶に頼っています。
だからはっきりいってあまり実用的とはいえません。
まじめに会社設立を考えている方は、専門書を読むか専門家に相談することをお勧めします。
僕も助言ならいくらでもいたしますが、とりあえず「おやめなさい」といいたいですね。
マジでしんどいですから。
 

 
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