人間ドックに行く-1

 
さんのなかで人間ドックに行ったことがある人、いらっしゃるでしょうか?
20代では、まずいないでしょうね。30代まで範囲を広げてもたぶん少数派かも知れない。
けれど、実は僕がはじめてドックに行ったのはまだ20代の時でした。
どこかからだの調子が悪いとか、なにかが心配になったとか、そういうわけではありません。
だいいち、それまでぼくはドックのことなんて考えたことさえなかったし、
ましてそれが自分に関係があるなどとは夢にも思いませんでした。
 
んな僕がどうしてドックなんぞを受けることになったかというと、実は会社を作った時に皆で決めたのですね。
なにしろ僕らの会社は、きわめつけの零細企業。優秀な社員がいくらでもいる大企業とは違います。
もしもだれか1人でも倒れれば、その替わりになるスタッフはどこにもいません。
大げさでなく、会社としての機能は止まってしまうのです。だから、僕らは倒れるわけにはいきません。何が何でも。
そこで、転ばぬ先のつえ。年に1度は人間ドックと考えたわけですね。
面倒くさいし憂鬱だし時間がもったいないのですが、
僕らにとっては、だからこれも仕事のうち。避けて通れぬ“義務”なのです。
 
間ドックというのは、つまり成人病の予防検診をメインとした非常に念のいった健康診断。と僕は理解しています。
もちろん、病院によっていくらかメニューは違うのでしょうが、
とりあえず僕の通っているドックのメニューをリポートしてみましょう。
内容が内容だけに、少々汚い話も出てきます。お嫌いな方は、ここらでおやめになった方が無難かも。
 
間ドックの受診を申し込みますと、まず病院から予約券や解説のパンフレット、そして問診表と2種類の器具が送られてきます。
問診表には数十項目の質問……
カラダ各部分の調子から日常生活、習慣、過去の病歴、両親の病歴まで問うものがびっしり並んでいます。
そして二種類の器具は、ようするに検便器。失湖用と雲知用ですね。
ウンチョス用も学校などでやらされるテープ式のものではなく、現物を採集する方式です。
いずれも新鮮なモノを要求されるので、ドック当日の朝に実行しなければなりません。
便秘の方はツライでしょうが、その場合はそのムネ申請すれば、当日病院が“なんらかの処置”を取ってくれるそうです。
(処置の内容は不明です。僕は便秘ではないので)。
さらにドック前日は、午後9時以降は一切の飲食喫煙が禁止。お酒はもちろん水も我慢です。
まあ、午後9時からですからツラいというほどではありませんよね。
 
よいよドックの日が来ました。
当然、憂鬱ですから足も遅くなりがちですが、ここは心を鬼にして早めに行きましょう。
何しろ受付順に渡される番号札が全ての検査の順番となるため、
その番号が遅いと待ち時間がとてつもなく長くなってしまいます。
検査は9時開始ですが、20〜30分前に受付を済ませておくのが“通”ですね。
受付を済ませたら着替えです。付けていいのは下着と病院貸与のガウンだけ。時計やネックレスもダメ。
ですが、活字中毒者の方は薄手の文庫本などを一冊、ポケットに用意しておくと重宝します。
たとえ早い番号を取得していても、待ち時間はけっこうありますから。
 
なわけで準備ができたら検査が始まります。
まずはいきなり採血。腕に刺した針だけ残してシリンダー部分を取っ換え引っ換え、3〜4本分は血を抜かれます。
僕はこれを正視できないので(見てると気が遠くなる)正確な本数はわかりません。
己が腕に突き刺さる針と抜かれていく血液をマジマジ見つめるオジサンもいますが、
豪胆というより、無神経としか思えません。
つぎは身体測定。やるんですよね、一応。身長・体重・視力・聴力・体脂肪率、それから血圧に胸部レントゲン。
ここいらは、まあ学校でも経験済みですからなんてことはないでしょう。
それから心電図に眼底検査。心電図は体のあちこちに吸盤を貼り付けられて1分ほど横になっていればOK。
きれいな波形が出ると看護婦さんが褒めてくれるので、ようし頑張るぞと思っちゃいますが、頑張ってどうする。
 
底検査は瞳孔を通して目玉の底をお医者がのぞくわけですが、まぶしいだけでべつに痛くはありません。
以前は瞳孔を広げる薬を点眼され以後いちんち本が読めなくなったりしましたが、最近は使わなくなりましたね。
続いて医師の問診ですが、これは本当にフツーの問診。
僕が書いてきた問診表を見ながら、どこか調子の悪いところないですか、とまあそんな感じです。
もちろん聴診器あてたりもしますが、ごく通り一遍で。
ただ、先に行われた身体測定のデータは医師の手元に届いてますから、
血圧が高かったりするとここで軽くお説教くらったりすることもあります。
 
らに、これはオプションですが、僕はいつも腹部の超音波診断と痰の検査を受けます。
超音波は、寝かされて腹全体にヌルヌルしたジェル状の液体を塗り付けられ、
その上からパソコンのマウスみたいな器具をゴリゴリ押し付けられます。
超音波でお腹の中の様子を調べ、怪しいものがあれば撮影するわけです。
時間は5分から10分程度ですが、右を向け左を向け息を吸え息を止めろいいや吐けと、結構忙しい。
また痰の検査は薬品の入った試験管を渡され、自分でこれに痰を溜めていくのです。
ほかにオプションでは乳がん、子宮がんなどの検査がありますが、これらはもちろん女性専用です。
あと直腸検査というのもありますね。僕は受けませんが、友人がこれで酷い目に遭いまして……。
 
腸というのはようするに大腸の末端部分、肛門のすぐそばでありますね。ここに“怪しのモノ”ができてないか調べるのです。
どうやって?といいますと、これが触診なんですね。
受診者は“下”をアラレもなく露出したすっぽんぽん状態で、両足を開き“馬跳びの馬”のような態勢を取らされます。
これだけでも生まれてこのかた味わったことのない屈辱感で胸がいっぱいになっているところへ、
なんと非道にも医師がゴム手袋をした指を突っ込み、“その部分”をこねくり回すわけです。
なんと恐ろしいではありませんか!話を聞いた僕は震え上がりました。
個人の尊厳を踏みにじる行為というか……鬼畜!といっても過言ではない。
しかもです。これをやられると10人が10人ともおもわず軽く(ウンチョスを)失禁してしまうという……。
だから医師の横では看護婦がバケツもって待機しているという……。
社命だろうがなんだろうが、これだけは人間として断固拒否の姿勢をツラヌくしかありません。
 

 
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