福本伸行の異色作、最強伝説黒沢の最新刊を購入。
…いや、福本先生のこのごろの作品はみんな異色なんだけど、つまりは福本先生の作品としては異色というか。
どう異色かというと、福本マンガの登場人物といえば、自分の血液を賭けて麻雀打ってみたり、自分の指4本を担保にギャンブルやってみたり、オープン前のホテルの展望室で人間狩りをやってみたり、1000万円の賞金を賭けて高層ビルに渡した鉄骨を渡ってみたりと、…とにかく登場キャラが片っ端から日常でありえない事をやってのけ、そして、とにかく生き残りの為にありとあらゆる知略を張り巡らせるものなのだ。
と、福本マンガの世界では主人公から端役まで片っ端から『福本キャラ』なのだが…この『黒沢』の場合は、主人公の黒沢だけが福本キャラで、それ以外の登場人物があまりにも至って一般人なのだ。
そんな福本キャラがあまりにも日常的な世界で、福本ワールドで繰り広げられるような知略を巡らせ、結局空転、墓穴を掘るところがこのマンガの面白さなのだが…
どう空転しているかというと、
齢40になって未だに独身で、土建屋の平社員として安月給に喘いでいる黒沢は、同じ現場に派遣された男にあまりにも人望があって自分の影が薄くなってきている事を相当気にして、自分も人望を得ようとある策略を思いつくのだが、その策略というのが…
皆が現場で食べる業者の弁当にコッソリとアジフライを入れてあげて、皆に感謝される…というもの。
もうすばらしくアホな話だが…実際にこれを実行してしまう。
計画では、アジフライを押し込んだせいで蓋が不自然に浮いた弁当に皆が不思議に思っているところへ自分が登場し、アジフライを入れたのが自分である事をアピールする…という事なのだが、自分からアピールしたのでは逆効果だからと、わざと余らせておいたアジフライ入りの箱を持って皆の前に登場し、気付いてもらう事にした。
「知ってるか?アジを食うと恋が実るんだぜ。だってホラ、アジフライってハートの形してるじゃないか」なんてトークまで事前に考えておいて皆の前に出たのだが、…現場の皆は誰一人アジフライが入っている事を不思議に思わず、黒沢が持っている箱にも誰も気付かない。
更に、焦った黒沢はとりあえず自分の弁当を食べようと思ったところ、自分の分の弁当が無い事に気付き、「誰が俺の弁当を取った!」と周囲にあたり散らしてしまう。
結局弁当は配膳車の中から出てきたのだが、もはやアジフライの事をアピールするどころじゃ無くなってしまった。
おまけに、計画が失敗してしまった黒沢が、半泣きになりながら弁当と一緒に残しておいたアジフライを喰っていたところ、「他人の弁当のアジフライを取った」という誤解まで受けてしまうというドツボに。
その後もとにかくどこが『最強伝説』なんだっていう悲惨な目に遭い続ける黒沢だが、最新刊では、オヤジ狩りに遭って死にかけた黒沢が、よせばいいのにまた余計な策を練ったせいでまた悲惨な目に遭う展開に。