吸入ステロイド薬

現在、長期管理薬(予防薬)の中心的存在です。

最終更新日: 2004/08/19.

どんな薬?吸入薬の特徴作用副作用発売中製造中止ドライパウダー問題点

どんな薬?

吸入ステロイド薬は現在、喘息治療の中心的な役割を果たしている重要なお薬です。その主成分は人間の副腎から分泌されるグルココルチコイドというホルモンをまねして合成した化合物です。このホルモンはもともと体内でアレルギー反応を抑える役割をするほかに、ごく微量で全身に様々な作用を示します。

以前からステロイドホルモンは喘息発作の特効薬として知られていました。しかし、効き目が切れると、また発作が起きるため繰り返し使うことになります。ところが、長期間使うと骨がもろくなったり、子供の身長がのびないなどの重い副作用がおこったり、さらに、他の薬では発作が治まらないステロイド依存状態になることもあります。そんなに副作用があるのに、どうして、吸入ステロイド薬がよく使われるようになったのでしょうか?

理由の第一は喘息のしくみが解明されるにつれ、喘息は気管支の慢性的な炎症が一番の原因だとわかったからです。炎症を抑えるにはステロイドほどよく効く薬はありません。もう一つの理由は、全身への影響が少ない吸入専用のステロイド薬が開発されたからです。

<用語解説>副腎グルココルチコイドステロイド依存症炎症

吸入薬の特徴

飲み薬や注射のステロイド薬との違いをまとめてみました。

  吸入薬 内服薬 注射薬
薬品名 キュバール
フルタイド
パルミコート
プレドニンなど ハイドロコートン
サクシゾン
プレドニンなど
剤型 MDI(スプレー式吸入器)
ドライパウダー(吸入用)
錠剤 注射用剤
使用目的 他のステロイド剤からの離脱
長期管理薬
発作時頓服
(長期管理薬)
発作時のみ
病院にて使用
作用時間 効果がでるまで1〜2週間 2,3時間から6時間 2,3時間から
6時間程度
1日の使用量 100μgから1600μg程度 5mgから60mg程度
(吸入の約50倍)
10mg〜大量療法
副作用 のどの刺激感、声のかすれなど
全身の副作用はほとんどない
長期間大量に飲むと
高血圧、骨粗鬆症、
糖尿など
様々な全身の副作用が出る
内服とほぼ
同様
使いやすさ スプレー式はスペーサーが必要
上手な吸入には正しい知識が必要
味は苦いがのむだけ まれにショックを起す
人がいるため、
医師は注意が必要

作用

定期的に使用することで、気道の炎症を抑え、発作を起こりにくくする長期管理薬の代表です。同じ吸入でも発作止め(気管支拡張薬)のように、急激に気管支を広げて発作を抑える作用はありません。

喘息の原因であるアレルギー性炎症が起きているのは気管支で、そこに直接、薬が届くため、薬の量も少なくてすみます。

<用語解説>気管支拡張薬

副作用

のどの違和感、痛み、声がかすれるなどのほか、のどや口のなかにカンジダというカビが増えてしまう副作用が知られています。

これらの副作用はのどや口に付着した薬によっておこります。吸入ステロイドの使用を一時的にやめれば治ってしまうものがほとんどです。MDI(スプレー式)ならスペーサーを使い、吸入後にうがいをすれば、口やのどにつく薬が減り、こうした副作用はほとんど予防することができます。食事の直前に吸入をして、そのあとすぐに食事をとるのも、のどに付いていた薬が食べ物といっしょに胃に落ちて、分解されるのでおすすめです。

吸入ステロイド薬は肺以外で吸収されても、肝臓で効き目のない形に分解されます。1日の量が内服や注射にくらべて少ないこともあって、普通の使用量では全身への影響はほとんどありません。

小児は、ステロイドホルモンに対する感受性が高く、少ないない量でも様々な作用があらわれます。成長や骨に対する影響についてはまだ不明の点もあるため、成人では軽症から使用される吸入ステロイド薬も、小児では中等症以上の喘息に使われています。また、症状が改善すると、数ヶ月単位で吸入ステロイドの使用を終了することもあります。これまでの研究によると通常の小児の使用量(1日最大400μg、ベクロメタゾン換算)では、全身への影響は問題ないようです。

<用語解説>カンジダスペーサー

発売中

喘息の吸入ステロイド薬は現在3種類に分けられます。プロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)、ブデソニド(BUD)、フルチカゾン(FP)です。薬剤としての強さはFP>BUD>>BDPですが、実際の効き目は、人によってことなります。

薬品名 一般名 剤形 用量 1吸入の量
タナウス プロピオン酸ベクロメタゾン MDI 112回分 50μg
キュバール プロピオン酸ベクロメタゾン MDI 100回分 50μg、100μg
フルタイドロタディスク プロピオン酸フルチカゾン ドライパウダー 4回分 50、100、200μg
フルタイドディスカス プロピオン酸フルチカゾン ドライパウダー 60回分 50、100、200μg
フルタイドエアー プロピオン酸フルチカゾン MDI   50μg、100μg
パルミコート ブデソニド ドライパウダー 112回分、224回分 100、200μg

製造中止

ベコタイドやアルデシンなどの吸入ステロイド薬は、薬を霧状にスプレーするために、フロンガスを使っていました。フロンガスは人体には無害ですが、地球のオゾン層に影響を及ぼすことがわかっており、全面禁止となるまえにすでに製造が中止されています。それ以外のMDIはすでにフロンガスのかわりに代替フロンが使用されていますので、そのまま使いつづけて、何の問題もありません。

残っているお薬を使用しても、問題ありませんが、まだ、アルデシンやベコタイドを使っている方は、早めに他の吸入ステロイド薬に切りかえる必要があります。

ドライパウダー

最近発売されたフルタイドやパルミコートは、ドライパウダー(粉末)の薬剤と専用の吸入器が一体になった新しいタイプの吸入薬です。約1ヶ月分のお薬が、あらかじめセットされています。以前からあるMDI(スプレー式)のお薬と違って、ゆっくり吸入したり、スペーサー(補助器具)を使う必要がありません。

さらに、吸入したときに気管支まで届くお薬の割合が2倍近くふえているため、同じ量の吸入でも効果がアップしています。吸入専用のステロイド薬で、副作用が特に強いというわけではありません。

問題点

吸入ステロイド薬は、喘息の長期管理を劇的に改善してくれましたがこの治療にも問題点がないわけではありません。

1.吸入ステロイドを十分量使っても発作をコントロールできない人もいる。
2.小さな子供や高齢者など、上手に吸入できない人では十分な効果が出ない。
3.この薬で喘息がよくなると、自分の判断で使用をやめてしまう人が多い。
4.成人では使用をやめると再び症状が出ることが多い。小児でも喘息の治癒率を高めるかどうかは、まだわかっていない。

これらの問題点をふまえた様々な新しい治療が現在、開発中です。


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