自己流ハイキング講座

Let's Go Hiking!!


持ち物

今日は会社帰りにスポーツ用品店に寄ってみました。アウトドア関連コーナーにはいろいろなものがありましたが、中にはどのように使うか見当のつかないようなものも目に付きました。道具はいろいろありますが、一気に買うとお金もかかりますし、少しづつ必要に応じて買い足していくのがいいと思って、店の人に聞いて最低必要なものを揃えてきたのです。家に帰ってくると早速部屋の中に閉じこもって今日の収穫を床の上に広げて、改めてそれらを細かく眺めてみました。
まずザックです。といってもちょっとしたハイキングということで進められた小さなデイバッグです。いろんなジッパーがあちこちについていたり、留め具がいろいろとついていて、小さなものですが全部の機能を試すのはなかなか大変みたいです。適当にものを入れて背負ってみました。紐の長さを調節して前のバックルをカチッと止めると、実に背中にぴったりフィットして想像以上に荷物が軽く感じられました。なるほどこれはよく出来ていると思いました。
ハイキングやトレッキングを目的に開発されたザックは少しでも背負う人の負担を軽減出来るようにバランス良く設計されています。同じ重さの物を背負ってもザック次第あるいはパッキング次第で、重くも感じられれば、軽くも感じられるものです。そうであれば軽く感じられることに越したことはありません。楽しい山行も負担を多く感じるならば、しっくり来ないあえぎながらの山行になってしまいます。アウトドアの専門店でしっかりしたものを購入されることをお薦めします。また、ザックにはいろんな大きさのものがありますが、それぞれどういう形態で何泊するかによって必要な大きさが変わってきます。日帰り程度であれば、よほど荷物を担ぎ上げて宴会でもやろうということでもないかぎり、普通のハイキングであればデイバック程度の大きさで充分でしょう。

次は靴です。ハイキングから初めて先々もいろんな所を目指して行きたいということで奨められたのが、革製の軽登山靴です。他にも、トレッキングシューズということでジョギングシューズが頑丈になったという印象のものもありましたが、長く使うには革製のいかにも登山用という様なものが良さそうな感じがしたので選びました。いっしょに買ってきた厚手の靴下を履いて足を入れてみました。実際に野外に出ているわけではないので実のところどうなのかは良く解りませんが、なんとなくワクワクします。
靴は本当に自分の足にあうかどうかが結構難しいです。スポーツ用品店に夕方の足に血が下がったころに行って階段の上り下りをしてみると良いとも言われますが、少なくとも店内を履いてよく歩き回ってみることは重要だと思います。でも結局いくつか靴を買っているうちに好き嫌いも出てきて、好きで履いているとますます足になじんでくるということになります。ただ靴はハイキングの最重要アイテムの一つなのでこだわりたいものです。少なくともビブラム底の様にがっしりと体重を支えてくれて、そこそこ固く、スリップしにくい仕様になっていない靴でないと、転倒やスリップ・捻挫等思わぬ怪我をすることもありますので、新しい靴を買わないにしても履いていく靴は慎重に選びたいものです。
また山で使う靴の種類としては、トレッキングシューズ・軽登山靴・登山靴(冬靴)が通常一般道の登山で使用されます。それ以外に用途によってプラスチックブーツ(冬山)・わらじ、フェルト靴(沢)・クライミングシューズ(アルパイン/フリー)などの特殊な靴も使い分けられています。

そしてもう一つは、レインウエアを買ってきました。山の中では傘はさせないよということで、絶対必要だと言われました。ほとんどすべての製品にゴアテックスというマークがついていました。これは、雨を通さずに、内からたまった蒸気を放出してくれるので、蒸れなくてとてもいいそうです。ちょっと高かったのですが、思い切って買ってしまいました。
山の中で雨に濡れるということは、実は大変なことです。ただでさえ気温が低くなった中で、雨に濡れると急速に体温を奪ってしまい、行動力が落ちて最悪凍死に繋がることになります。また、風があればさらに寒くなります。気温も低く、距離も長く、風も強い山の中のことですから、ちょっと駅まで走って濡れていこうという訳にはいかないのです。そこで雨具は必携ということになります。
では雨を避けるにはどんなものがあるでしょうか。まずは、町でも使う傘です。もちろん山の中だけでなく、行き帰りも雨になる可能性はありますので、傘はなるべく持っていった方がいいと思います。山の中でも、充分な道幅の広い整備されたコースで、樹林帯であれば傘で歩いた方がかえって面倒でなく快適な場合もあります。もちろん藪の中や、岩場、風の強い稜線などは、各々、藪自体が水に濡れていてそれで体が濡れてしまうこと、手が空けておく必要があること、上下左右から雨が飛んでくることまたは、傘をさせる状態ではないことから、傘には不向きです。この場合はレインウエアを着用することになります。
レインウエアですが、材質はゴアテックスが一番いいようです。これはもちろん外からの雨を防ぎますが、それと同時に体の中からでてくる汗等による水蒸気を放出してくれます。塩ビ等のレインウエアは、中で大汗をかいてしまうことになり、体がとても濡れてしまいます。体が濡れてしまうことは、前述しましたように、山では最も避けなければいけないことの一つなのです。ゴアテックスのレインウエアといっても、厚手の一枚物や、薄手の外布に対し、内側がネットになって二重になっているものなどがあります。私の感じでは、厚手の一枚布の物のほうが、重量は重いですが、丈夫で防寒性能もあり、メンテナンスがしやすい様に思えました。また、レインウエアはきっちり整備すれば長く使えますが、結構消耗品的ではあります。色は好みですが、将来雪の中をあるくことなども考えれば、保護色になってしまう様な色は避けるべきで、赤や黄色などどこからでも目立つ様な色を選ぶべきです。
さて、ザックと靴と雨具がそろいました。大物の必須道具という意味では普通の日帰りハイキングならとりあえずこれでそこそこ行けるはずです。あとは、適宜コンビニ等で買えるもので、なんとかなるでしょう。そして、いろんな経験の中で道具を揃えていくことになると思います。道具を選び、またこだわりを持つこともまた楽しみの一つかもしれません。

食糧

さて、待ちに待った週末がやってきました。さっそく買ったばかりのザックに荷物をつめこみます。といっても、今回は買ってきたレインウェア以外には、タオル、ティッシュペーパー、カメラ、地図とガイドブックくらいです。そして新しい靴をはいていざ出発です。途中コンビニに立ち寄って、おにぎり2個と缶ジュースを買ってまっすぐ登山口に向かいました。期待通りのいいお天気で、ウキウキと心が弾みます
さて、本当は食糧は何を持っていくのがいいのでしょうか。おにぎり2個と缶ジュースで良かったのでしょうか。答えはちょっと心許ないですが、このコースであればまぁいいでしょうといったところでしょうか。 食糧は、山に登るという日常よりも激しく熱量を消費する行動を行う訳ですから、それを補給できる程度の物を持っていく必要があります。空腹のまま歩くと、著しく消耗しバテに繋がることもあります。日常食べる程度+αくらいを携行した方が良いでしょう。主食以外には、あめ玉など休憩の時や長く歩いている途中などでなめたりするとなんとなく疲れた気分も変わるものです。あとは自分が普段から良く食べる、好きな物を持っていくというのが一番無難だと思います。
もう一つは非常食です。どこかで道に迷って下山できないというケースを想定して1日分くらいはカロリーを補給できるようなものを持っていく必要があります。といっても、たくさん持っていくと重いので、例えばカロリーメイト1箱、キャラメル1箱、板チョコ1枚等、どれか好きなものをザックに偲ばして置くと良いでしょう。一応何度でも使えますが、特に包装が劣化してくるので時々食べてしまって入れ替えて下さいね。
水分の補給も山では重要な問題です。ここであげた缶ジュースというのは、山に持っていくにはちょっと向かないものです。それは、一度開封すると全部飲まないと行けないことや、ゴミがかさばることなどが理由です。山の中でとる水の量は季節によってかなり違います。夏場などは汗をかくので1日2リットルくらい飲むことも稀ではありません。逆に冬場はあまり消費しません。最近はペットボトル飲料がたくさん出回るようになったので、大変便利になりました。日帰りの山では、夏は1〜2リットルくらいの量を持っていけばいいのですが、趣向を変えて500mlのボトルを何種類か持つのもいいと思います。冬場はどうしても暖かいものが欲しくなります。ペットボトルは500ml1本くらいにして、テルモス(小さなマホービン)に、紅茶でも入れて持っていってはいかがでしょう。特に寒い時は単なるお茶よりも、砂糖でも入っていた方が、カロリーも採れますし、元気が出るようです。
山での食事はガスコンロや鍋・フライパンを持っていって、山中で少しでも手を加えるとどんどん幅が広がります。最初は、カップラーメンやうどんを作る程度からはじめて、ごはんを炊いてみたり、焼き肉や鍋をやってみたりといろいろ幅が出てくると、またハイキングも一層楽しくなってくるでしょう。

はじめての山で気づいたこと

 登山届

湯ノ山温泉の上を通り、鈴鹿スカイラインをくねくねと登っていきます。このあたりは谷が深く切れ込み、そこかしこに露出する岩頭もあって絶景ですが、よくもここまで道をつけたものだと思うようなところでもあります。登りついたところが武平峠で、トンネルを抜けると左手に登山口の看板と小さな駐車場がありました。
登山口には登山届を出す箱があり、必ず登山届を出そうと書いてありました。必要事項を記入すればいいようになったメモ用紙がありましたので、その通り記入しました。
登山届は山の中で行方不明になった時などに重要な力を発揮します。どこに行ったかわからないような登山者を、探し出すのは容易ではありません。正確な情報が無いと捜索も遅れ、助かるものも助からなくなってしまいます。自分が助かりたければ、必ず登山届を出しましょう。また、それが自宅で待つ家族の為でもあり、捜索隊への礼儀でもあります。
メインの登山口には、よく登山届を出すボックスが備え付けられています。登山客の多いアルプスや谷川岳などでは、登山口に指導センターがあり、そこで受付を行っています。また、所轄の警察署にあらかじめFAXで計画書を送付することもできます。一部の警察書では、メールでも受け付けていますので、積極的に活用しましょう。
また、そういうものの無いマイナーな山や登山口に向かうときは、最低でも自宅や知人に計画書を残しておくことは大変重要なことです。その時は、ある時点を越えて連絡が無いと捜索願を出すといった取り決めをしておくと良いでしょう。

 登山道にて

登山口から、森の中を抜けたり、岩のうえを歩いたりしながら山道を登っていきます。道ははっきりしており、迷うような所はあまりありませんが、それでも帰りにちゃんと帰れるよう、風景を目に焼き付けながら行きました。道の脇にはテープが巻いてあったり、岩場には赤いペンキで行く方向を示していました。
一般的な登山道は普通は分岐には行き先を示す道標があり、道型や踏み跡もしっかりついており、またわかりづらいところにはテープや紐が巻いてあります。従って、地図を見て方向や全体感を頭に入れておけば、普通は充分にすいすいと歩いていけるものです。しかし、油断は禁物でそのような道でも迷うことはあります。特に下山中は、慎重に道を選び、少しでもおかしいなと思ったら確実なところまで戻るようにしましょう。下山中に戻るのは大変勇気がいることですが、本当に遭難してしまったら元も子もありませんから。
また岩場を行くようなところは、手足をフルに使うようになります。この場合は確実に3点支持を心がけることが、スリップによる転落を防止することに繋がります。これは4本の手足のうち、3点をつねに地面に安定してつけているということです。また恐怖心から岩にしがみつくと、視界が極端に狭まり次の一歩が出せなくなって、ずっとしがみついたまま動けなくなります。少し体を離して垂直に立つ癖をつけましょう。

 歩くペースとは

山道を登って行くと、一人の高年の登山者が前を歩いていました。快調に歩いていたので、見えてからすぐに追いついてしまいました。彼は「速いですね」といいながら、少し広いところで道を譲ってくれました。そのまま快調に歩いて行きましたが、だんだん息がきれ、汗が噴き出してきます。どうにも足が前に出なくなったので、路傍で休みました。少しすると先ほど追い越した登山者が、ゆっくりと登ってそのまま通過していきました。私はこの時はまだ立ち上がる気力がありませんでした。また、背中は汗びっしょりになって気持ち悪く、風があたってちょっとすーすーします。いざ立ち上がってザックを背負うと背中がヒヤッとしました。
実際このようなことは良くあることです。山道では、ゆっくり継続的に歩くことが、気分よくバテずに歩くこつです。その時は多少遅いと思われるようなペースでも、じっくりと、一歩一歩踏みしめてあるくような感じで行くといいようです。
一般的に30分歩いて10分休憩とか、1時間歩いて10分休憩とか、ある程度ペースを決めて歩くことが大切です。短い行程であれば30分程度で一休み。長い行程であれば、なるべく1時間くらいはゆっくりと継続的に歩くようにしましょう。
また、オーバーペースで歩くと、汗も吹き出してきます。これは寒い時期などは体が冷えてしまい、特にいやなものです。また汗をかいた時の気持ちの良さ悪さは、着ている服の材質により左右されます。特に綿製品は水分を中に含んで放出せず、常に濡れた状態になり、冬場は命にかかわることになりまねません。山道具屋さんに行けば登山用の下着や服装を売っていますので是非それらを利用し、少なくとも綿製品の下着だけは避けましょう。

 山頂にて

長く感じた登りもやっと終わり、平らな山頂部に入っていきます。この山は山上公園になっていて、見晴らしのいい舗装路になりました。大きなケルンが並ぶ中をぐるっと回り込むように歩いていくと、山頂直下の階段の下に出ました。この登り口には清水が湧いていて、おいしくいただきました。
山頂まではわずかです。そこには一等三角点とあり、四角い標石が埋まっています。反対側の岩の上が最も高そうで、谷間を挟んで山々が折り重なる素晴らしい展望が開けていました。爽快な山頂で食べるおにぎりがおいしかったことは言うまでもありません。
この山頂はロープウェイが通じていることもあって、一般の観光客が多いようです。ロープウェイの駅の近くにはジュースの自販機もあり、飲み物が心許なかったので少し買い足しました。
山に登る時、とりあえずの最終目的地は山頂になるのですが、これにはいろんな山頂があります。御在所山や、高尾山のように、ロープウェイが通じ、公園になっているような所もあれば、ひっそりと樹林の中にある山頂、展望のいい山頂、峻険なピークやだだっ広い山頂などそれぞれです。山頂での気分の善し悪しがその山行の思いでになることも多いのですが、いずれにしてもそこまでたどり着いた達成感が、また次の山に向かう意欲にもなるわけです。
山頂には、山頂を表す標識や山によっては三角点などいろいろなものが置かれている場合があります。信仰の証である祠や立派な神社がある山頂も珍しくありません。それらはみんなのものですので、傷つけたりしないようにしましょう。また、三角点や山頂の標識などは、みんな記念写真をとったりします。できるだけその周囲は空けておき、邪魔にならないようにしたいものです。

 下山

さて、山頂に立てばあとは下るだけです。元きた道を足任せに下って行きます。ついついスピードが出て木につかまったりしましたが、ちょっと茨のある木だったので、少し手に刺さってしまいました。なおもしばらく行くと、ふっと気を抜いた拍子に思いっきり尻餅をついてしまいました。普段はこんなことは無いのに恥ずかしい限りです。それでもなんとか、往きの風景を思い出しながら下り、停めてあった自動車を見てほっとしたことでした。
下山は苦しい登りも少なく、ほっとしがちですが、帰りを急ぎ過ぎると思わぬ落とし穴が待っています。道に迷うのも下りの方が多く、また転倒などはほとんど下りで起きます。また、急ぐと足に負担がかかり、膝を痛める原因にもなります。往きはよいよい帰りは怖いということですので、余裕をもって行動し、慎重に下山しましょう。
また、事故は危険地帯では少なく、危険個所を通過後の気のゆるむあたりや、特に何でも無いところで起きやすいという事もありますので、最後まで気を抜かずにがんばりましょう。また、ここちよい疲労のまま車を運転することもあろうかと思いますが、家に帰り着くまでがハイキングだということも忘れずに。

最後に

さて、これではじめてのハイキングを経験することができました。きっとこの日はいろんな発見や驚きがあり、思い出に残る1日になったことと思います。最初の何回かの山行は、きっと行く度に新たな発見や失敗があることでしょう。これからも細心かつ大胆にどんどん新しい山にチャレンジして見て下さい。
そして一番大切なことは、自分で主体的に計画をたて、調査し、考えて実行していくことです。そして山の中での行動は、いろんな創意工夫ができるフィールドでもあります。道中でも気の付いたこと、感じたことをメモしておくと次回に活かすことができ、またいい思い出にもなると思います。
さて、それでは次の休日からどんどん山にでかけましょう。Let't Go Hiking!

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