奥多摩の山概説


奥多摩の範囲

奥多摩の山は、関東平野の西北に広がる広大な関東山地のうち、多摩川流域の山々を言います。境界は諸説ある所とは思いますが、ここでは長沢背稜を境界として、奥武蔵・奥秩父と接し、雲取山から後山川を奥秩父との境界として、多摩川を渡り、鹿倉山の西の大丹波峠あたりで、大菩薩連嶺と区分し、鶴峠を経て、鶴川で、南の権現山稜と別れ、和田峠で陣馬の山との境とするという、大きく多摩川の源流を取り巻くようになるエリアとしておきます。
このエリアは大きく3つのブロックに大別できます。まず、北部エリアは多摩川左岸の日原川流域の山で、奥多摩の中でも最も標高の高く、山深いエリアです。中部エリアは、秋川と多摩川に挟まれて、奥多摩三山を中心として、よく登山道が整備されたくさんの登山者に親しまれているエリアです。そして南部エリアは、鶴川と秋川の挟まれた笹尾根を中心とした稜線で、比較的静かで穏やかな雰囲気の山々です。それぞれに個性があり、いつ行っても穏やかな雰囲気で迎えてくれる山々です。

奥多摩の四季

奥多摩が一番美しいのは、私としては新緑の季節ではないかと思っています。透き通るような瑞々しい緑に包まれた森が好きです。もちろん紅葉の季節もとても素晴らしいものがあります。夏は沢登りの場合は別として、ちょっと暑いかもしれません。6月に入ると蒸し暑さを感じます。しかし、9月の声を聞くと、山では涼風が吹き始め、暑いながらもかなり歩きやすくなります。
冬の気候も比較的安定しています。常緑樹の雑木林が少ないため、植林地は暗くそれ以外は冬枯れという、比較的ワンパターンな感じではありますが、樹間からの見通しが良く清々しいものです。年も改まると、都内が雨の場合は奥多摩は雪が降ることが多くなります。積雪が多いのは1月から3月までですが、2月は積もっても柔らかいので、ラッセルということにもなりますが、3月になると、溶解と凍結を繰り返すようになるので、アイスバーンが増え、危険な状態になることがあります。いずれにしても、積雪期はそれなりの装備は必携です。
だいたい1000m以下の山であれば、冬季でも軽アイゼンを持っていく程度で雪のハイキングを楽しむことができます。1000mを越えると、さすがに雪深くなり、コースタイムが遙かにかかるようになり、体力的にも厳しくなります。そして、1500mを越えると、雪山に準じた装備を準備した方が良いでしょう。ただし、週の半ばに雪が降った場合、土曜の朝行くと、標高が低くともいきなり難渋するはずです。雪の量によっては、日曜日でも苦労しますので、それなりに覚悟して行きましょう。

奥多摩の自然

奥多摩の自然は主に東京都の水源林として良く保たれています。里に近い山々は植林地が多いのですが、日原川周辺などは豊かな雑木林が広がっています。三頭山のブナ林は、都民の森として親しまれています。また、御前山のカタクリは有名で、これを目当てに多くのハイカーが訪れます。
大型の動物は、シカ・クマ・イノシシ・サルといったところですが、長沢背稜あたりの獣道は、足の踏み場もないほど、シカの糞だらけでした。クマは奥多摩よりももっと奥秩父に入った、笠取山周辺で至近距離で出くわしたことがありますが、奥多摩でも時々見かけることがあるようです。意外と六ツ石山あたりによく出るとか。
奥多摩は近郊の山にしては、かなり自然の保たれている山々だと思いますが、ダムは小河内ダム、稜線上の道路としては、奥多摩周遊道路があります。とにかくゴルフ場はありません。一つ残念なのは、天祖山の東面で採掘が進み、山肌が無惨な姿になっていることでしょうか。

奥多摩へのアクセス

奥多摩へのメインのアクセスは、青梅線です。青梅から奥多摩までの間は、若干バスを利用しながらも、駅から直接登ることの出来る山々がたくさんあります。奥多摩からさらにバスを乗り継げば、さらに奥深くまで入ることができます。日原方面は、日原川流域の山へ、丹波方面は多摩川に沿い、北は雲取から石尾根、南は奥多摩三山の方面です。小菅方面は大菩薩に向けての登り口となりますが、鹿倉山への登山口もあります。
一方もう一つの動脈である五日市線は、終点からバスでのアクセスとなります。檜原村役場を中心として、北の小岩方面に向かうバス路線からは、奥多摩三山の南面からの道になります。また、南の数馬方面は、浅間嶺や笹尾根、そして都民の森経由で三頭山への道です。
この2つ以外には、中央本線の上野原からバスで鶴川を遡り、笹尾根への登山道に出ることができます。また北からは、西部池袋線の飯能から名栗湖に出て、棒ノ折山に登ることができます。

奥多摩への想い

関東にいるときは、奥多摩の山行がメインでした。多摩地方の大学に在学していた私としては、奥多摩は非常になじみ深い土地で、学生時代もよくドライブがてらに訪ねたものです。したがって、関東に再び戻ったときは、小田急沿線に住んだにもかかわらず、丹沢へは向かわずに、自然に足は奧多摩に向きました。そして、御獄、日の出山から、本仁田、川苔と近い山から順番に登っていった訳です。
日帰り中心え歩いていたので、どうしてもルートが長くなる、長沢背稜や石尾根は最後まで行きませんでした。現在のところ、滝谷ノ峰〜雲取山や、七ツ石山〜鷹ノ巣山など歩いていません。このあたりの山は、標高差も大きく、それなりの心の準備がいります。
そういうわけで、まだまだ立ったことの無いピークがありますが、奥多摩も久しぶりに行くと、私にとっては、ああ帰ってきたなという気分になる山です。これからも少しづつ歩いたことの無いルートなどを辿っていきたいと思います。