01年10月中旬の世迷い言


2001/10/11

 乙一「失踪HOLIDAY」(角川スニーカー文庫)[bk1で購入]読了。
 一時期、目についた気になる本はその場で確保しておかなければ二度と手に入らなくなる、という強迫観念に囚われていた時期があって、その時に買ってしまった本。最近はちょっと落ち着いてきて、自分に対して「この本をお前は本当に読むのか?」と自問するようになり、少し落ち着いている。積ん読のキューがどう考えても1年くらいじゃ消化できないほど溜まっている、という事実が目の前に厳然としてあるのが大きいのだが。
 閑話休題。
 上手い。確かに上手い。だけど、私に積極的にアピールする部分が見つからない。要するに、読んで損したとは思わないが、読まないことが一生の損失になるとまでは思えない。決してこの本を読んで「金返せ」と思う人が多くいるだろうとは思えないのだけど、逆にそのことが予想できるところが物足りないというか。
 この本は二篇の短編からなっているのだが、最初に収められている「しあわせは子猫のかたち」は結構良かったと思う。今の精神状態で読むのは正直きつい部分もあったのだけど。
 表題作である「失踪HOLIDAY」は、正直言って「うーん」という評価になる。別につまらんといって一言の下に切り捨てられるような作品ではないが、かといって手放しで他人に勧めて回るような作品でもない。
 話の基本構造が「夏と花火と私の死体」と同じように見える、というのもちょっとマイナス点か。

 乙一「きみにしかきこえない」(角川スニーカー文庫)[bk1で購入]読了。
 これも前掲の本と同様に、強迫観念によって買った本。三冊溜まった時点で心理的ブレーキの掛かる閾値を越えたらしく、これ以降、乙一の本は買っていない。これから買うかどうかは微妙。とにかくまずは溜まっている本を消化しないことには。
 こちらは三篇の短編からなっている。表題作ともいえる「Calling You」は時間SFとしても読める作品。梶尾真治のファンだったら、読んでみても悪くないかもしれない。
 次の「傷―KIZ/KIDS―」は、なんかこう、救われたんだか救われないんだか良く判らない話だった。こういうのが好きな人もいるでしょうな、などと言ってしまいたくなる。
 最後の「華歌」は、これはジュンブンガク? 中に仕掛けられているあからさまなミスリードはない方が良かったのではないかと思える。正直言って私には退屈だった。
 とりあえず、これまで三冊の本を読んできた私の中での乙一の評価は「世間的には評判が良く、水準は確実にクリアしているが、私の好みではない」ということで。

 説明するまでもないと思うが、要するに今は溜まった本を端から順番に片づけていこう、というフェーズに入っているのである。これは別の何かからの逃避かもしれない。
 これは別にぼやかして書いてるわけじゃなくて、自分でも何からの逃避かは正直良く判っていない。あまりにも逃避したい現実が沢山あるので。

 良く知らんのだけれども、「(アフガニスタン攻撃に際して米国に協力的でないから)日本でパキスタンの評判があまり良くない」というのは本当なのだろうか。
 私はパキスタンが置かれている現状には非常に同情的だし、その中でなんとかバランスを保って立ち回っている国である、という風に思っていたのだけど。日本でパキスタンの評判が悪いとしたら、核実験禁止条約が世界的に締結されようかというタイミングで核実験をやって核保有国になったからじゃなかろうか(それだって、彼らには彼らの都合があるのだ。この世から核兵器が一斉に消えてなくなるならともかく)。
 ちなみに私は米国は大好きでもなければ大嫌いでもない。憲法九条も日米安保条約も米国の都合でできあがった代物だと思っている(だから、国民投票でもなんでもやってそれらに対してきっちり片を付けることをしないくせに、それらに拘り続ける人々のことを、内心馬鹿なんじゃないかと思っている。あ、我々の意思の総体としての我々の代表でしたね、あの人達は)。一つ付け加えるとすれば、日米安保条約に関しては、少なくともこれまでは、非常に日本に都合のよい条約であったと評価している。米軍基地周辺の住民の方々には申し訳ないけれども。だから、米国がそろそろカエルを見せろなんか同盟国らしいことをしてみせろ、と言ってくるのは解らんでもない。だからといってほいほいと聞いてやる義理もまたないわけなのが国際政治という奴なのだが、日本人はこういうのは嫌いそうだな。
 ブッシュはこれまでの言動から、どうみても馬鹿だとしか思えないので嫌い(というか少なくとも米国国民以外にとっては迷惑この上ない存在だからさっさと米国大統領という立場から立ち去って欲しい。でも、もっとすごいのが出てくる可能性も否定はできないのか)。
 でさ、結局「テロの証拠」ってなんなの? 中身を見せないで「充分信用できる」とか言われてもさ、うさん臭さが増すだけなんだけど。


2001/10/12

 ふと今月号のOURSの表紙を見たら、増刊号が今日発売だと書いてあったので買いに行った以外は何にもしない日。
 増刊号はポスター以外には見るところなし、と言っても過言ではない。ただし、あのポスターが「朝霧の巫女」のポスターだというのは詐欺だと思う(例え作者と世界がつながっていたとしても)。

 そういえば、外交に関しては駄目駄目感がぬぐえない(他の分野に関しては一応保留にしておいてあげよう←偉そう)小泉内閣率いる小泉首相が、米国の同時多発テロ事件にウサマ・ビンラーディン氏が関与している証拠というものを国会で説明するということだったので、ちょっとだけ期待していたのだが、期待通り、期待外れ。
 そういう小細工は、すればするほど空疎な感じが強くなるので、下手なことはしない方がまだマシだと思うのだけど。


2001/10/13

 久々にSATYに行ってみたら、チケットぴあが引き上げてやがったよこん畜生。株式会社ぴあの薄情者め。

 しかしながら、商品棚は民事再生法開始報道が流れた時よりもずっと充実していて、利用し続けさえすれば無くなるということはないような気もしないでもない。
 しかし、観る映画なんか無いに等しいんだよな。インディージョーンズ並のアクション映画だと割り切って、トゥームレイダーでも観に行くか。ハムナプトラ2よりは面白いらしいし(観てないけど)。FFの映画はいつの間にか終わっちゃってて、運がよかったんだか悪かったんだか。シナリオはFFらしくクソらしいので、怒り心頭に達して映画館の席を蹴っていた可能性は十二分にあるので、運が良かったと解釈しておこう。

 Appleから、OS X 10.1 Fullfillment CDが届く。これでOS 9.2.1のフルインストールCDが手に入ったわけだ。実はあんまり9.2.1は信用していないのだけど(アプリケーションが新しいCarbon Lib等に対応していないような気がしないでもない)。
 どこかから落してきたOS X用のkermitパッケージは、10.1には対応していないらしく、インストールできなかった。後日コンパイルに挑戦してみることにする。いつになるだろうか。
 一応Developper's Kitも新しいのをインストールしたが(あのダウンロードは何だったのだろう)、いつ使うんだかさっぱり判らず。趣味でコード書いたことなんか一度もないしな(やりたいことがまずあって、それを実現するためにコードを書いたことはあるが、それは遥か昔の話)。
 自分はSEはできてもプログラマには向いていないんじゃないかと思うこと頻り。

 そういえば、米国Appleのサイトで、Fellowship of the Ringの予告編が公開になっていたことをすっかり書き忘れていた。
 今度はダウンロード可能なファイルなので、回線の太さや時間なんか気にせずに、何度でも堪能できる。
 エルフが、ドワーフが、そしてホビットがちゃんと「らしい」よ(オークやオルク=ハイがらしいのは当然)。指輪の幽鬼がすげー格好いいよ。ガンダルフがちゃんと威厳を持ってるよ。ガラドリエルの奥方がちゃんとノーブルだよ。モリアがものすげー多層ダンジョンだよ(感涙)。
 ファンタジーファンは必見。QuickTimeをちゃんと金払ってPro版にしておかないとMovieの保存はできないので、ちゃんとやっておくこと。
 大期待。日本は正月だっけ。絶対観に行く。その前に新訳版を読んでおこうかな。


2001/10/14

 9:30起床。目標があると起きられる。
 10:00少し前からチケぴに電話をしてみるが、埒があかないので(完全に会員数が飽和してしまっていると思われる)、駅前まで出てアルシェに新しくできたチケぴでZabadak Liveのチケット確保。
 電話予約よりはマシだったかもしれないが、300番台に近い整理番号で鬱。

 F1最終戦日本GP。
 昨日、次元の違う速さでPPを取ったM.シューマッハが順当に優勝。
 マクラーレンはウイリアムズにも劣るLap Timeだったが、他のチームよりは頭一つ抜き出た速さで、トラブルもミスもない安定した走りを見せ、R.シューマッハがペナルティを受けるなどした関係でクルサードが3位入賞。ピット周回の違いから、M.シューマッハとハッキネンのバトルなども観ることができて、見せ場を作っていた。
 バリチェロは3ストップという奇策を用いるも、セッティングが決まり切っていなかったのか、前を塞ぐモントーヤを抜きあぐね、5位に終わる。


2001/10/15

 「20世紀SF 6 1990年代」(河出文庫)[bk1で購入]読了。
 英語圏SFを、その勃興期の1940年代から10年ごとに区切り、その年代での代表作(だと選者が思っているもの、だ。当然のことながら)を集めたアンソロジーの最終巻。
 シリーズを通した感想を言えば、私は40年代のSFには古臭さを感じ、それ以降のものには別に古臭さを感じず、80年代のSFが一番好みから遠く、90年代のSFはそれなりに読める、ということだ。これまで私は日本作家の本を中心にして読んできたので(それでも小松左京の本はほとんど読んでいない)、そういう意味では丁度良い入門になったといえないこともないだろう。
 閑話休題。
 このアンソロジーの中で一番気に入ったのは、ジェフリー・A・ランディス「日の下を歩いて」、一番面白くなかったのは、イアン・マクドナルド「キリマンジャロへ」。
 前者は突出して魅力的というわけではなく、敢えて挙げるなら、と前置きをしておいた方が良いかも知れない。後者は、主人公の内面描写が鬱陶しいことこの上ないのが主な理由。理性的でない他人の色恋沙汰が読みたかったらSFなんか読んでないっつーの。
 スティーヴン・バクスター「戦闘機」は、今の世界情勢を鑑みるに、あんまり笑えない法螺話という感じである。我々が今、こうして地球上で生き残っていられることには、ソビエト首脳が理性を保っていたことに対して感謝をしなければならないのかも知れない。
 私は海外SFをあまり読んでこなかったと上に書いたが、このアンソロジーに収録された作品のほとんどが、未読の作品であった。ところが、この本に収録されているロバート・J・ソウヤー「爬虫類のごとく……」は読んだことがある。多分初出のSFマガジンだろうが、SFマガジンも定期購読しているわけではなく、たまたま買ったものに収録されていたものをたまたま読んだのだろう(短編を全部読むわけでもないので)。ソウヤーの本は積ん読キューに溜まったままだが、これを機に読んでみるか。

 今号で休刊のDVD AXに「戦闘妖精雪風」のプロモーション映像が収録されているということなので買って、速攻で観る。
 多田由美のキャラクターデザインには、多少の違和感があったのだが、線を整理されたアニメ画面のキャラクター達にはそれほどの違和感を感じない(クーリィ准将がちっともしわしわじゃないのは、元からそう(単に第五戦隊の軽口の一環)なのだろうか)。深井零中尉は、日本人なんだからあんまり鼻が尖っているのはどうなん、とは思ったが。
 ところで、完全映像化を謳うからには、名作「インディアンサマー」はちゃんと映像化するんだろうな。辛気臭い場面ばかりで構成されるであろう「フェアリィ・冬」もちゃんと映像化するんだろうな。え、その辺どうなの? エディス・フォスのデザインが存在するということは、「グッドラック」にも踏み込む予定なのだろうが、「グッドラック」よりもそっちの方がファンとしては重要である。


2001/10/16

 新戸雅章「バベッジのコンピュータ」(ちくまプリマーブックス98)[bk1で購入]読了。
 ギブスンとスターリングの共著であるスチームパンクの嚆矢「ディファレンスエンジン」(あ、これ絶版なの?)で有名なチャールズ・バベッジの伝記である。
 他にも広く活躍した階差機関の発明者の伝記ということで、ちょっと題名の趣旨とは外れる記述もあるが、なんで階差機関(=ディファレンスエンジン)という名前の計算機が有用なのかということが、有限階差法という数学アルゴリズムで、一定の方程式の解を足し算だけで得ることができるからである、と判っただけでも収穫だった。
 また、19世紀という時代が、科学者がジェネラリストでいることもできた時代であったということも判った。バベッジは、数学者でありながら工学者(その当時は工学という概念はなかったが)であり、火山の観察なども行なう博物学者であり、政治経済学者でもあった。
 時代背景が頭に入っていると確かにスチームパンクは面白そうだ。何度も書いているが、私は世界史を一度も取ったことがない人間なので、「ディファレンスエンジン」は書いてあることが良く理解できずに上巻だけで放擲してしまったのだ。
 また、ギブスンとスターリングが描き出した蒸気機関のコンピュータは、ディファレンスエンジンと呼ぶよりはアナリティカルエンジンと呼ぶに相応しい代物であったということも判った。たぶん判っていて語感が良いのでディファレンスエンジンの方を採用したのだろう。
 なにが異なるかといえば、ディファレンスエンジンはその名の通り、有限階差法の解を求めることに特化しているのに対し、アナリティカルエンジンは、プログラムとデータをパンチカードで供給する汎用計算機として設計されているからである。私の記憶の中に残っている「ディファレンスエンジン」中の描写は、明らかに後者のそれであった。
 また、世界初のプログラマと称され、米軍の制式プログラム言語にその名を残すオーガスタ・エイダ・バイロンやその他のバベッジが関わった事物が、巧みに「ディファレンスエンジン」のネタとして織り込まれていることもこの本を読むと判る。「ディファレンスエンジン」の教科書としてはこの本はなかなか良書であるといえるだろう。尤も、「ディファレンスエンジン」自体が古書でしか入手できない(とはいえ、結構数が出回った本だと思うのでそれほど入手は困難ではないと思うが)状況ではどれほど意味があるのかは判らないが。

 Appleが大々的な発表をしないまま、ひっそりと新しいPowerBook G4とiBookがApple Storeで注文できるようになっている。PowerBook G4はCPUクロック(とキャッシュのオンチップ化)のマイナーチェンジだが、iBookはマザーの動作クロックが66MHzから100MHzに引き上げられている。私が使っているPismoと同じである。しかもCPUは最高で600MHz。Pismoより速いじゃん。そんで20万切ってるのか。はう〜。Apple Storeでは最初からUSキーボードがBTOできるようになっている。はう〜。(いや、現状ではUSキーボードよりも使い易いキーボードを使っているのだが)


2001/10/17

 山之口洋「0番目の男」(祥伝社文庫)[bk1で購入]読了。
 なんだ、このどっちつかずな感じは。
 中編だから、では多分ない(この本は、祥伝社文庫の400円中編文庫の一つとして出版された)。
 なんというか、テーマがあまりに消化不良な感じ。半端に二つのテーマが混じっているようにも見えるし。
 クローン人間に対する変な偏見は、欧米だけのものかと思っていたのだが、どうやらそれは間違いだったようだ。クローン人間は、人工的に作り出された一卵性双生児に過ぎない。一卵性双生児がなんら特別な存在でない以上(高校時代の友人が一卵性双生児だったので私には実感として良く判る。彼らは、同じ格好をして口を開かなければ区別できないほど良く似ていたが、完全に別個の個人だった)、クローンも特別な存在足り得ない筈だ。そんな当たり前の前提を無視して始まるこの物語を、少なくともSFとしてプラスの評価をすることはできない。
 主人公が(優秀とされている)学者なのに、そんなことにも気付かないってのもなんだかなぁ。もうちょっとさぁ、こうケレンってのを利かせて欲しいものである。
 こんなことを言ってるからSFは一見さんお断りなジャンルになってしまうのだろうけれど。


2001/10/18

 電撃hp14号を買ってくる。
 あ、「イリヤの空、UFOの夏」が載ってない。つーことは2巻は13号までのストーリーなのか。……3巻以降は一体いつになったら出るのだろうか。

 あーそうだ。書くネタがない時は困ってることを書けばいいんだ。
 というわけで現在困っていること。RealPlayer7がまともに動かない。いや、動画の再生はできる。が、終了できない。Quitすると、「Real Player must be restart.」というダイアログが出て、勝手にリスタートする。これは別にQuitしない時でも不定期に起きる。
 世の中が全部QuickTimeに統一されてくれれば、こんな腐れソフトを使わずとも済むのだが、悪貨は良貨を駆逐するものなので、仕方がない。悪の帝国はQuickTime≒MPEG4にさえ、腐れ仕様を押しつけて互換性を台無しにしてくれているようだが。
 まー、そんなことはどうでも良い。これが、Real Player7 Mac版固有の問題ならば、早晩問題は解決されるだろう。しかし、これが私個人の環境に関連した問題だとすると、話はややこしい。なるべくシンプルなシステムを目指しているので、そんなことは無いんじゃないかとは思うのだけど。
 というわけで、他にもReal Player7がまともに動かない人を募集。いや、応募しても特に特典はありません。


2001/10/19

 頭痛。一回休み。

 昨日の募集に重要な追加情報。OSは9.2.1です。


2001/10/20

 洗濯をする。
 午前中に干して、一日晴だった筈なのに、乾いていないのがあるというのはどういうことですか。

 床屋に行く。
 家から一番近い床屋は、妙に顧客管理をがっちりしていて、前回行ったのが7月だったということを指摘される。
 心なしか、髪が伸びるのが遅くなったような気がする。ここのところ、まともに三食食べてないからなー。

 押井守「Avalon 灰色の貴婦人」(メディアファクトリー)[bk1で購入]読了。
 映画のノベライズではあるが、映画のストーリーをなぞったものではない。たぶん舞台も登場人物もまるで違う。
 映画では描かれなかった、Avalonという架空のゲームに興じるゲーマーの誇りとか拘りとか、そういう一般世間から見ると「下らないこと」をしっかり描いたマニアックな作品になっている。
 他人から見たら下らないことに拘ってやせ我慢してみせる男の物語をハードボイルドと呼ぶのならば、この作品はハードボイルドと呼んでも構わないだろう。
 少なくとも映画よりはキャラクターが描けているように思えるし、派手なシーンも多い。ゲーマーを自負する人間ならば読んでみても損ではないと思う。映画を先に観ておくと、ちょっとニヤリとできる仕掛けもある。


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