ざつだん

インタヴュワ:TS:日本語に長けた謎の中国人

でかけんぼう:た:駆け巡る男たかし君


TS「どうしてまた県庁の写真なんて集めたんですか?」
「いいや、別に県庁でなくても良かったんですけどね。たまたまですよ」
TS「といわれますと?」
「目的は日本の47の都道府県全部に行くことだったんです。だから 行った証拠になるものだったら何でもよかったんですよ。どこの県にでも 必ずあって誰が見ても判りやすいものと考えたらたまたま県庁の写真だったんです」
TS「では他の物になってた可能性もあったわけですね」
「例えば県境に立っているじゃないですか、ここから◯◯県っていう看板。 はじめはあれにしようかって考えたんですよ。でも北海道と沖縄が揃わないんですね。 JRの駅舎もいいと思ったんですけど沖縄が駄目だし。結局、県庁にしたって県名の プレートがない所もあったんですけどね」
TS「そもそも47都道府県全部に行こうと考えたのは何故なんですか?」
「阿刀田高という作家がいましてね、ファンなんですけど、彼の作品で「ぬり絵の旅」 っていう小説があるんですよ。男と女の話なんですけど、エピソードで、日本の 白地図で自分が行ったことがある県に色を付けていったらどれくらい埋るか、って いう下りがあるんです」
TS「はあ、そうですか」
「早速自分も塗ってみたらこれが半分も埋らない。西の方なんか真っ白なんですよ。 彼女にもその本を読ませてぬり絵を作らせたら彼女は関東以北がぜんぜん埋ってないんです」
TS「全部埋る人なんて滅多にいないんじゃないですか」
「それ以来出かける時にちょっとその事を意識するようになってですね」
TS「それが今回47都道府県に行こうとした理由なんですね」

「いや違うんです。まあ根底がそうだということなんです」
TS「他にも理由があるんですか?」
「本を読んで以来意識していろいろなところに行ったんで3分の2くらい白地図が 埋ったんです」
TS「30県くらいですね」
「そうですね、で、ある時ふと考えたんですよ、今まで塗りつぶした県に ついて行った事を証明できるものってあるかなあって」
TS「証明っていったってなんのためにですか?」
「自己満足のためにやっているんだからどうでもいい事なんですけど 、やっぱり完遂したら人に話したいじゃないですか」
TS「まあそうかもしれませんね」
「例えばはっきり◯◯県だってわかる写真が揃っていたら良かったんですけど、これが そう全部は揃わないんですね。それで思案の末全部の都道府県庁の前で写真を撮ろうという考えに 辿り着いたんです」
TS「それを一年でやろうっていうのも無茶じゃないですか?」
「最初は一年でやろうとは思っていませんでしたよ。1月と2月に埼玉県庁と 北海道庁を撮っているんですが、この二つは偶然で、どちらとも スキーに行ったついでだったんです。3月に青春18切符を使って近畿4府県に行ってから 、遠くても意外と安く行けることを知り、年間計画を立てたんです。その時点では沖縄 は入っていませんでしたけどね」
TS「計画通りに実践できたんですか?」
「ほとんど計画通りでしたね」
TS「凄いですね、良く会社を休めましたね」

「この旅行のために使った有給は合計5日だけですよ」
TS「そんなもので47県まわれるものですか?」
「今は交通機関が発達していますからね。お金に糸目をつけなければ もっと少ない日程でできますよ」
TS「といわれますと、お金はそれ程かけていないのですか?」
「う〜ん、難しいんですよね。例えばスキーのついでに行ったって場合、 交通費をどうとらえたらいいかとか。まあ県庁を訪ねることを含んだ旅行全部 について僕個人から出ていったお金はスキー代とか食事代とかも全部含めて 30万円弱です」
TS「その額ってどんなもんなんですかね」
「価値基準の問題ですからね。でも、たとえ県庁巡りをしなかったとしても いろいろ出かけたりするんですし、買い物なんかに行ったりすることを考えれば安いでしょ。 普通は青森まで新幹線で往復して一泊すれば軽く5万円くらいかかるんだから」
TS「ただ県庁に行くだけなんですか」
「違いますよ。プランはみっちり練ってます。バランス的にはベストプランだと思いますよ。 同じ条件で他の人がこれ以上の計画をたてられるかどうかっていうほどね」
TS「条件とはなんでしょう?」
「時間とお金と旅行の内容です。制約された少ない時間をなるべく 有効に使う事、実現手段に掛ける費用をなるべく抑えること、単に県庁を撮って帰るだけの 旅行にしないこと、この3つのバランスをうまくとるわけです」
TS「難しいですね」

「一つ一つは難しい事ではないですよ。安い旅を考えるなんて誰でもできる じゃないですか。だけどただ安いだけじゃいけないんです。常識的に考えれば 移動時間と移動コストは反比例しますから、安い旅はそれだけ時間的制約が増えるわけです。 その中にバラエティに富んだ観光なんかを盛り込むのが難しいんですね」
TS「言われてみるとそうですね」
「車で何時間でどれだけ進めるかとか、何分で何キロ歩けるかとか、寝ないで何時間起 きていられるかとか、ざっと把握していないとできないし、鉄道路線図や道路地図も大雑把 に頭にないと大変だろうし」
TS「なんか凄い事に思えてきたなあ」
「強靭な肉体は必要ですね(笑)。おちおち風邪もひいてられませんから」
TS「そうでした、そうでした。毎月最低1県行ってるんでしたよね」
「それもちょっとした遊びなんだけど、どうせ1年で完了させるんだったら12カ月を 目一杯使ってやろうってね。結構付加価値あるでしょ」
TS「とことん凝ってますね」
「凝り性なんですよ。手の込んだ作業が好きなんです」
TS「何かハプニングはなかったんですか?」
「う〜ん、一番まいったのは財布を盗られた時ですね」
TS「え゛!」
「東北地方を制覇しにいった時に秋田の寒風山で車上荒しにあって現金と ハイカ合計3万5千円が入った財布を盗まれちゃったんですよ」
TS「それは大変でしたね」
「宿泊費にと思って別にしておいた財布なんで他には何も入っていなかっ たんですが泊まるお金がなくなってしまったんです。 旅行を中断するのもシャクなんで毎日車に寝泊まりしました」

TS「車ですか?」
「もともと半分は車で泊まる予定だったんで用意は十分だったんです。布 団も積んでいたし、カーテンも用意してあったし」
TS「良く車に泊まられるんですか?」
「始めて泊まったのは92年に北陸に旅行に行った時です。GWだったせ いか金沢で泊まる場所がどうしても見つからず北陸道の徳光SAに車をとめて 窓にタオルやらシャツやらを挟んでサンシェイドして寝ました」
TS「シートを倒してですか?」
「そうです。その後そういう事態に備えて窓の大きさに合わせてカーテン を自作しました。次に泊まるチャンスがきたのはその夏に佐渡ヶ島に行き台 風で帰ってこれなくなった時です。船付場近くの公園にとめて寝ました。 しかし、車のシートで寝るのは結構疲れるので工夫してみたところ、 後ろをトランクスルーにして布団を敷けば、少し斜めになるけど大人2 人十分寝られるスペースが作れることが判ったんです」
TS「でもやっぱり斜めじゃ大変でしょ」
「ええ。スキーの時なんて板と一緒に寝てましたからね。そこで車検間近 の車を売って、まっすぐ寝転がれる車を買ってしまったんです」
TS「えっ!そのためでけでですか?」
「ほとんど、そのためだけです。しかし宿泊費がかからないとその分時間 があればすぐに遠くまで行けてしまうんで余計お金がかかってるような気も しますけど。とにかく行動範囲は広くなりました」

TS「宿と一緒に動いてるようなものだから確かに心強いですね」
「県庁巡りだけで合計24泊してますからね。93年ではその他で4泊」
TS「お見それしました。他には何かありますか?」
「ハプニングでしたね、う〜ん、そうだ去年は台風が幾つか来たでしょ」
TS「ええ、そうでしたね」
「9月に18号だったかな、が来たんだけどちょうどその台風に向かって 夜行電車で出かけたんですよ」
TS「それは何処に行った時ですか?」
「神戸と和歌山なんだけど。あの時は後の事何も考えずに出かけたんです よ。JR西日本は台風でダイヤが大乱れでどうなるかと思っていたら、 関西は台風一過で突き抜けるような青空。無事に旅程をこなせました」
TS「いつも天気には恵まれたんですか?」
「いわれてみると一日中雨に降られた日は全く無いですね。日頃の行ない が良いせいでしょうか」
TS「またまた」
「神戸の時もそうなんですが、四国に行った時も、東京が台風で冠水した 時だったし、新潟に行った時も東京は雨でした。うまい具合いに雨を外してるんですよ」
TS「それはなかなか強運ですね」
「強運といえば、交通事故にも逢ってないですからね」
TS「車なんか結構走ったんでしょ」
「7月3日に買った車を12月31日までに20700km乗りました」
TS「月平均で3500kmですか。では今27000位ですか?」

「そうですね今日は3月10日ですけど走行距離は27500kmです。前 の車もだいたい同じペースで乗ってたんですけど、計算したら93年は全部で36700km走ってました」
TS「記録でも取っているんですか?」
「ええ毎日の走行距離と行った場所、有料道路、ガソリンについての記録 がデータベースにしてあるので何でも計算できます」
TS「それはまた細かいですね」
「だから凝り性だっていったでしょ」
TS「もしかして鉄道とかも記録をつけてるんですか?」
「いや、この県庁巡りに関しては全部足取りを記録してあるんですが、他 の場合はないですね。だいたい切符は手元に残らないじゃないですか」
TS「まあそうですけど。変な事色々やっていますね」
「県庁巡りと並行して高速道路全線走行と国道標識写真集めも 目指しているんです」
TS「JR線2万キロ完全乗車とかってよく聞くけど道路ですか?」
「でもそんなに気合い入れてないからあまり進展がないんだけど」
TS「他には?」
「○○巡りとか○○集めとかいろいろね」
TS「どんどん脱線してますね」
「ははは(^^;、そうだね」

TS「本題に戻って、47もの県庁に行って全部覚えているんですか?」
「全部完璧に覚えていますよ」
TS「一番豪勢だったのってどこ?」
「う〜ん、やっぱり東京都庁かな。地方では新潟、沖縄がえらかったね」
TS「逆は?」
「あんまりたいした建物でなかったのは青森」
TS「たいしたことないとはひどいですね」
「う〜ん、でもあまり県庁らしくないんだよ」
TS「そろそろネタが尽きましたね。あと10ページもあるんですけど」
「じゃあ、一枚づつ解説入れようか」
TS「そうですね、そうして下さい。」
「じゃあ埼玉県庁から」
TS「お願いします」
「この後軽井沢プリンスホテルスキー場に滑べりに行きました。おわり」
TS「そっ、それだけ〜」
「いいのいいの、次」
TS「北海道庁」
「これもスキーの時、そうそうこの時生まれてはじめて飛行機に乗ったん だよ。あの時は興奮して寝られなかったよ」
TS「へえ」
「あと向こうで食った寿司がえらく旨かったよお」
TS「いいですね単純で。次は滋賀ですか」
「青春18切符で金曜日の夜から大垣夜行に乗って行ったんだけど、満員 だし冷房入れてるし、大変だったよ」

TS「この後すぐに京都ですね」
「そう、琵琶湖でちょっと遊んでJR京都駅から地下鉄で御所まで行って そこから歩き」
TS「この顔って何?」
「大垣夜行の冷房のせいでお腹こわしちゃって、この後すぐに向かいの京 都府警に駆け込んだんだよ」
TS「はっはっは、そりゃいいですね。で大阪には?」
「そのまんま地下鉄で京都に戻って、新快速で。新快速っていい電車だよ ね。大阪城公園駅から大阪城まで歩いて行って天守閣から府庁を撮って時間 がなかったし疲れたから近くまで行かなかったんだよ」
TS「駄目じゃないですか」
「そう、唯一の汚点なんだよな」
TS「で、奈良に急いだと」
「うん、途中斑鳩で法隆寺によって、奈良に行き県庁と南大門を廻って、 そのまま京都へ向かったんですよ」
TS「ほお」
「何度か乗り継いで逆夜行で東京に朝着いたんです。帰りは空いてたな」
TS「その日は疲労度Aですね」
「なんの、切符がもったいないって水戸の偕楽園に梅見に行ったんです」
TS「・・・・・」
「で、次の週は長野まで」
TS「アクティブ派ですね…」

「開通日に長野自動車道、上信越自動車道を通って行ったんです」
TS「結構遠いでしょ」
「平気平気慣れですよ。善光寺参りして安全を祈りました」
TS「次は岐阜ですね」
「長野に行った次の週に、もう一度大垣夜行で出かけたんだね」
TS「凄すぎますね」
「岐阜県庁は鉄道のアクセスが悪くて随分歩かされました」
TS「そして名古屋に逆戻りですか」
「そう名古屋では名城公園で桜を愛で、そして三重県へ」
TS「やたら忙しいですね」
「県庁近くに津偕楽公園っていうのがあってまたそこで桜の花見」
TS「ちょうど季節なんですね」
「明るいうちに東海道で静岡に。駿府公園でもお祭りしていてまた花見」
TS「東京に着いたのは?」
「夜の23時49分。東西線終電にダッシュ!」
TS「今度こそ休みですね」
「いいえ、次の日はいちご狩りで千葉に。犬吠埼とか九十九里浜とか行っ たんですよ」
TS「休みがないじゃないですか」
「湿疹がでて次の火曜日に休みました。でもその週末は若洲公園に行った り、つくばに行ったり」
TS「出歩いてばっかりですね」
「次は東北旅行だ〜、ははは(^^;」

TS「今度は車ですね」
「そう金曜の晩に出発して一気に十和田湖まで。東北編は面倒なので、ど んな所に行ったのかを羅列します」
TS「いいですよ」
「十和田湖、奥入瀬、竜飛岬、弘前、大間崎、仏ヶ浦、むつ、竜仙洞、宮 古、盛岡、田沢湖、角館、秋田、男鹿半島、寒風山、平泉、中尊寺、厳美渓、 睨鼻渓、巨釜、半造、松島、仙台、蔵王、山形、福島、水戸」
TS「で帰ってからは?」
「わかってきたじゃないですか。翌日は千葉へ車を見に、その次の日は、 横浜まで車を見に、そして日曜日は関内へ神奈川県庁を訪ねて、 そして翌週は土曜日に筑波山に登り、日曜日に甲府へ。山梨では昇仙峡に行きました。」
TS「もうだんだん慣れてきましたよ。で、次は群馬ですか」
「今度は間があくんですが、その間勝浦、養老渓谷、鴨川、TDL、上高 地、大洗、水戸、といろいろ行ってるんですよ」
TS「はいはい、で、群馬では何処に行ったんですか?」
「榛名山と吾妻渓谷、軽井沢」
TS「車ですよね」
「そうこの翌週に車がかわるんだ。その前に乗り収めで、つくばに寄って佐久に帰省し たり、ディズニーランドに行ったりしたけど」
TS「新車ですぐに県庁行ったんですか?」
「いいえ、来た次の日は群馬の山間部までドライブ。それから友達と水上温泉まで 遊びに行ったり、谷川岳に行ったりして月末まで県庁はお預け」

TS「で、北陸ですか」
「そう金沢に用事があったんで、3日間で富山、金沢、福井と行ったんで す。安房峠を越えて、巣山林道に寄って、福井からは九頭竜湖を通って3日目は 木曾街道に沿って馬籠、妻籠宿、寝覚めの床とか寄りました」
TS「どうも移動量が並じゃないですね」
「まあまあ、その週末は18切符で新潟に行ったんです」
TS「・・・・」
「ムーンライトで朝新宿に着き、そのまま宇都宮へ行って午後は烏山線で 竜門の滝へ」
TS「疲れを知らないんですね」
「いやいあ、夢中だったんですよ。その後夏は伊豆に行ったり、18切符で 袋田の滝に行ったりして遊んでとうとう四国漫遊の旅がやってきます」
TS「随分廻ったんですよね」
「ええ、まず会社から帰って一気に浜松まで、休憩して次の日に岡山県庁、 岡山城に寄って瀬戸大橋を通って高知まで。高知城で夕涼みをして、 翌日は四万十川に沿って上流へ、半対側を下って足摺岬まで。 室戸岬と淡路島に行ったのは翌日で、次の日は車をおいて坂出から18 切符で広島及び山口へ。山口ではSL山口号に乗車。 さて次の日は車で四国最西端佐田岬まで行き、フェリーで大分へ。 大分県庁に行き再び四国へ。道後温泉で汗を流し翌日一気に東京に戻る」
TS「動いてばっかりですね」
「まだまだ、一週間あけずに大垣夜行で出かけるんですよ。台風の中」
TS「神戸、和歌山ですね」

「神戸では異人館、和歌山では和歌山城に寄り、その夜は新宮行きの夜行 列車で夜を明かしたんですけど、疲れましたね。次の日は国宝犬山場に寄って帰りました」
TS「いよいよ沖縄ですか」
「沖縄までのひと月は西沢渓谷に行ったり、城ヶ島に行ったり、佐久に帰 省したりして過ごしました」
TS「ちっともじっとしていませんね」
「沖縄も色々行ったんで箇条書します。県庁、玉泉洞、はぶ公園、瀬底、 茅打バンタ、辺戸岬、ひめゆりパーク、ひめゆりの塔、伊計島、万座毛残波岬、 首里城。沖縄で泊まったホテル『キャッスルのざき』はかなりひどかった。 3日目には慣れたけど」
TS「どうせ帰ってすぐ出かけたんでしょ」
「そう、その週末は山陰へ。一気に松江まで行って、鳥取砂丘で泊まり、伊 根、天の橋立、敦賀に寄って帰る。次の日は府中へ」
TS「もう驚きませんよ。さて千葉ですね」
「まあまあ、その前にあぶくま洞や妙義山に行ってるんですから、その話 もさせてくださいよ」
TS「はいはい」
「妙義山は紅葉のさなかに登ったんですけど、奇麗だし眺めはいいし最高 ですよ」
TS「はいはい、今度是非行ってみます」
「あなた、もう飽きてきましたね。まあ後少しですよ。千葉は文化の日に行きまし た。それだけじゃなんなんでついでに富津岬まで」

TS「ついでにって…、ついでが多すぎですね」
「そして日曜に早起きして、日の出とともに都庁撮影」
TS「何でそんな朝早く?」
「いや、昼日中人が大勢いる中じゃ恥ずかしいじゃないですか」
TS「東京じゃなければ恥ずかしくないんですか?」
「旅の恥はかき捨てって言うしいいんですよ」
TS「まあいいや、やっと九州ですね」
「ええ。九州は事情があって一人で行く事になったんです。そこでわざわ ざリモコンでシャッターが切れるカメラを買ったんです」
TS「わざわざそれだけの理由でですか」
「ええそうです。前のカメラに残ったフィルムを処理しに養老の滝まで行 き、一回帰省して布団を持ち帰り、いざ出発したのです」
TS「九州一周に何日かけたんですか?」
「今回はゆっくりした旅でしたから、10日位使いましたよ」
TS「じゃあ最後なんでゆっくり聞かせて下さい」
「ええ。まず3時に退社して、そのまま帰宅せず出かけます。兵庫県の社 まで行ったんですが、名古屋から先は雪で、関ヶ原辺りは随分積もってたんです。 翌朝なんと中国道は雪で封鎖されちゃいました」
TS「困りましたね」
「渋々、山陽道にでたらそっちはうってかわって快晴。無事に九州に辿り 着けました。その日のうちに福岡県庁、佐賀県庁をまわって長崎で夜を明か したんです。SAで鍋を持ちだしベンチで食べたんですけど、回りの人が不 思議そうに眺めてるんですよ」

TS「そりゃ不思議でしょう」
「次の日はクリスマスイブだったんですが一人寂しくハウステンボスへ。 結構奇麗でした。夜は長崎県庁に泊まり、翌日は島原城、雲仙を見学し フェリーで熊本へ。県庁と熊本城に寄ってそのまま鹿児島まで行っちゃいました」
TS「随分急ぎましたね」
「鹿児島で長く過ごそうと思ったんです。鹿児島では指宿、桜島、佐多岬 なんかをまわって宮崎へ。宮崎でも霧島だ、綾だ、高千穂だ、といろいろ観光 してまわったんです。国見岳で峠の茶屋のおばちゃんと仲良くなって随分 長っぱなしをしたんですよ」
TS「話好きですからね」
「いやそんなことはないんですが。九州では何と言っても阿蘇が最高でし た。感動しまくりで写真ばっかり撮りました」
TS「とうとう47県制覇しましたね」
「ええ。帰りに岡山に立ち寄ったんですが、そこでちょうど車の走行距離 が20000kmになったんです」
TS「ほほう」
「帰りは名古屋の弟宅で一泊し中央道で長野へ帰ったんですが、さすがに 長野は雪でした」
TS「やっと一年分の話が終りましたね」
「まだまだ他にもあるんですけどねえ」
TS「それはまた今度聞かせて下さい」
「本当にそう思ってるんですか?まあいいや」

TS「では最後に一言、47都道府県庁巡りを達成した感想をどうぞ」
「でかけてでかけてでかけまくってとうとう47つの都道府県庁全部に行 きました。車を使い、列車を使い、飛行機を使い、船に乗り、自転車に乗り 47枚の写真を集めました。感激しています。 他人にしてみれば意味のない事でしょうけど、達成した時のこの 喜びは私にしかわからないでしょう。 この喜びを得られただけで私は満足しています。 是非あなたも喜びを得るために何かにチャレンジして下さい」
TS「・・・・」
「・・・・」
TS「・・・・」
「・・・・」
TS「このセリフあまりにもくさすぎますね」
「うるさい」

<< 完 >>

94.2.15 T.S.おたかし


←表紙へThe・写真集へ→