出演:
コンセール・モロー
指揮:師 茂樹
1997年11月1日(土) 5:30pm
神田キリスト教会(東京・秋葉原)
ルネサンス期・黄金世紀のスペイン教会音楽を専門に取り扱う合唱団 「Concert Moreau(コンセール・モロー)」の3回目の演奏会。 スペインといえばビクトリア、ゲレーロあるいは賢王アルフォンソ10世らを 連想される方が多いと思うが、この団体の選曲は非常にマニアック。 私も曲はもちろん作曲家の名前すら知らないのがほとんど。A.ロボも タリス・スコラーズ(TS)のCDが出ていなかったら知らなかっただろう。 合唱歴の長い社会人・学生の男女20人程度から構成されており、今回は器楽演奏も 加わった。会場は小さな教会なのでそれほど収容できないが70、80人くらいは 入っていただろうか。第1部は「あなたの知らないスペイン」。ほんと、TSの新譜に収録されている A.ロボの「ようこそ天の女王」以外は知らない曲ばかり。そのせいか正直これを 今書いている時点で音楽の印象が残っていない。しかし演奏は各パートの バランスがとれており和音も美しかった。
第2部は「騎士ドン・ドメニコの肖像」。 これは驚き。D.スカルラッティがスペインで活躍し、合唱曲を書いていたとは (って知らないのは私だけか?)。とくに「ミゼレーレ(=主よ、あわれみたまえ)」の ようなアカペラで聖堂で歌われるような曲があったとは知らなかった。 これは有名なアレグリのものと同様にグレゴリオ聖歌が織り混ぜられながら 歌われていくもので、ひとつの宗教ドラマともいえる作品。録音があったら ぜひ聴いてみたい。聖歌の部分をバリトンの一人が客席奥に立って朗唱、 雰囲気を盛り上げた。
第3部は「宮廷のリズム、教会の旋律」。 これまた知らない作曲家で、エスペランサ「おお、大いなる神秘」は 有名なビクトリアのものとは違ってソプラノのソロが入る。 オルティス「『変奏論』1553 より」は器楽のみの演奏で、ロマネスカの旋律による レセルカーダ第6番は聴き覚えのあるグリーン・スリーヴスの低音のメロディ。 ガンバは通奏低音はよかったが、合奏にはやや難があったように思う。 今回の演奏会で一番いいと思ったのがオルティスの「サルヴェ・レジーナ (=万歳、憐れみ深い女王よ)」。これも初めて聴く曲だけど、変化に富んだ 曲自体の面白さに加え演奏もなんだか乗っているようで、とくにソプラノと バスの両ウイングから揃った声が飛んでくるのが気持ちよかった。
マイナーな選曲のせいか、観客の反応はいまひとつな 感じであったが、 おそらくほとんどが国内初演であるような曲に果敢に挑戦する姿勢は もっと評価されていいのではと思う。また配布されたプログラムには 歌詞対訳の他これら有名でない作曲家およびその曲についても解説が 及んでおり、丁寧なつくりが光る。 来年(98年)はビクトリア生誕450年、さ来年(99年)はゲレーロの没後400年ということで 、今後の演奏会での選曲が楽しみである。 ちなみに、99年1月来日予定のTSはゲレーロを特集する可能性があるとのことだ。