主催:栃木[蔵の街]音楽祭実行委員会/栃木市/栃木市教育委員会
会場:栃木市文化会館エントランスホール
●ここに紹介する演奏会は文化会館のエントランスホール特設会場にて 無料で行われたものです。リレー形式のため開始時間が遅れたり、出入口と なっているため雑音が入ったりと演奏者にとってはやりにくい部分もあったと 思いますが、いつでも聴ける気軽さと生演奏を間近に体験できる醍醐味は こういう形式ならではのものでしょう。
プロの合唱団員も参加するスコラ・カントールムはルネッサンス・ バロック期の無伴奏宗教曲を主に取り上げ、毎年2月または3月に 定期演奏会を企画している。音楽祭参加や古楽オーケストラとの 共演も多数。この日のプログラムは後期フランドル楽派のデ・ローレ、 ガルス、ヴェルト、そして同時期にイタリアで活躍したアネリオ、 パレストリーナ、ジェズアルドの曲が組まれた。総勢17人で歌われたが、 タイトルにあるように時の流れと作曲家の個性を作品に表す好演だった。 97年3月20日に東京・武蔵野市にてパーセル、シュッツを取り上げた 演奏会が予定されてる。
シュトルム合唱団は東京・下北沢でルネッサンス・バロックの合唱曲を 無伴奏で歌っている混声合唱団。今回の演目は、 グレゴリオ聖歌・聖母マリアのためのミサのイントロイトゥス 「われら喜ばん Gaudeamus」に基づく4声のミサからの抜粋。 初めて聴いたがたいへん美しく華やかな曲だ。さすがはジョスカン。 この日は小人数・指揮者なしでアンサンブル的に歌われたが、 たったひとりのBassも安定しており、11月24日に東京で行われる ミサ全曲の演奏会でも好演が期待される。
古楽演奏家集団アヴァンティに属するイタリア器楽のスペシャル・ アンサンブル、カラヴァッジェスキの演奏会。今回は17世紀に焦点を 当て、ファルコニエーリ、メルラ、ピッチニーニ、ウッチェッリーニ、 サルヴァトーレの楽曲が演奏された。実はプロの室内楽コンサートを 聴いたのはこれが初めてであり、大変感銘を受けた。タブラトゥーラの 時も感じたが、仕事としての演奏であっても演奏家本人が音楽を楽しんでこそ 聴衆を惹き付けることができるという事実を実感させられる、そんな 演奏会だった。97年3月1-2日には東京・三鷹市にて「ウィークエンド 古楽セミナー」と題するイベントが予定されている。
つくば古典音楽合唱団は16世紀から現代までの西洋の宗教曲をメイン レパートリーとする混声合唱団。これまでオーケストラと共演したり ソリストを招くなど幅広い活動を行っている。今回は ブルックナーの没日10月11日を翌日に控えてのタイムリーな演奏会。 パレストリーナとブラームスを交えて全曲無伴奏で歌われた。約30名 ほどで演奏されたがブルックナーの7声のアヴェ・マリアがよかった。 古楽ではないがブルックナーの合唱曲はこれくらいの人数で歌われる とバランスがいいものが多い気がする。11月9日につくば市でほぼ同一 プログラムの単独演奏会が予定されている。