タリス・スコラーズ
「フランドルの音楽」

==========

指揮:ピーター・フィリップス
主催:アレグロミュージック
1996年1月29日(月) 7:00pm
カザルスホール(東京・お茶の水)

★日本でもすっかりおなじみになった タリス・スコラーズ東京公演の3日目。 今回はフランドル楽派の作曲家に光を当てるプログラムだ。私はこの日が プロの合唱団の演奏を聴く最初の日となった。この声楽アンサンブルのCDは すでに8タイトルを購入して、そのハイレヴェルなハーモニーをほとんど毎日の ように聴いていたので、ぜひ生の演奏を確認したいと常々思っていたがやっと 実現したというわけだ。

★演目についての解説は、私とともにこのコンサートを鑑賞した方々によるもの( 最近のコンサートより@M.A.B.男声合唱団)があるのでそちらを参照されたい。 ここでは初心者の私が全体的に感じたことを書いていくことにする。

★最初に聴いてまず思ったのは、決して大声で歌っているわけではないということ。 とにかく会場の音響を最大限に活用する方向で演奏されているようだ。それから、 音楽が停滞することなく流れていることだ。いままでアマチュアの演奏を何度か 聴いたことがあるが、とくにルネッサンスものではこの点が問題になることが 多いのではないか。ブレスの仕方とか指揮方法といったテクニカルなことをクリア したとしても、真に淀みのない演奏をするのは大変なことだと思う。この日の 彼らの演奏は、聴衆をまんまとその流れの中に引き込んでいた。

★Josquin の「Ave Maria」を聴いていて思ったのは、同声部の歌い手の 声が見事に一致することだ。ソプラノは新人が加わったこともあって出だしが 若干バラつくが、定常状態に入った時の3人の声の一体化は、初心者の私の 耳に強烈に焼き付いた。驚くべきことは、その一体化が女声と男声の組である アルトにおいてもなされていることだ。この女声アルト(キャロライン・トレバー) の声はとても中性的で、女声はもちろん男声ともよく馴染む。この日の男声 アルトは風邪気味で(なんと演奏中にくしゃみまでしてしまった)調子が 良くなかったが、彼女のカバーリングで全く問題なかった。普段目立つことは ないが、彼女の存在がこのグループを支え、世界一有名な混声古楽アンサンブル たらしめているとの思いを強くした。

★なお、以前にビデオでピーター・フィリップスの指揮を見て、彼の指揮では 歌えないと思ったが、目の前で見てみて、やっぱり歌えないと思った ;_;。

★初めての私にとっては、どんなひとが観客として来ているのか、客層にも 興味があった。見た感じ、その筋の人々(どんな筋だ ^^;)が多いような気が したが、20代も割といたようだ。男女とも30代から50代まで均等にいて、幅広い 世代に支持されているなと思った。

★会場では彼らのCDやLDが販売されていたが、1枚2,300円と高めだった。しかし、 既発売からの編集盤である「テューダー・コレクション(4枚組、CDGIMB450)」は 税込みで4,000円と、ショップでも見かけない値段で売られていたので思わず買って しまった。あとでよく見てみると5枚分の内容が含まれており、大変にお買い得な セットだ。

★今回の来日公演は過密スケジュールだったこともあり、全体的に出来は良く なかったようだ。そんな中で、初めてのコンサート鑑賞で彼らのベストの演奏を 聴くことができ、全くもって幸運だった。ただ、今後他の団体の演奏を聴いても 満足できなくなってしまうかもしれない :-p。 最後になったが、私にこのコンサートを聴く機会を与えてくれた(それも 前から3列目の真ん中!!)M.A.B.男声合唱団の新郷、吉村両氏に深く感謝したい。

[ゲストブックに書き込みをする]


[back] Back to Early Music Concert Report Index
Last Modified: 2008/Jun/10 00:11:09 JST
ALL CONTENTS COPYRIGHT(C) 1996-2005, Masaru TAIRADATE. All rights reserved.
[E-MAIL] tallis@cc.rim.or.jp