図版引用に関わる著作権に関しての見解

 著作権の有効期限は、基本的に「著作物の作者の死後50年間」(国際的には70年とする所もあり、また戦争などによる特殊な加算もある)です。
 当方で利用している『山海経』の図版は、いずれも清代(AC1636〜1911)に描かれた物なので、明らかに原画の作者の著作権は消失しています。まず、この点では問題がありません。
 
 次に、図版を出版物からスキャンしている事について。
 書籍に掲載されている図版は、オリジナルの古文書である『山海経』の絵図を、写真、またはコピー機などで忠実に再現した「著作物の複製」に当たります。複製した図版は著作権保護の対象にはならないとされているため、書籍の図版そのものには著作権が発生していません。(注1)

 最後に、書籍その物に対して出版社が持っている著作権、すなわち出版権と編集著作権についてですが、通常、出版権は初版発行から3年間で消失します。
 直接にデータの取得をした『山海経図説』の初版発行は1998年2月、『山海経校注』は1993年4月なので、恐らくこの点はクリアしている物と思われます。
(ただし著作者との契約によって、版権を延長する事ができるようです。でも『山海経』の著作者って…契約交わせないですよねえ??(--;;)
 
 編集著作権については、これはレイアウトやフォントの選択、装丁などを「丸写し」する場合に問題になる物で、個々の写真や図版に対しては働かないようです。(注2)
 当方では「編集著作権問題の生じない個々の図版」を複製しているため、この点でも問題はないと考えられます。

 以上のような考えの元に、『山海経』の図版を掲載しています。
 (もしも出版社サイドで問題があるようでしたら、連絡をお願い致します)


参考ウェブページ
最高裁判所ホームページ (「知的財産権裁判例集」から、「顔真卿自書建中告身帖事件」の判例を参照。「顔真卿」の文字列と「著作権」の権利種別で検索すると、判決の全文が閲覧できます)
ネチケット〜著作権Q&A〜 (「モナリザや浮世絵をホームページに載せても良いか?」のQ&Aを参照)


◆「参考文献と引用について」に戻る◆

◆INDEX◆


 注1
 これは判例による解釈です。

 昭和57年、「顔真卿自書建中告身帖事件」の東京高裁判決において、「著作権の消失した美術品は人類の財産であって、所有者の物ではない」「所有者は、物体としての美術品を所有しているだけであり、その複製に対して所有権を行使することは出来ない」と宣言されています。
 以来、絵または書画等の平面的な作品のコピーは、オリジナルの作品が著作権切れであれば自由な利用が可能、という解釈が、少なくとも日本では定着しているようです。

 ただし、立体的な作品(彫刻や建築など)の写真については、「どの角度からどのように光を当てて撮影したか」の部分で、写真撮影者のオリジナリティ(すなわち著作権)が発生するため、もう少し問題が複雑になるようです。

 本文に戻る


 注2
 この事は、フリー素材を使ってホームページを作る事に喩えると、かなり分かりやすいのではないでしょうか。
 どの素材をどれだけ使うか、壁紙とアイコン等の素材どうしの組み合わせはどうするか、文字色を何色にするか、レイアウトはどうするか・・・等の取捨選択によって、もし同じ素材屋さんの素材を使っていたとしても、製作者ごとに違ったデザインのページを作り上げることが出来ます。
 この「選択」が「編集」です。

 さて、出来上がったページを見て、「私もこの素材を使いたい」と思った場合には、そのページの製作者、つまり編集者ではなく、素材その物を作った素材屋さんの方に使用許可をもらいますよね。
 これが、「個々の写真に対しての著作権」をクリアする事に当たります。

 編集者は、素材その物に対しての著作権は持っていません。同じフリー素材を使っているページを見つけたからと言って、「何でそれを使ってるのよ」と怒るのは、全くのお門違いという訳です。
 ただし、素材の使用方法からレイアウトまで、ページデザインを全てパクられていた場合には、「著作権侵害だ」と訴える事もできます。つまり、「編集著作権」を主張できるのです。

 しかし、この「編集著作権」は「編集の結果として完成した、ページのレイアウトデザイン」に対しての物なので、「素材の無断使用」については権利を主張できません。「素材の無断使用」について異議を唱えられるのは、あくまでも素材に著作権を持っている製作者なのです。

 本文に戻る