謎の覆面作家、バーナビー・ロス
当初、この「Xの悲劇」は謎の新人作家、バーナビー・ロスの作品として発表された。
ロスの正体がクイーンであることは厳重に秘匿され、担当の出版社以外はだれひとり
気付くものはなかったという。実際、クイーン名義の「国名シリーズ」とロス名義の
「悲劇4部作」は、共に論理性を重視するパズラーながら文体や作品の雰囲気が全く
違っており、読者がその正体に気付かなかったのも当然だったといえる。考えてみる
ともともとクイーンは2人の人物による共作であるから、いわばこれは念の入った2
人2役トリックの実演。実際クイーンの二人組はバーナビー・ロスとの共同講演と銘
打って、それぞれ覆面をかぶってクイーン役・ロス役となって壇上で互いにけなしあ
うなど、手の込んだ眼くらましでファンを煙に巻いて喜んでいたという。
 
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