フリーマン・ウィルス・クロフツ 
(Freeman Wills Crofts 英 1879〜1957) 
  
鉄道会社の技師として勤務していたが、40代の初めに病気のため長期間療養し、退屈しのぎに書き始めたのが処女作「樽」であった。考えてみると、同時代の巨匠の一人であるヴァン・ダインもまた、長期療養の無聊を慰めるため手に取ったミステリが「この世界」に入るきっかけになった。これは無論偶然の一致だが、ある意味で当時のミステリの置かれていた「位置」を示唆する例ともいえる。すなわち、「紳士」たるものにとってミステリなぞ暇つぶしの道具以上のものではなく、創作についても彼らにとってはあくまで「余技」だったということである。ちなみに「樽」の刊行は1920年。すなわちクリスティの「スタイルズの怪事件」の刊行と同年であり、以後、33作もの長編を発表し本格派黄金時代の担い手の1人となった。
 
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