年度が替わって間もないある日から。朝早くに松戸を出て、何とも弱々しい太陽を背に、西に向かって漕ぎ出す。タイヤが玉砂利を踏んで掃き出す大袈裟な摩擦音は、すぐ繊維が押し合って擦れる圧縮音に取って代わった。
交差笹でできた「渡る道」。
既に左右には建物もなく、黒い泥地は遠くほど霞み、地平線も曖昧となっていた。行く手に延びる白く乾いた繊維の束もまた、その曖昧な境目へ溶け落ちているけど…時々そこから、この「渡る道」と交わる「川の道」が滲み出てくる。
そうなると自然に頭が下がっていって、路面の繊維の間に詰まっていた灰を吹き上げる程、この軽快車を加速させてしまう…合流地点にある筈の「ハブ」へと。