3〜4日目

 開けて4月30日。
 朝のMINIチェックをしようと思ったら、ボンネットオープナーのつまみが壊れる。
 プラスチックのつまみがぱっきんと2つに割れているのだ。これはなんとも不吉・・・。しょうがないのでプライヤーでつまんでむりくり引っ張ってボンネットを開け、クーラントを調べてみるとやっぱりかなり減っているような気がする。うむむむ、調子が悪い。しかし下から漏れている様子もない。走行中に少しずつ漏れていくのかなあ?よくわからん。ともかくまめに水を補充していった方が無難っぽい。まずはなんばの駅前へ行ってマップルを購入。ついでに朝モーニングを食す。んで、10:50やっと出発。

 当初は奈良・和歌山からフェリーで四国に入る予定であったが、大阪で遊んだためにコースを変更した。せっかく明石海峡大橋で大阪〜兵庫〜淡路島〜四国へと道がつながっているのである。それを使わない手はない。四国を時計回りに一周して、やまなみハイウェイから広島道経由で大阪に戻ってきた時に、余裕があれば奈良・和歌山へ。元気がなければ次回回しにしようということにした。

 尼崎から神戸に抜けて、そこから淡路島へ。さていよいよここからは未知の領域に足を踏み込むのである。はたして四国民はうどんばかり食べているのであろうか。
 あ、そーか、淡路島は兵庫県か。しかし淡路島が兵庫県というのも、部外者にはあんまり納得できない。なんかいろいろ後ろ暗いコトがあるのだろうか、などと勘ぐってみる。

 この旅行の一年前、1998年に鳴り物入りで開通した明石海峡大橋はやはり立派な吊り橋であった。ただしそれは外から見た話で、中を走っていると、「でけー橋だなあ」とは思うが、いまいちそのスケールは実感できない。しかし明石海峡の景色はぐーである。あっという間に渡り終えてついに淡路島上陸! でかい! 淡路サービスエリアがあったのでそこに停車。時刻は14:00。ピーカンのお天気。まだ新しいぴかぴかのパーキングエリアである。ドライブなのかたくさんの人が来ていた。メシを食おうと食堂に入ると、そこも立派な内装で、東名のサービスエリアの食堂が裸足で逃げ出したくなるような立派さである。もちろんその分値段もお高めである。街のレストランと異なるのは、やっぱりみんな旅行中なので、着飾った人がいないのだ。まあ、しょうがないけどね。
 牛めし定食を食ってラジエータに水を足す。やっぱ500ccくらい入ってしまうのである。こりゃあどういうこったい? ラジエータに穴でもあいているのか?

 15:10サービスエリアを出発してついに四国へ向かう。大鳴門橋を渡るとそこは四国。'92年にMINIを買って早7年。ついに四国の地を踏むことになろうとわ。ここからは高速に乗ったまま行けるのだが、それじゃあつまらないってんで、鳴門インターで下に降りる。国道11→28号線を通って徳島方面へ。実は学生の頃の後輩が徳島県にいるはずなのである。で、携帯に電話をしてみるがつながらない。携帯の番号が変わったのか、何回かけてもつながらない。でも使ってないならそれなりのメッセージがありそうなものだが・・・こいつは電話を引く金がなくて携帯しか持っていないのだ。まあ、事前に言っておかなかったこっちも悪いんだけどね。
 さて既に午後の4時頃。今日はどこまで行けるだろう。たぶん日のあるウチに高知県には入れるだろうな、しかし桂浜は夜中に通り抜けてしまうにはちょっと惜しい。どっかで車中泊することになるだろう。しかしその前に、室戸岬まで141kmの看板が出たあたりで水温の上昇に気づく。またまたなのである。

 オートバックスがあったのでそこに入る。とにかくラジエータをなんとかした方がいいだろう。駐車していると、確かに車の下に水が溜まっているのだ。てなわけでラジエータの穴塞ぎを買う。これはラジエータ水に混ぜると小さな穴ならふさいでくれるすぐれものなのである。大きな穴には向かないんだけど。道を外れてどこぞの畑の横に車を止めて、それをラジエータにつっこむ。が、また走り始めると水が減る。やっぱり穴が空いているようだ。しかもだんだん減りが早くなっているような気がする。つか、間違いなく多くなっている。さすがにMINIの下をのぞいて水がしたたっているということはないが、水のつぎ足しの間隔がだんだん短くなってきている。うーん、こりゃこまった。

 これから夜に向かって、車修理が必要となった場合どうだろう? 四国にもMINIショップはあるだろうが、いったいどこに? 本州に戻った方がローバー・ジャパンとかショップとか多そうだ。しばらく考えた結果、本州に戻った方がいろいろ便利だろう(四国の皆様ごめんなさい)ということで、四国行きを一旦断念、大事を取って本州に一旦戻ることとした。で、MINIショップでも探して見てもらおう。

 と、当時考えたのである。当時も今もワタシはMINIフリークという訳でもなく、車検以外にMINIを入院させたことがなく、また、トラブル時も行きつけのMINIショップに持っていっていた。MINIはインチサイズ工具が必要だから、ものによっては一般の修理工場では扱えないと思っていたのである。

 さてそんな訳で、すぐ先にある四国自動車道の徳島インターから高速に乗り、今来た道を引き返すことにする。日が沈み掛けた高速を、少し気が焦り気味に大鳴門橋を渡る。夕日が目を刺すが、まあ、この調子で行ければなんとかなるであろう。また水温が上がってきたので、淡路南パーキングに車を入れて、水補給。日が沈む。トイレに行って車に戻ってみると、ああ、車の下に水たまりが・・・・

 間違いなく悪化しているようである。さっきいれた穴塞ぎも効果なし。穴が大きいののがどっかのパイプが詰まっているのかよくわからん。ともかく日も落ちてきたのでさっさと橋を渡ろう!

 ここらの高速道路は街灯もなく、日が落ちると、すぐに暗くなる。ライトを点けて少し行くと――おっと。ちょっと車がなにかに引っかかったような感じがする。ちょうどロープでもかけられて後ろから引っ張られている感じ。なんだなんだと思ったら、水温計が振り切っている。まずい!!オーバーヒートだ!!

 あわてて路側帯にMINIを停める。オーバーヒートの時はエンジンは切ってはいけない。ボンネットを開けてエンジンのファンを回しっぱなしにしておくのだ。と、ゆーのは分かっちゃいるが、MINIの非力なファンで本当にそれで大丈夫かいな?しかもエンジンが焼け付きかかっている時に? というわけでエンジンは切ってしまう。ともかくエンジンが焼け付いてオシャカになるのだけが心配なのだ。30分ほどそのまま待って、ラジエータが落ち着いてからキャップを開けると、水蒸気がもうもうと立ち上る。そこに水を注ぎ込む(やけどの危険があるのでよい子はマネしちゃだめだよ)。うーん、用意していた水がなくなってしまった。こりゃもうだめだ。完全にOUT。これでなんとか次のパーキングエリアにつかなかったら、高速道路上で立ち往生だ。参ったなあ・・・

 とっぷりと暮れた高速道路上でそろりとイグニッション・キーを回す。キュルルルと音がしてブルン! よし、掛かった!

 こーゆー時は急いだ方がいいのか、エンジンに負荷をかけないように低速で走ればいいのかよく分からない。が、回しすぎにならないよう、遅くならないよう、なるべくエンジンに負荷をかけないようにそろそろと走る。まるでうんこを我慢しながらトイレに走っているかのような走りだ。情けない…

 なんつっているうちに、まだ10kmも走ってないうちに、またなにかに引っかかった感じが。これはエンジンのシリンダーが焼け付きかかっているのだろう。
 やっぱだめか、と思った瞬間、後ろからパッシング。トラックが後ろにぴったり張り付いている。こっちはあんたに構ってるヒマなんかないんじゃー!とか言っているウチにエンジンはグググッとうなりをあげ、ボンネットからは白煙が立ちのぼり、スピードはみるみる落ちてゆく。こりゃあ、駄目だ。ハザードを点けて路側帯に乗り入れる。トラックは嫌みったらしくクラクションを鳴らして先へ消えて行く。

 そしておいらのMINIは、通る車もまばらな、どことも知れぬ淡路島の山中の高速道路上で、エンコしているのであった。

 ところでワタシはとうの昔にJAFの更新をやめていたのである。この旅行の前に入り直そうかとチラと考えたのではあるが、「まあいいか」ってんでそのまま来てしまったのである。大甘である。しかしまあ、高い請求されるだろうが、しょうがない。車のダッシュボードの奥に残っていたJAFの会員証を探しだし、電話を掛けよう。と、思ったら、圏外であった。ワタシは当時も今もPHSなのだが、そのせいかどうかわからない。ホントに山の中で人家は見えず。照明もないので周囲は真っ暗。
 時々車が通りすぎるが、その風圧でMINIが揺れる。うーん、悲しい・・・
 しょうがないので非常電話を探すのだ。

 車を降りてとぼとぼと本州上り方面へ歩く。高速道路上を歩くのは初めてだが、結構通過する車の風圧が強くて怖い。車から見るとマヌケな光景だろうなあ。少し歩いた先に案内板があって、非常電話まで360m。カーブを曲がっててくてく歩くと照明のついた高速バス停留所があって、そこに非常電話があった。自慢じゃないが高速道路の非常電話を使うのは初めてである。てか、こんなのに一生用がない人の方が多いだろうが。

カバーを開けて受話器を取ると、交換手みたいな人が出る。
 「どうしました?」
 「いやーオーバーヒートで停まっちゃいました」
上り線津名一宮インターの先何キロポスト付近と説明すると、
 「どこか希望される業者がいますか? なければJAFになりますけど」
こんな淡路島の山奥に親戚知り合いはいないのである。しょうがないので「いません」と応えると、電話をJAFに転送してくれる。そこでまた場所と車種を連絡すると、車に戻って待てという。
 ふたたび照明のない真っ暗な高速道路上をとぼとぼと歩いてMINIまで戻る。真っ暗な中、ハザードランプだけチカチカさせているMINIがそこにぽつねんと停まっているのであった。

 MINIの中でぼへーっと待っていると、ぶぶぶいんと走ってきたトラックがMINIの前にぴたりと張り付く。幌馬車隊の到着だ! 来てくれたのは淡路島は津名市木下自動車さんのレッカー車。レッカー車の後ろに着いているアームを降ろして、それにMINIの前輪を乗せて持ち上げる。ちょうどMINIがウィリーしている状態にするわけです。MINIは前輪駆動なので、サイドブレーキをオープンにしておけば、これで引っ張って行けるわけです。ちなみにこの作業中写真をばしゃばしゃ撮っていたら、おじさんに呆れられた(笑)
 木下自動車のおじさんから事情聴取をされ、おこごとと費用の説明。
「こういう車に乗っている時はJAF入ってなきゃダメよお」
面目ない。返す言葉もございません。
 自動車修理工場は距離的にはここからすぐ近くで、少し後ろの津名一宮インターから乗ってちょっと行ったところらしいのだが、悲しいかな高速道路上は一方通行。次の北淡インターまで行って降りてから、ほぼ同じ距離を引き返さなくてはならないという。しかもレッカー料金はキロメートルあたり600円。自動車工場まで引っ張られる間、距離計がぐるぐる回っていくのは、お金のないときにタクシーに乗っている時より緊張する。自動車工場までトラックの助手席に乗せてもらったが、くるくる回る距離計に生きた心地もしなかったのであった。走った距離は確か50kmほどで、福沢諭吉先生が三人ばかり飛んでいったことになる。

 んで、木下自動車到着。
 まずはボンネットを開けてエンジンルームのチェック。ラジエータキャップを開けて水をどばどば入れて、セルモータを回す。アクセルを踏むとおお、水があふれ出しとる! 噴水じゃん! すげー! てか、おれってばこんな状態で走ってたわけ? ひょえ〜!!!
 結局悪かったのはラジエータの穴ではなく、ウォーターポンプの破損であった。木下自動車さんのお見立てによると、ラジエータが目詰まりしており、ポンプがいくら水を押し込もうと思っても行くことができず、その圧力によってウォーターポンプが壊れた。ということらしい。ウォーターポンプ1個3万3千円也。うーん・・・

 しかし時間は既に夜の9時過ぎ。今すぐ直せるわけでもなく、部品も明日発注となる。つまりわたしのMINIは淡路島にご入院ということになったのである。ラジエータ交換も勧められたがそれは断り、とりあえず水ポンプ修理が終わったら電話をもらうことにして、今日の精算、レッカー代をクレジットカードで支払う。修理が完了したらどうするか?っつーと、陸送なんてしたらそれこそ目玉が飛び出てしまうので、結局取りに来ることになるのだが、実は船積みという手があるらしい。フェリー積み込みまでお願いして、東京に着港する時間に取りに行く。というもので、車の積載料だけで済むそうだ。まあ、しかし後で取りに来るより仕方あるまい。それよりもう夜の9時をまわって、今晩どうするかである。この街にもホテルはあるらしいが、もうMINIを置いて帰るとなると、さっさと帰途についた方が賢い。木下自動車さんに津名港から高速バスが出ていることを聞き、時間を調べると最終便までもう間がない! お礼を言って荷物を抱えてMINIなしのひとり旅を開始する。さようなら、わがMINIよ。また会う日まで!

 時間は既に10時になろうとしている。最寄りのバス停を教えてもらって、そこから急いで津名港へ。ここで舞子行きの高速バスを待つ。津名港発フェリーも終わったようで、待合室にはぱらぱらと数人の人がいるだけ。サラリーマンっぽいのと若いにーちゃんと、おばちゃん連れで、所在なげにみんなぼけーっとしているのである。この人たちはいったいこの時間に舞子まで行ってどうしようと言うのだろう。
 舞子に行ってこの時間に帰ってくるならわからんでもないが。この時間を利用して神戸にホテルをとる。神戸は仕事で何度か行っているのでその時に使ったビジネスホテルである。
 山陽電鉄バスが来たのが10:15。バスに乗り込む。バスは一路、MINIで走るはずだった淡路大橋を通り、10:50にJR舞子駅に着。そこから山陽本線に乗り換えて10:58発の電車で神戸へ。夜中の11:45にホテルにたどり着き、寝る。

 しかし今回は四国の土はかろうじて踏めたものの、遙か遠く淡路島で力つきた。反省点は山ほどあるにせよ、反省したからといってどうなるってものでもない。もともと日本中を走り回るという目的はあるが、目的地はない。話のタネが出来たってことで気にせずビールをかっくらって寝る。

 明けて5月1日メーデー。
 突然することのなくなった。さて、どうしよう。MINIが無ければこんなところ(失礼)に長居は無用であるが、まあ、今日中に新幹線に乗れば帰れるであろう。てわけで神戸駅から大阪へ。
 というわけで大阪のでんでんタウンにでも繰りだそう。とりあえずふらふら歩き回って、目に付いた中古レコード屋、輸入CD屋、中古ビデオ屋を漁る。猟盤日記だね、こりゃ。
 中古ビデオを2〜3本と、LP屋では、金もないし荷物になるので買うのはやめようと決心する。が、荷物は宅急便で送ってしまえばおっけーということに気付いてしまったので、ここで見逃すと2度と出会わないだろうと思われるアルバムの2枚だけ拾う。
 んでだらだらとして新大阪までたらたら行って新幹線でうとうとしながらふらふらになって帰る。帰着したのは真夜中。帰着報告をして寝る。
 うーん、愉快な旅である。

つづく>>

[4月28日〜29日/4月30日〜5月1日/5月29日〜5月30日

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