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過去日記

2006年2月20日(月):昼

トリノカーリング女子、対イギリス戦を検証してみる


 きのうの日本対イギリス戦、第9エンドでのイギリスの最終投、どの石にも当たらないでスルーしてしまったにも関わらず、実況で「これはミスとは言えない」という話が出た点について疑問を持った人が多いっぽいので、解説してみる事にした。

 この図が、イギリスの最終投直前の配置。イギリスが赤で日本が黄色。
 イギリスは、赤い円にかかってる日本の石よりも内側に自分の石を送り込めなければイギリスの負けがほぼ決定、送り込めたならイギリスの逆転勝ちの可能性が生まれるという局面。


 まず、時計で言うと10時の方向にある日本の石をはじき飛ばすとどうなるか。

 前のほうに置かれている石が邪魔をしているせいで、日本の石には、正面かもしくはそれよりも外側にしか当てる事が出来ない。
 そうすると、投げた石はその場に留まるかもしくは外側に流れてしまう。
 そしてぶつけられた石は、後ろの石に当たってその場にとどまってしまう。
 そうなると、イギリスの石は日本の石よりも内側には入らないので負け確定。


 石を回転させて内側にカールさせれば、日本の石の内側に当てる事は可能だが、これだけ大きくカールさせる為には相当弱く投げなければならず、そうすると日本の石に当てた所で、自分の石を赤い円に入れるだけのパワーを出せず、けっきょく駄目。


 ということで、投げた石を円の内側に入れる作戦は諦めるしかないので、次の作戦は、既にある石を押し込んで内側に送り込むという方法。

 まず、手前の石に当ててそれを送り込む作戦だが…この方法だと、円の中心までの距離がかなり長いので、ぶつけるポイントが1センチずれるだけで飛ぶ方向が数十センチずれてしまうという、まさにミリ単位の精度が要求される為、不可能ではないがかなり無理そう。


 そこでイギリスが取った作戦は、7時半の位置にある自分の石に当ててその隣にある2個の日本の石をはじき飛ばし、なおかつその当てられた自分の石を円の中心へ送り込むというものだった。
 しかし、自分の石に当てるといってもその正面にある日本の石に隠れていてほんの数センチしか見えていない上に、思い切りぶつけないと日本の2個の石をはじき出す事が出来ない為、パワーとコントロールの両方が要求されるすごく難しいショットなのだが、これが一番望みがある作戦だと思う。


 そして結果は、図の位置をスルーしてしまった訳だが…
 これは、狙った場所よりも数センチ外側に行ってしまった結果であって、もしこれが狙った場所よりも数センチ内側に行ったとしても、日本の石に当てても駄目なのは前述の通りなので結局駄目。
 カーリングでは、狙った位置にピッタリと止める局面が頻繁に見られるが、それは、石を投げた後で氷をスウィープする事で距離や方向を調整できるから出来る事であって、今回のように思い切り投げてしまえばそのような調整も不可能。

 ということで、元々ものすごく成功の望みが薄いショットであり、失敗しても仕方が無かったので、結果石は当たらなかったが、それは『ミス』という物ではないのである。

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