安達太良山

 安達太良山 1699.6m 鉄山 1709.3m 箕輪山 1728m
 鬼面山 1481.6m
 山域:安達太良

記録
 山行日1999年8月17日(火)
 ルートゴンドラ終点→安達太良山→鉄山→箕輪山→土湯峠
 コースタイム0906 ゴンドラ終点 → 0910 薬師岳 → 0935/42 県民の森分岐 → 1015/30 安達太良山 → 1105 鉄山 → 1115 鉄山避難小屋 → 1130/40 塩沢温泉分岐 → 1200/30 箕輪山 → 1320/30 鬼面山 → 1355 旧土湯峠 → 1420 土湯峠
 天候晴れ

夏休みの休暇はいつもなら中部山岳の高い山に行くところであるが、ちょっと体力的に自信が落ちており、東京からは少し遠い南東北のエリアをはしごすることにした。いずれの山も火山や湿原の山で、期待通りの美しい景観が楽しめた。まずは安達太良山である。

安達太良山

始発の新幹線の中で、寝不足による熟睡から目が覚めると、電車は白河あたりを走っていた。期待に反して空はどんより曇っており、乗り継いで降りた二本松駅の広告には安達太良山で本当の空云々のくだりがあったが、今一つ気分も晴れない。バスは10人ほどの登山者を乗せて、奥岳の登山口に向かう。岳温泉からは高原状の道になり、どんどん高度を上げて、霧の中へと入っていった。そして奥岳につくと、なんと雲の上に出てしまい、青空があるではないか。これは無条件で嬉しい。さっそくゴンドラリフト乗り場から、真新しいリフトに乗り込む。涼しい高原の風の中を多少後ろめたい思いもしつつ一気に勢至平と同じ高度の終点に立った。
ゴンドラを降りて丸太を埋めて作った道を少し行くと、分岐を経てすぐに薬師岳に着く。素晴らしい展望で、青空の下で安達太良山の姿が大きく美しかった。そこには、安達太良山には本当の空があるという標柱があり、曇天から、一気に美しい青空に変わった後だけによけいに感動的で、この空を見ただけで今日ここにきたかいがあったと思った。
薬師岳からは、踏まれているが泥も多く滑りやすい道を、ゆるやかに登って行く。夏休みで家族連れのハイカーも多い。県民の森の分岐あたりは、広く展望も良くて、休憩するにはいい場所であった。山頂へは、緩やかに登ったり、平坦になったりして、右に回り込みながら登って行き、最後は頂上まで見渡せる直登になる。正面の溶岩のドームのような山頂を目指して最後は一歩一歩高度を上げ、安達太良山の山頂直下の肩に着いた。記念写真を撮ってから、乳首山の名を成すドームの山頂に立つ。安達太良山の上空には青空があるが、吾妻や磐梯は雲にかくれており、この山にまず来たのは大正解だった。眺めを楽しんだあと、鉄山や箕輪山への稜線を確認して、縦走路へと向かった。

鉄山

安達太良山頂から肩に降りて、平坦な馬の背を鉄山に向かう。風が強く、雲が西側から次々と飛んできて、時折日が翳ると肌寒くなる。矢筈森を巻くあたりで左側に白く沼の平が見えてきた。硫黄臭の冷たい風が吹き付けてきて、多少不気味である。沼の平に降りる道は、まだペンキ印が残っているが、あの事故以来立入禁止で、今は通る人も無いのであろう。不思議な光景であり、また安達太良山で最も人の目を引きつける光景である。
鉄山へは、岩の壁を目指して登ると、岩の北側を巻いてから山頂に出る。荒涼とした、平原であるが箕輪山の方を見ると、緑豊かな草原の世界が近づいており、雰囲気も明るくなってくる。平坦な道を行くと立派な鉄山避難小屋で、絶好のポジションにある。片側は、不気味な沼の平、反対は明るい緑の草原と箕輪山である。ここで迎える朝は素晴らしいことであろう。避難小屋に泊まるプランもあったが、まだ時間が早いので、先に進むことにした。

箕輪山

鉄山避難小屋からは、しばらく平坦な草原の中を進む。このまま箕輪山に登れてしまいそうに錯覚するが、一旦大きく下って登り返す。下りきった所が僧悟台への分岐で、笹の中の明るい平地であった。登り返しも視界の開けた道で気分良く、やがて安達太良連峰の最高点の箕輪山に立つ。明るい平らな山頂は丁度お昼時で数人の登山者が休んでいた。少し低い場所にある三角点までは踏み跡をたどると往復できる。鉄山はこちらの方向から見ると、全く印象の違う緑の山であった。
縦走の最後に鬼面山に向かう。箕輪山からの滑りやすい下りを行くといつの間にか鬼面山が高く見えてきて最後の登りにかかる。岩混じりの道を登ると鬼面山の山頂で、展望も素晴らしく、箕輪山が立派だった。
旧土湯峠までの下りは歩きやすく、段階的に下っていく。このあたりで、天候が再び完全に回復して遠くまで青空が広がるようになった。旧土湯峠あたりから振り返る箕輪山と鬼面山は、ゆったりした山容で、鉄山あたりとは違った安達太良連峰の一つの美しい表情である。旧土湯峠からは、野地温泉と、横向温泉への峠道とは別に、手持ちの地図には無いが土湯峠に直進するへの道標があったので、そちらに行って見ることにした。少しだけアップダウンがあるが、樹下のしっかりした道が続き、土湯峠の少し上にある電波塔と舗装路に出た。舗装路に入ると少し遠回りになりそうなので、舗装路に出た場所のすぐ上にさらに踏み跡を見つけ、そちらに入ると、少しの下りで土湯峠の駐車場の横に降り立った。

安達太良はいろんな表情を持った美しく楽しい山であった。「智恵子抄」の中でも安達太良の登場する2つの詩が有名だが、これらの詩と相まって、今日登って確かにふるさとの山河という風景に思い当たり、一人郷愁を味わうことができた。
土湯峠からは、レストハウスで時間待ちをしたあとバスに乗って、次の吾妻連峰の入り口である浄土平に向かった。

本文中の写真

  • 安達太良山山頂
  • 馬の背と鉄山
  • 旧土湯峠付近からの箕輪山

  • 参考図書・地図
    アルペンガイド 東北の山(1993年8月第1刷)
    昭文社エアリアマップ 磐梯・吾妻・安達太良(1996年版)
    25000図 安達太良山
    50000図 二本松

    沼の平をのぞく
    その他のコース
    奥岳→勢至平→くろがね小屋→安達太良山
    塩沢温泉→くろがね小屋→安達太良山
    沼尻温泉→鉄山避難小屋、あるいは船明神山経由
    その他多数
    交通機関
    二本松駅より「奥岳」行きのバスは現在運行されていません。
    「岳温泉」までは通年運行で、「奥岳」まで徒歩1時間30分。
    季節により、郡山駅または、二本松駅より奥岳(あだたら高原スキー場)までシャトルバスが運行されることがあります。
    詳細は、福島交通でご確認下さい。



    Nifty FYAMA 投稿文

    安達太良山の本当の空

    No.1999-19

    今年の夏休みは、思い切って休暇をとったものの、行き先は結構迷ってしまいました。最初は赤石でしたが、きつそうなんでパス。次に朝日を考えたのですが、列車やバスの時間で悩んでいるうちに面倒になって、結局楽でアクセスのいい山々を繋げていくつか歩くことにしました。

    【日 程】99年8月17日(火)
    【目 的】安達太良縦走
    【天 候】晴れ時々曇り
    【コース】0906 ゴンドラ終点 → 0910 薬師岳 → 0935/42 県民の森分岐 →
         1015/30 安達太良山 → 1105 鉄山 → 1115 鉄山避難小屋 →
         1130/40 塩沢温泉分岐 → 1200/30 箕輪山 → 1320/30 鬼面山 →
         1355 旧土湯峠 → 1420 土湯峠
    【山 名】薬師岳 安達太良山 1699.6m 鉄山 1709.3m 箕輪山 1728m
         鬼面山 1481.6m
    【メンバー 】単独
    【山 域】安達太良
    【参考書】ヤマケイアルペンガイド 東北の山
         エアリアマップ 磐梯/吾妻/安達太良

    1.安達太良山

    東京発の始発の新幹線で郡山に向かう。寝不足による熟睡から目が覚めると、電車は白河あたりを走っているようだったが、空はどんより曇っていた。郡山で乗り継いで二本松で降りる。駅の広告には安達太良山で本当の空云々のくだりがあったが、すっきりしない空で今一つ気分も晴れない。
    バスは10人ほどの登山者を乗せて、岳温泉から奥岳の登山口に向かう。岳温泉から先は高原状の道になり、どんどん高度を上げると、霧の中へとつっこんで行った。駐車場が見えてきて奥岳につくと、なんと雲の上に出てしまい、青空があるではないか。これは無条件で嬉しい。やったやったという声も聞こえていた。さっそくゴンドラリフト乗り場に向かい、真新しいリフトに乗り込む。涼しい高原の風の中をなんとなく後ろめたい思いもしつつ一気に勢至平と同じ高度の終点に立った。
    ゴンドラを降りて丸太を埋めて作った道を少し行くと、薬師岳への分岐があり、すぐに着く。素晴らしい展望で、青空の下で安達太良山の姿が大きく美しかった。そこには、安達太良山には本当の空があるという例の標柱があり、当初の曇天から、一気に美しい青空に変わった後だけによけいに感動的で、この本当の空を見ただけで、今日ここにきたかいがあったと思った。
    薬師岳からは、広くて踏まれているが泥も多く滑りやすい道を、ゆるやかに登って行く。夏休みで家族連れのハイカーも多い。県民の森の分岐あたりは、広く展望も良くて、休憩するにはいい場所であった。
    山頂へは、緩やかに登ったり、平坦になったりして、右に回り込みながら登って行き、最後は頂上まで見渡せる、まっすぐな登りになる。正面の溶岩のドームのような山頂を目指して最後は一歩一歩進み、安達太良山の山頂直下の肩に着いた。記念写真を撮ってから、乳首山の名の元になる岩を登って山頂に立つ。今日は、安達太良山の上空には青空があるが、吾妻や磐梯は雲にかくれており、この山にきたのは大正解だった。これから目指す、鉄山や箕輪山への稜線を確認して、縦走路へと向かった。

    2.縦走路から土湯峠

    平坦な馬の背を通って鉄山に向かう。風が強く、雲が西側から次々と飛んできて時折、日が翳ったりする。矢筈森を巻くあたりで左側に白く沼の平が見えてきた。硫黄臭の冷たい風が吹き付けてきて、多少不気味である。沼の平に降りる道は、まだペンキ印が残っていたが、あの事故以来立入禁止で、今は通る人も無いのであろう。不思議な光景である。
    鉄山へは、岩の壁を目指して登ると、北を巻いてから岩の上の山頂に出る。荒涼とした、平原であるが先には緑豊かな草原の世界が近づいており、雰囲気も明るくなってきた。立派な鉄山避難小屋は絶好のポジションにある。片側は、不思議な沼の平、反対は明るい緑の草原と箕輪山である。ここで迎える朝は素晴らしいことであろう。
    土湯峠からのバスに間に合わない時間であれば、避難小屋に泊まることも考えていたが、十分余裕があるので、先に進む。
    平坦な草原の中を進み、このまま箕輪山に登れてしまいそうに錯覚するが、一旦大きく下って登り返す。視界も開けた道で気分がいい。明るい山頂は丁度お昼時で数人休んでいた。一応、少し低い場所にある三角点まで踏み跡をたどって往復した。鉄山はこちらから見ると、緑の山であった。
    最後に鬼面山に向かう。箕輪山からのくだりはかなり滑りやすかった。大きく下って鬼面山が高く見えてきて登りにかかる。岩混じりの道を登るが、鬼面山の名前とは違ってこちらから見ると優しい山である。山頂の展望もなかなかのもので、箕輪山が立派だった。ここも踏み跡の先に三角点があった。
    旧土湯峠までの下りは歩きやすく、段階的に下っていく。このあたりで、天候が再び完全回復して遠くまで青空が広がるようになった。旧土湯峠あたりから振り返る、箕輪山と鬼面山はゆったりした山容で、鉄山あたりとは違った一つの美しい表情である。旧土湯峠からは、野地温泉と、横向温泉への峠道とは別に土湯峠への道標があったので、そちらに行って見ることにした。少しアップダウンがあるが、樹下のしっかりした道が続き、峠の少し上にある電波塔と舗装路に出た。舗装路に入ると少し遠回りになりそうなので、出た場所のすぐ上にさらに踏み跡があったのでそちらに入ると、少しの下りで土湯峠の駐車場の横に降り立った。
    土湯峠からは、レストハウスでビールを飲みながら時間待ちをしたあと、バスに乗って、次の吾妻連峰の為に浄土平に向かいました。バスの乗客は私1人で、運転手さんにいろいろ展望を教えて貰いながら乗って行きました。
    安達太良山は那須と同様、派手な火山の主峰と、静かで大らかな最高峰の組み合わせでした。そして、本当の空があって、あまり詩集は読まないのですが、「智恵子抄」を読みたくなりました。