夏も終わりに近づく頃、このままだと、遠くの有名な山に行かずに終わってしまうと、少々焦った気分になりました。簡単に登れて旅情も味わえてと贅沢な願望の中で最初に思いついたのは五葉山。しかし、レンタカーが満車です。いろいろあたりましたが、結局レンタカーもホテルも両方OKだったのは会津若松泊の磐梯山でした。当日の午前中手配でこれでも良く予約できたものだと思います。
八方台の登山口に立ったのは、猫魔ヶ岳を登って以来13年ぶりである。全国いろいろな所に行ったつもりなので、久しぶりだと思う箇所は多いが、何年ぶりかと数えるとどこも結構な数字となり愕然となる。いつも出歩いている訳ではないから当然であるが、時間の経つのは早いものだと思ったりする。
朝まだ早い八方台からは広い緩やかな道をゆったりと歩いていく。今日は何となく体が重い感じがして、先を思いやる。美しい林の中の道は中の湯で開け、遠くに磐梯山が見えてきた。中の湯は現在営業しているのだろうか?見る限りは一部廃屋のように崩れている。あたりは硫黄臭に満たされ、噴出す温泉で白く濁った池と、湧き出る所に作った足湯があり、火山であることを改めて知る。
再び山中に入り、普通の登山道となって高度を上げて行く。周囲の景色は無い中で淡々と歩を進めるが、やはりどうも調子が上がらない。30分ほどで左側に裏磐梯が良く見える展望台があり、ここで一息。そして、弘法清水までは同じような道をさらに30分であった。
弘法清水には2軒の売店があり、腰を落ち着けて小休止とした。ここは展望の良い場所で、大きくえぐれた裏磐梯側の風景が良く見える。見上げれば磐梯山の頂上だ。青空が晴れ渡り、吹く風は涼しく、ここで長居したくなった程である。
弘法清水からの最後の登りは、なかなかの急登で、開けた周囲の景色に勇気付けられ頑張っていく。猫魔ヶ岳の方が良く見えている。足元には可憐な花も少し。今日のコースは花に恵まれなかったが、ここにきてやっと少し見ることができた。ただ、登るにつれて空に雲がかかる部分が増えてきてしまったのが残念だ。
厳しい登りは広く明るい山頂で開放される。石の積みあがったような山頂には三角点と石の祠があり、多くの人が休んでいる。眼前には猪苗代湖が広がっているが、南側を見下ろす格好になり、雲も多くなってきている中で少々霞んでいる。久しぶりの百名山の山頂を腰を落ち着けてゆっくり味わった。
下山は登ってくる人が多くなった急坂をまず弘法清水まで下る。弘法清水では弘法清水小屋でゆっくりコーヒーをいただきながら、小屋番さんにいろいろと教えてもらう。ここから正面に見える櫛ヶ峰にも行けるので薦められたが、今日はちょっと自信がない。しかし、展望のいい小屋からの景色を眺めながらのひと時は素晴らしいものだった。
帰りは弘法清水小屋から真直ぐ少し下り、お花畑経由の道をとった。こちらは、青空の下で、黄色や白い花や、笹の緑、荒々しい火口壁を見ながらの変化に富んだ道で、素晴らしさに時々足が止まる程だった。このコースの中では最高の部分だと思う。道はすぐに登ってきた道に合流し、あとは林の中の道を下るのみ。往路に忠実に中の湯を経由して八方台に戻った。八方台の駐車場は朝とは違い車でびっしり一杯であった。
磐梯山は学生の頃から下から何度も見ている山でしたが、やっと山頂に立ちました。爽快な山頂と、弘法清水側の複雑な火山の景観、お花畑と、まさに見所の多い山でした。百名山に登るのも、2003年に上州武尊に登って以来となり、実に9年ぶりのことです。最近は近郊の山を落穂ひろいにようにピークハントしていることが多いのですが、やはり名山は、今回相当な簡略コースを歩いたとはいえ、内容が濃く素晴らしいものだと思いました。
本文中の写真(順に)
中の湯の風景
中の湯付近から見上げる磐梯山
弘法清水小屋
弘法清水の下からの櫛ヶ峰