谷急山

 谷急山 1,162.1m 
 山域:妙義

記録
 山行日2014年5月17日(土)
 ルート入牧橋登山口〜三方境〜谷急山(往復)
 コースタイム0700 入牧橋登山口 → 0852/0900 三方境 → 0908 女道分岐 → 0951/1010 P2 → 1015 V字キレット → 1046/1132 谷急山 → 1204/12 P2 → 1253/1307 三方境 → 1427 入牧橋登山口
 天候晴れ時々曇り

谷急山は妙義の最高峰であり、一方妙義は上毛三山の一つである訳ですが、妙義のイメージは岩峰かつ危険であり、谷急山のイメージは最奥の普通の山容の山なのでした。このなんとなく、あい矛盾するような印象と、遠さと、妙義は表妙義がシンボルでしょうという感覚がある中で、登らずに今日に至る訳ですが、逆にこの山域への初めての体験としては手頃そうだとも思い、今回思い切って出かけてみました。

1.三方境へ

早く起きてしまったので、そのまま出発です。関越の高坂SAで眠くなって仮眠、登山口到着は朝の7時となりました。入牧橋の登山口に駐車場は無いとの情報でしたが、入口に2台ほどスペースがありました。
背後に裏妙義の鋭鋒が猛々しく聳え立つ小さな集落をぬけると並木沢沿いの植林地の中に入って行きますが、コンクリートの道には落ち葉や枯れ枝が積り、いつの間にか山道になっていました。道幅は広く、廃れた作業道の様です。倒木が倒れこみ、また崩壊もありという様子でしたが問題なく沢の左岸を進み、道標に導かれて沢に降りて対岸に渡り右岸のやはり幅の広い道を登っていきます。
今日は運転してきた車から即登山道なので、準備運動不足で体が重い感じなので、ことさらゆっくりとペース作りをし、心身ともに山歩きになじむ様心がけます。右岸の道はやがて沢から離れ山の中へ入っていきますが、広い道の終わるところで踏み跡が無くなり右往左往してしまいました。振り返ると通過してきたところにテープがあるのが見えました。あまりに下ばかり見て歩きに集中していた為、分岐を見逃していたようでした。広い道の終点から少し戻り、十三曲りの登りへと入りました。
十三曲りは斜面の折り返しの道で高度を稼ぎますが、歩きやすい傾斜でした。これはそれほど長くは続かず、やがて石積みのある小尾根に出ます。ここから自然林の中のトラバース道に入り、小沢をいくつか横切りながら少しずつ高度を上げていきますが、急斜面のトラバース道は狭くてザラザラと崩れやすく、つかまる所も少ないので、かなり気を遣いました。途中鎖のあるところもありましたが、無いところでも滑ると落ちていきそうな所は何箇所もあり、要注意の区間です。動物の音がしたので、見上げると鹿が二頭走っています。そのあたりは一箇所だけ広々とした広場になっているところで、新緑の自然林の中の鹿の遊び場のようでした。
やっとトラバースを抜け、並木沢の本流まで戻り、沢の中を少し登ります。その先で再び右岸に登り、斜面を折り返しながら行くと沢は枝沢となりますが、この源頭を巻いて再び本流を右岸から見るようになると、間もなく本流も源頭となり、左につづら折に尾根に上がり、左に進めば三方境に出ました。三方境で再び植林地となりました。また、倒木がゴロゴロしている変わった雰囲気でした。少し休みましたが、風が強く寒さを感じたので、谷急山に向けて出発しました。

2.谷急山を往復する

三方境から南に少し登ると愛想の無い遠見山を越えてしばらく下って大遠見峠。若干登り返した小さなピークに分岐があり、女道が中木川に向けて下っています。ここまでは穏やかな植林帯の道で、ここから先は痩せた谷急山への稜線となります。
まずはP1へと向いましょう。最初は大変な急坂というほどではありませんが、それでも狭く木を掴みながらの登りが現れました。この稜線はヤマツツジが多く、ちょうど満開で淡い朱色に励まされながらの登りが続きます。ヤマツツジの朱色は大好きです。谷急山へはP7までピークがあると聞いていましたが、この調子で続くと先が思いやられます。それも往復です。
ヤマツツジと新緑の尾根を登り詰めるとP1に到着、下りはそれほど急ではありません。しかし、樹間からP2がそそり立っているのが見え、あれを登るのか?と戦々恐々でした。P2の基部まで小さなピークを幾つか越え、急登に取り付きます。こちらは胸を付くような登りで、すべての手足を繰り出さないといけません。途中景色が開けると、表妙義の稜線や荒船山が、明るく見えていました。P2への登りからツツジがミツバツツジ主体に変わっています。景色が紫色になりました。
P2への登りの中腹の岩場にはしっかりした鎖場がありました。ホールドもあるにはありますが、下は切れ落ちているので、この鎖は助かります。さらにロープに捉まりながら登って行きます。P2直下のロープは、捉まってみたら、擦り切れて芯だけになっていました。それでもとりあえずは、なかなか切れないのですが…。登りついたP2の展望は最高。正面にこれから登る谷急山が大きく見えます。それほど遠くないようですが、それもそのはずで、コースタイムで見ればすでに三方境からの半分以上を進んでいるのです。
P2で少し休憩した後、急坂を下るとV字キレットがあります。岩の大きな亀裂は迫力がありました。V字キレットの先で少し踏み跡が乱れるので、ここは注意して通過しました。その後、道は小さなピークを登ったり下ったりとなりますが、P2への登りほどでは無く、距離も短いのでそれほどの大変さはありません。V字キレットとまでは行きませんが、幾つか同様の場所があり、両側が切れ落ちている所を渡るような箇所もあります。やがて斜面の緩やかな登りに変わり、穏やかな道になって、谷急山に近づいて来た事を感じます。尾根が狭いので急登ではありますが、最後の詰めを感じる楽しい登りを登りきると、狭い山頂に出ました。
山頂は2〜3人で満員になりそうな狭いもので、素晴らしい360度の転送でした。ツツジの花を前景に、妙義の山々はもちろん、奥秩父、両神山、御荷鉾山の山稜、荒船山、八ヶ岳と南アルプス、物見山から軽井沢を経て、浅間山に浅間隠山と鼻曲山、榛名、赤城。遠くは霞んでいますが、はっきり見える範囲でも沢山の山々が見えるので、位置関係の復習をしつつ飽きずに眺めていました。山頂には誰もいません。いい天気の土曜日なのに、本当に人の少ない山だと思いました。
長い休憩のあと、行程を復習しながら三方境を目指して下山します。途中2名の単独の方とすれ違いました。今日は、谷急山の山頂に立つのは都合3人ということでしょうか。妙義主稜のジャンクションであるP6などを確認、V字キレットを通過し、急坂を喘いで再びP2に立ちました。但し、逆からなので登り区間は圧倒的に少なくなります。P2で再び谷急山や金洞山などを眺めて休憩。星穴はどの角度からなら見えるのでしょうか?
P2の下りは長く、慎重に降りて、幾つか小さなピークを越えると、P1への登りはゆったりとして僅かでした。P1を過ぎると再びヤマツツジの森に入り、P2よりよほど緩やかな下りを下って遠見山への登りにかかります。このピークだけは復路のほうが長い登りになりますが、ゆったりとした良い道です。

3.下山

並木沢の下山路は、やはりトラバース部分の通過に大変気を遣いました。下りが難しいのが勿論ですが、左側が崖になるポジションがどうも苦手のようです。どうも山側に体が傾きがちになり、余計に足が取られて滑るような感じがしました。十三曲りの降り口まで来てほっと一息、あとは普通に下ります。十三曲りの登り口で改めて何故こんなにテープの沢山ついている場所を見逃したのだろうと不思議に思いました。広い道を集落までのんびり歩き、登山口まで来ると車は私のもの1台だけでした。このルートから昇ったのは、今日は一人だけのようでした。

帰路、「妙義ふれあいプラザ もみじの湯」に立ち寄りました。やはり車での山行は、温泉がつけられるのが良いです。露天風呂は、正面に表妙義を眺められるので最高です。帰りはそれほどの渋滞も無く、順調でした。
今日は、静かないい山に登ったなという感じで、花と展望の充実したワンデイハイクでした。こういった山々が、病みつきになりそうです。

本文中の写真

  • 入牧橋登山口の集落から見る裏妙技の稜線
  • 並木沢の登山道の深緑の林
  • 朽ちた倒木の多い三方境
  • P2への登りから裏妙義の稜線を見る
  • P2からの表妙義の山稜
  • V字キレットの風景
  • 谷急山山頂に到着
  • 谷急山山頂から表妙義 金洞山
  • 谷急山山頂から裏妙義 中木山

  • 参考図書・地図
    ヤマケイアルペンガイド 奥日光・足尾・西上州(2000年初版)
    昭文社エアリアマップ 西上州・妙義(1995年版)
    25000図 南軽井沢 軽井沢
    50000図 御代田 軽井沢

    P2から見る谷急山の山容
    その他のコース
    ・国民宿舎裏妙義より三方境
    ・中木川より女道経由で遠見山
    (谷急山山頂より北西の尾根を下る踏み跡がありますが、熟達者向けのバリエーションルートです)
    交通機関
    信越本線横川駅よりタクシーとなります。