大福山

295m

山域:房総
2002.4.9


今日はたまたま午前中所用があり、休暇をとっていたのですが、午後に時間ができたので、ちょっと歩きに行ってきました。時間的に遠くには行けないので、かなり前に行って良かったと記憶に残っている梅ヶ瀬渓谷を久しぶりに歩いてきました。

昼過ぎから雨になった。春の早い房総の新緑の森はしっとりと濡れ、流れる霧は柔らかな森の色を、ますます淡くする。前回ここを訪れたのは95年の夏のこと。今でも美しい森と緩やかな渓流といういい印象が残っている。それもあって、今日は再びここに来ることにしたのだった。
広い駐車場には1台車が停まっているだけであった。しかし、平日の雨の日に、1台でもいるということに少々驚いた。駐車場からもしばらくは林道の続きのようなしっかりした道が渓流に沿って延びていく。足下には可憐な春の花があり、なによりも目につくのは、清楚なミヤマハコベの群落である。それと混じるように、同じような大きさの白い花もあるが、名前が解らない。ムラサキケマンなども咲いているが、ハコベの花の方が好きだ。
しばらくすると、沢を何度も左右に渡り返しながらすすむようになる。しかし、花を楽しみながら歩くのでいっこうにはかどらない。クサイチゴやヘビイチゴの花を見つける。ここにもタチツボスミレは多い。そして、唐突にシャガの花があらわれ、とても目立っていた。そろそろ花も一巡したかなと思う頃、立派なマムシグサがでてくる。これも今年初めてみる花である。
さて、そろそろ歩きに専念しよう。もっぱら、林の中が中心で、時々沢に降りて渡っていくという感じで進む。記憶では、もっと沢の中を歩いたようだが、まだ先のことか..。あの時は、対抗してきた人がひどい道ですねと言っていたのを思い出す。山を歩いていると普通の道なのだが、きっと遊歩道のような道しか、歩いたことが無いのだろうと苦笑したことであった。
房総の川はどこも高い浸食崖をつくっている。丘陵に刻まれた流れは、曲がりくねったうえに、深く地面を削っている。この梅ヶ瀬渓谷も垂直にそそり立つ壁が随所に見られる。道は湿地帯のような平原を回り込んだあと、再び渓谷に降りる。だんだん谷底を歩く部分が多くなる。見上げると遙か崖の上に、ミツバツツジが満開である。今年は花の着きがいいのかもしれないなと思った。
洗濯板のような流れや、新緑のトンネルを楽しみながら行くと二股に出る。右は沢から離れて、大福山直下の林道へと向かう。左は300メートルほどで行き止まりだが、そこには日高邸跡という場所がある。日高氏は幕末から大正にかけての人だが、関西の月ヶ瀬に習ってこの地に梅を植え、梅ヶ瀬と称して理想郷なる一大景勝をつくろうとした。また、この渓谷の奥に居をかまえ、講師を招いて教育にあたったということである。今や夢の跡であるが、この邸宅跡には巨大な素晴らしいカエデの木があり、いま新緑真っ盛りであった。
分岐に戻り、林道への道を進む。少し沢に沿ったあと、ジグザグに高度を上げていく。樹間から眺めが開けると、渓谷の奥のピークに霧がかかって幽玄の美をたたえていた。急坂を登りきると平坦な尾根上の道になる。これをしばらく辿って行くと林道にでる。このあたりを歩いているとき、周囲に重機の音が響き渡るようになり、今もどこかを削っている。それは周囲のどこかの谷底から聞こえてくる。千葉の山はゴルフ場と土砂採取でどんどん無くなっていく。
車道を左に進むと、白鳥神社の登り口がある。これを登ると急な階段があって、その上が白鳥神社の境内である。そしてここが今日の終点大福山の山頂だ。神社の後ろに回ると、踏み跡があり、展望台方面へと続いている。ちょっと草のかぶり気味の、しかし山道らしい道をしばらく辿れば展望台へと着く。展望台の周囲は園地のようによく整備されていた。
下りは梅ヶ瀬渓谷入り口へと林道を下って行く。時折景色が開けて、新緑が霧にかすむ山並みを見る。まだ、所々に桜の花が残っている。しかし、この道は、前回はあまり長いという気はしなかったが、今日はちょっと長く感じた。そういえは、前回は結婚して1年半の妻といっしょ。どうも時間の流れが違うようだ。

数年前の記憶を辿りつつ、傘をさして、また新たな気持ちで歩きました。もう渓流には、カニが歩いており、また突然動いた大きな蛙にも驚かされました。山肌にはきれいなミツバツツジが咲いています。そういえばもうすぐ、ツツジの山の季節です。

本文中の写真

  • 新緑の梅ヶ瀬渓谷
  • 新緑の梅ヶ瀬渓谷
  • 洗濯板のような渓流の流れ
  • 霧のかかる梅ヶ瀬渓谷上部の尾根


  • 花はクリックすると拡大します。

    ムラサキケマン タチツボスミレ ヘビイチゴ ミヤマハコベ マムシグサ


    記録

    日 程

    2002年04月09日(火)

    天 候

    雨時々曇り

    コース

    1410 駐車場 → 1510 日高邸跡 → 1545 林道 → 1555 大福山白鳥神社 → 1600 展望台 → 1650 駐車場

    新緑の日高邸跡


    参考図書・地図 その他のコース
    千葉県の山(山と渓谷社)
    25000図 大多喜 上総中野
    50000図 大多喜
    大福山自体は、直下を林道が走っているため、それほど歩くコースがありません。車道歩きでも可ということであれば、上総大久保駅からもコースがあります。
    バス
    駅が近いのでバスの利用はありません。小湊鉄道の養老渓谷駅が最寄り駅となります。時刻表はホームページを参照下さい。