御正体山は、道志主脈の南部にあって、今倉山から南に向きを変え道坂峠へと落ちた稜線が、再び大きく盛り上がった所である。この隆起は雄大で、この周辺ではひときわ高くよく目立ち、また丹沢と道志を通じての最高峰でもある。四方から道が通じているが、三輪神社からの登りは標高差が大きく、この山を実感できる登路であった。
最初はどこの登山道から行こうかと迷った。標高差は道坂峠や山伏峠から行くのが楽なのだがアクセスが悪い。それであれば、せっかく登るのだからと、麓からじっくり登れる、ポピュラーな三輪神社からの道にした。
朝早い電車で行くとバスが無いのでタクシーを利用することになる。谷村町からの方が料金が安そうなので、大月で駅にタクシーがあることを確認し電車に乗った。確かに駅前にはタクシーが1台だけ停まっていた。
スタートは水場のある登山口から三輪神社の鳥居の下を林道に沿って歩いていく。しばらく舗装路歩きが続き、やがて美術館の前を通過。ここから未舗装の道になり、造成地などを経て登っていく。そして森の中に入っていくような終点からやっと山道である。
はじめは植林地の中のなだらかな良く踏まれた道を歩く。先も長いので、今日は慌てるでもなくじっくり歩く。天気予報は晴れのち雨だが、今のところ朝もやに覆われているのか、空は暗く肌寒い。やがて左に沢が沿い、標識のある場所に着くと、正面に踏み跡や祠があったので、ついついつられて進んでしまったが、こちらは道が細く、地形図に点線のある、尾根を直登する道であった。
登山道は標識のある所で沢を渡り、若干の植林地のトラバースのあと、一つ隣りの尾根を登って行くことになる。尾根にでるとしばらくは植林地の急登が続くが、一汗かくとゆったりした登りとなった。このあたりから雑木林の中の道となり、色づき始めた木々の中で雰囲気が良い。かなり登ったなと思って樹幹越しに北の方を眺めると、ちょうど二十六夜山の切られた尾根が目に入ってきた。まだまだ道坂峠くらいの高さのようで、今倉山がまだまだ高く見えた。
道坂峠からの尾根が樹幹越しに見え隠れする中を高度をあげて行く。右手奥には池ノ平の方からの尾根が見え隠れしてくるが、そちらの方はまだまだ遙か高く見える。あれと合流すると峰神社だ。右手がちょっと刈り払われて開けたところに出るが、ガスがかかって展望は無かった。
ここを過ぎると道は急坂に転ずる。ロープが1本垂れ下がっているが、この登りはいつ果てるともなく続き大変辛く我慢のしどころであった。やっと正面に見える尾根と高さが同じになってくると、だんだん傾斜も落ちて池の平からの道と合流し、そのすぐ先が石の祠のある峰神社である。ここまでくれば山頂も近く、久しぶりに長い登りを歩いたなと満足感の中で休憩した。
峰神社から山頂へは、小さなアップダウンを繰り返しながら登っていく。このあたりは充分に紅葉しており、山頂に近づくにつれ、モミなどの黒木とブナなどの紅葉の広葉樹の混じった美しい原生林が展開する。これはいい季節に来たなと思う。途中右側が開けているところで、富士山の山頂部の、黒々と大きく霞んいるのを見ることができた。山頂は展望はないが、数々の標識の他に、一等三角点と祠のある静かな開かれた場所だった。
下山は山伏峠への尾根道を下る。この道がまた素晴らしい。ブナの大樹が時折あらわれ、度々立ち止まって見とれてしまう。標高が下がり、尾根の分岐にあたる前ノ岳の付近は、これぞ雑木林という感じで紅葉の木々が密集する。そして看板のある中ノ岳を通過。奧ノ岳へは若干の登り返しの覚悟が必要で、この周辺は広い範囲で伐採され、若い植林地となっている。鉄塔を過ぎて再び雑木林になった道を下っていくと山伏峠への下降点に着く。ここからはどんどん下り、やがてトンネルの上を通過。右には明確な道標が現れないまま適当に巡視路を降りていくと、トンネルの袂のホテル跡に出た。
ここから1日2本のバスは1時間後だったが、歩いても同じなので平野まで行くことにした。すぐ脇を車がビュンビュン通り過ぎていくので、身の危険を感じる車道歩きである。平野に着いたら予報通り雨が降り出した。
山頂付近からのぞく富士山
参考図書・地図 | その他のコース |
---|---|
アルペンガイド 丹沢 エアリアマップ 高尾・陣馬/富士・富士五湖 25000図 都留・御正体山 50000図 都留・山中湖 |
1.三輪神社(細野)から、御正体山(本コース) 2.山伏峠から御正体山(本コース) 3.鹿留林道、池ノ平から御正体山 4.御正橋から白井平、御正体山 5.道坂峠から御正体山 と、四方より登ることが出来ます。どのコースもそれなりに登りがいがあると思います。 |