D・ショスタコーヴィチ


高校のころ、未知なるものに憧れることがあった。そのころ最も遠い国がソ連であった。
しかしこの国は文化面でかなりなじみが深い。チャイコフスキーのバレーや、ドストエフスキー・チェーホフ・ソルジェニツィン。心躍る楽しみがある。そういう好奇心の中から良く聞いたのが、プロコフィエフでありショスタコーヴィチの音楽である。
交響曲第10番。聴く度に泣けてくる曲である。DSCHのモチーフとこの暗さ。華々しさ。ショスタコーヴィチの楽しみが凝縮されている。弦楽四重奏の8番とセットでどっぷりとショスタコーヴィチに浸りたいときにCDを取り出してくる。
ムツェンスク郡のマクベス夫人。オペラはこれほど深刻なものだったことがあっただろうか。レスコーフの同名の小説(岩波文庫)の忠実なオペラであるが、近代のロシア文学がそのままオペラになったということである。カテリーナ・イズマイロヴァの版でのLDもあるが非常にやるせなく感動的である。
交響曲第14番。この曲を当初ソ連で録音した指揮者。コンドラシン、バルシャイ、ロストロポーヴィチはすべて亡命してしまった。ムソルグスキーの歌曲の雰囲気もあるが、深く沈んで昇華する曲であった。
でも楽しみはまた別のところにもある。数々の映画音楽。ダンス音楽。ピアノ協奏曲。シャイーの演奏したJAZZ組曲のCDは大きな贈り物であった。
ショスタコーヴィチ自身についてはかなりヴェールに包まれている。どこでしゃべっても決して本心を語っていないのではないかと思われている節もある。でもショスタコーヴィチ自身はその時代をビクビクしながらうまく生き抜いただけで、結局まわりの人がいろいろと想像して楽しんでいるだけかもしれない。
今では一気にメジャーな作曲家であるが、まだ録音も多くないころ持ってない曲を求めて輸入盤を探し歩いたのも懐かしい思い出である。

上段左 交響曲第10番 インバル指揮
上段右 ムツェンスク郡のマクベス夫人 ロストロポーヴィチ指揮
下段左 交響曲第14番 バルシャイ指揮
下段右 ジャズ組曲 シャイー指揮

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