越前岳

 越前岳 1504.2m 黒岳 1086.5m
 山域:愛鷹連峰

記録
 山行日2012年1月7日(土)
 ルート十里木バス停→十里木登山口→勢子辻分岐→越前岳→富士見峠→黒岳→富士見峠→山神社登山口→愛鷹登山口バス停
 コースタイム0910 十里木バス停 → 0919 十里木登山口 → 0931 展望台 → 0952/59 馬ノ背 → 1054 勢子辻分岐 → 1100/40 越前岳 → 1154 富士見台 → 1244/50 富士見峠 → 1208/16 黒岳 → 1332/53 富士見峠 → 1422 山神社登山口 → 1440 愛鷹登山口バス停
 天候晴れのち曇り

昨年暮れに誘われて、久しぶりに山に登ったので、今度は昔のように一人で計画して登ってみようと、未踏の山から越前岳を選びました。愛鷹山は千葉からは遠く、かつ登るのであれば縦走をという意識があった為、気にはなるけれどなかなか行けない山になってしまっていましたが、今回は難しく考えず越前岳のみの登山としました。
富士山の好展望を期待し、かつ山の感触を思い出しつつ、自分の現在の力を推し量り、装備等の状態について確認し、感覚を呼び戻すという目的もありました。

1.登山口まで(千葉→十里木)
今回は、テストの意味もあって、装備についても真面目に詰め込みました。普通の日帰り装備に加え、山上での煮炊きの用具や水、不慮の時の為のツェルト、雪対策の軽アイゼンやワカン(これは結果として過剰でしたが)なども含めました。何事もきっちりやろうという感覚です。靴は中国駐在時代に買ったもので、まだ山では使っていないトレッキングシューズ。これを初めて山で試すという目的も加えました。そして、交通機関も調べた上で、コースタイムをシュミレーションするなど、念には念を入れての計画作成まで行い、自分なりにはほぼ準備万端です。また、ここまでの準備行程は久々で楽しくもありました。出掛けに、紅茶を沸かし、新しく買ったテルモスに詰め、朝4時15分自宅を出発、始発電車に乗る為に幕張本郷駅へと向かいました。
電車を御茶ノ水、新宿と乗り換え、新松田へ。途中、厚木あたりでやっと夜が明けました。松田駅から御殿場線を待つ間、ホームから富士山が朝日に照らされて見えていました。ただ、南側の方から雲が寄って来ており、ちょっと気になりました。
御殿場駅から8時25分発の十里木行きバスには乗客は僅か2人。バスは途中の乗降も無く、終点まで一直線でした。途中の富士山の裾野の広々とした所を走って行くあたりでは、さすがに風景が近郊の山とは違うので、富士周辺まで来たんだなぁと感じました。
閑散としたバスの車内で、荷物を再整理し、スパッツを付け、カメラを取り出し、準備を整えます。このカメラも5年位前に買った一眼のデジカメですが、山では初使用です。バスは十里木の別荘地を抜けて国道に出るとまもなく終点に到着です。
バス停からは、装備は十分車内で整えていたので、そのまま国道を登山口に向かって歩きだしました。この国道は狭い上に大型車が多く走り、スピードもそこそこ出しているので、ちょっといやなところです。車道の縁を歩くこと約十分で、大きな駐車場や立派なトイレのある登山口に到着です。車は10台以上停っており、盛況の様です。
この登山口は北に富士山が大きく見えますが、危惧した通り富士山の南面の山頂部だけ雲がかかっていました。そして残念ながら、山頂から南に向けてずっと雲がありました。それ以外はスッキリと晴れ渡り、丹沢方面は雲一つ無い快晴で恨めしい限りです。きっと、東から見れば、富士山頂もスッキリと見えていることと思いました。

2.越前岳へ
越前岳への登りはコースタイム1時間50分です。コースタイムを少し詰め気味に歩いていけば、最後に富士見峠から黒岳が往復できます。逆にオーバーすれば富士見峠からそのまま下山するということになります。この登りをどの位で歩けるかが、現状の低山歩きの自分のスピードを推し量ることにもなります。
登山口には、展望台15分→馬ノ背25分→越前岳80分とありました。従って、馬ノ背で1回目の休憩、そこから山頂までの間で1回休憩という算段をしました。
登山口から展望台まではずっと木の階段の直登です。いきなり汗をかく上に足にきますが、ここは一歩一歩地道に頑張るしかありません。南向きの登山道は、正面から太陽に照らされて眩しい感じです。ずっと開けっぴろげな登山道を展望台まで登りつくと、展望のための櫓が組んでありました。目の前は富士山ですが、相変わらず山頂だけ雲の中です。
展望台からがスズタけの切り開きの間の緩やかな登りとなってホッと一息です。急なところには階段がありますが、いずれにしても歩きやすい道です。ここは快調に登って、ベンチと三角点のある広く切り開かれた場所に到着。馬ノ背との標識があります。美人さんが1人休憩していました。最近若い女性の登山者が増えていると聞いていましたが、山ガールって本当にいたんだ..と認識しました。
ここから、北斜面の樹林の中の急登が始まります。木の根や岩を踏んでの登りですが、残念ながら崩壊しやすいのか道のようで、かなり掘れて荒れている所が多くなっています。
かつて、頻繁に山を登っていた時は、登っていること自体を楽しむという気になっていたものですが、どうもまだその域までは達していない様です。それとも、かつてもかなり辛かったところを、思い出として美化されているだけのことでしょうか..。あの頃、登りながら何を考えていたのだろうと思い返してみると、これから先の行程のこと以外にも、仕事のこと、家族や友人のことなど、思考とも言えないとりとめのないことが、常に頭の中を渦巻いていたような気がします。まぁ、これは今でも変わらないでしょう。そして、現在見ている風景や情景を、常に頭の中で言葉に置き換えようとしていました。きっと、下山するとNIFTYに必ずレポートするからそういう習性が出来ていたのでしょう。
木に捕まりながらの急登を、ある程度登ったところで切り開きがありました。特に地形的に変わった所のない場所だったので、休憩の為のものかもしれません。とすれば、中間点でしょうか。しかし、馬ノ背からまだ23分しか経っていません。意外と山頂は近いのかなと思いつつ、ここはそのまま通過しました。
さらにひと登りし、30分経過した位で道端で休憩。再び荒れた道を登っていくと、すぐに山頂まで20分という表示が出ました。やはり意外に近かったようです。
この表示のあと、道は傾斜を気持ち緩めて行きます。丁度山頂部から急斜面に変わる間の繋ぎの部分のような感じです。こうなると気分は一気に楽しくなってくるので、足取りも軽くなります。そして登り着いた稜線は勢子辻からの道との三叉路でした。ここから山頂までは、緩やかな台地の登りになります。このあたりはアシタカツツジの見事な林となっているので、花の時期は素晴らしいことと思います。
山頂は、10人程度の登山者がいて、それほど広くはないので、何となくざわついた感じがありました。ここからは木の影になるので、富士は半分ほどしか見えませんが、いずれにしても山頂は雲に隠されています。展望は南面に大きく、眼下に太平洋が広がりとても開放感があります。左の方は伊豆半島が続き、西は白根三山が輝いています。越前岳から愛鷹山に向かう縦走路も綺麗に見えますが、愛鷹山登山はこの縦走が核心だと考えていました。しかし、これを歩くと時間がかかるので、なかなか来る気にならなかったということです。越前岳だけ登ってしまったので、縦走の為にここまで再び来ることがあるかは、ちょっとどうかな?という感じでした。
さて、コースタイム1時間50分のところ、休憩込みで1時間40分なので、まずまずではないでしょうか。ちょっとコースタイムが甘いのではという噂はありますが..。靴も足にフィット感があり、合格です。山頂の脇の人の少ないところを見つけて、ラーメンを作り始めて気がつきましたが、箸が無い..。さすがに久しぶりだと何か抜けがあります。木の枝を利用しましたが、曲がっていて使いづらかったのでした。

3.黒岳へ
山頂から富士見峠への道は、樹林の間の細い道でした。木につかまり慎重に下ると、15分ほどで富士見台に着きます。ここは昭和初期の50銭紙幣のモデルとなった富士とのことですが、ここでも山頂は雲が隠してしまっています。木の葉の繁る時期は木が隠してしまうのでしょう。脚立が置いてあり、登って見るようになっていました。
さらに下り、右が大きく崩壊した場所に出ると、右側の鋸岳が恐竜の背のような景色を見せています。これ以降も鋸岳展望の看板は現れますが、ここからの眺めが一番良かったように思いました。ギザギザの稜線の縦走は確かに面白そうです。
道は時々深い溝になり、荒れている所が現れます。やがて植林帯に入り暗い道になると木の階段による補修も現れ、雰囲気から富士見峠も近いことが感じられます。正面の黒岳がだんだん大きくなり、登り返すのが大変だなとも思えるようになりました。ここは疲れたからまたにしようという気分にもなるところですが、だいたいそれで再び登りに来るということはまず無いですし、普通は後悔だけが残るので、そういう時は登って置くべきだという経験上の囁きが聞こえてきました。意外と登ってみればたいしたことのないものです。
富士見峠は静かなベンチのある峠で、黒岳への登り口に荷物を置いて空身で向かいました。高く見えますが標高差はせいぜい100m程度です。暗い植林地の急登ですが、中に自然の針葉樹の大木が点在しています。これは立派で見ごたえがあります。直登が終わり左に巻いていくようになると、黒岳の展望台が現れます。ここも富士のいい展望台ですが、やはり山頂は雲に隠されています。
展望台から緩やかに稜線を辿ると、杉の大木がいくつか現れてきます。このあたりは黒岳の自然杉として、裾野市自然遺産となっている様です。道はその先で直角に右に曲がり、黒岳の山頂に向かいますが、ここから一転広葉樹の枯れた明るい林になります。たどり着いた山頂は、これは切り開きすぎではないかというくらい富士側が開けていました。しかし、穏やかないい山頂であることは間違いありません。
元の道を戻っていくと、犬連れの人が上がってきました。越前岳山頂付近でのすれ違いいらい、久しぶりに会う登山者でした。富士見峠に着いて、バスの時間との調整もあり、しばらく休憩しました。その間少し白いものが舞いました。幻程度です。それにしても、静かな一時でした。

4.下山
富士見峠から少し急坂を下ると愛鷹山荘があります。入口には「無人無料先着順」とありました。愛鷹山荘からは歩きやすく付けられた峠道を下りました。途中落石多発地帯のような所もありました。今日の靴の具合ですと、それほど足も痛くならずに下れています。しかし、どうも今の自分の下る時の歩き方は、バランスが悪いようで、このあたりはよく慣れておかないと行けないなと思いました。道も緩やかになると、小さな祠と林道が見えてきて下山となりました。こちらの登山口も立派な駐車場とトイレがありました。
あとは僅かな林道歩きです。ほぼ平坦な林道を20分ほどで、愛鷹登山口のバス停に出ます。ここで、頻繁に車が通る道端に座り待つこと30分。15時16分のバスが定刻通りやってきました。バスの中から見る富士は角度が違い少し東側から見るようになる為、富士の山頂は見えているのでした。
御殿場駅では丁度「あさぎり」の時間だったので、かなりお値段は高いのですが、楽でもありますし、乗ることにしました。沿線にはカメラの砲列が並び、車内も鉄道ファンが相当うろうろしていました。どうも今年の3月でここ20年間走ってきたJRと小田急のあさぎり専用の車両が運用を外れる為のようです。思えばバブル期に走り出した当時としては豪華な車両ですが、乗るのは今回が初めてです。これは丁度いい機会で良かったと思った次第です。

今回は、6年以上ぶりの単独ハイキングということで、いろいろなことをチェックす意味もあったのですが、全体的にはまぁこんなもんでしょうという感じでした。まだまだ体力的に自信があるという状況ではありませんし、歩くバランスもそれほど良くないのですが、回を重ねて戻して行きたいと思います。装備や重さや防寒という面でもいいチェックができました。次回は箸を忘れないようにします。
越前岳自体は周囲の雄大な風景と比べると、それ自身は意外と地味ですが、まずまず満足しました。行程は5時間程度ですが、やはり行き帰りにかかる時間を考えると、これ以上コースを長く取るのは大変で、この位が精一杯だと思います。

本文中の写真

  • 登山口上の展望台のから富士
  • 越前岳山頂付近のアシタカツツジの群落
  • 静かな黒岳山頂
  • 富士見峠

  • 参考図書・地図
    エアリアマップ 富士山
    関東の山あるき100選(2002版)(昭文社)
    25000図 印野 愛鷹山
    50000図 御殿場

    愛鷹の稜線 位牌岳から鋸岳
    交通機関
    御殿場駅発
     十里木方面行き 十里木、愛鷹登山口下車
    富士駅発(夏季のみ)
     富士サファリ方面行き 十里木高原下車
    時刻表等:富士急バス
    その他のコース
    越前岳へは、本文以外に、縦走路及び勢子辻から越前岳があります。
    山神社からは、難路となりますが、縦走路中の割石峠付近に登る道があります。