長九郎山

 長九郎山 995.8m
 山域:伊豆

記録
 山行日2012年2月11日(土)
 ルート大沢温泉口バス停→八瀬峠→長久郎山→長久郎登山口バス停(池代)
 コースタイム0930 大沢温泉口バス停 → 0942 登山口 → 1007/15 43番標識 → 1108 池代分岐 → 1149/58 出合(宝蔵院分岐) → 1224/30 八瀬峠 → 1320/50 長九郎山 → 1408 上の林道 → 1417 → 下の林道 → 1433 木橋 → 1454/1506 林道 → 1531 → 山道へ → 1538 車道 → 1548 長九郎登山口バス停
 天候曇り時々晴れ

立春を過ぎたとはいえ、まだまだ厳しい寒さが続いていますが、この時期少しでも歩きやすい場所を求めて南の山に向かいました。伊豆の山を登ったのは天城山くらいで、アクセスも遠く、なかなか出かけないところですが、関東の山あるき100選に出ていたので、今回行ってみることにしました。通常は長九郎登山口バス停のある池代から登って大沢温泉に降りるコースが紹介されていますが、バスの便から逆周りとしました。

1.登山口まで

ネットなどを検索しながらあれこれと調べましたが、バスとコースタイムを中心にスケジュールを組むと、どうしても熱海まで新幹線を利用しないと、うまく繋がりませんでした。東海道新幹線を利用して山に向かうのは初めてかもしれません。それほど遠い山なのでしょう。伊豆急に乗り換え蓮台寺下車。ここがポイントで、下田まで行くと一本あとのバスになり、行程に大きく影響します。
蓮台寺から堂ヶ島行きのバスは、蓮台寺駅からハイカーの2人が乗車したのみ。もう一人は婆娑羅峠で下車したので、婆娑羅山に登るのでしょうか。ここは静かな藪山らしく、トンネルの上の婆娑羅峠は既に藪に埋もれつつあるようです。
一人になって大沢温泉口で下車しましたが、南伊豆フリー乗車券の範囲内なので、切符だけ見せて降りるのが、なんだかわるいようです。本来1000円くらいのバス代です。バス停から大沢温泉に向かい、大沢橋を渡ると、川岸の桜並木が伊豆の山深い温泉地の雰囲気を出しています。温泉街に沿って進むと長九郎登山道の案内板がありましたが、なんとそこには「崩壊の為通行禁止」という看板が立っていました。

2.長九郎山

普通の小さなものではなく、絶対ダメだぞと言わんばかりの立派な標識でした。しかしここまで来て諦めることはできる訳なく、登りに取るのだから、高巻とかいろいろと手はあるだろうと、そのまま侵入しました。
道は立派な登山道ですが、通行禁止の為最近人が歩いている様子がなく、柔らかくなった道の上に枯れ枝や倒木が沢山落ちていて歩きづらい感じです。標識類は立派ですが、標識に従うとすぐに道は細く踏み跡のようになってしまいました。斜面を巻いていく場所ですが、尾根方向にも新しい踏み跡が出来ていました。今は詳しい地図が無いので、新しい踏み跡には入らず道標示す細い踏み跡に訳入りました。
所々に黄色い紐が付いています。何を示すものか半信半疑ですが、これを便りに細くなった踏み跡を辿って行きます。枯れ枝に埋まり、倒木を乗り越えという感じで、正しい道かどうか不安が募ります。そのうち道型もはっきりしないようなところも有りましたが、なんとか周囲を見回し、テープを見つけて進んでいくと再び登山道の標識に出ました。これでまずは一安心です。この登山道は池代側から始まって、通し番号の標識があります。池代が1で、山頂が27、大沢が45という形で周回で付けられていますが、ここで出会った標識は43番でした。まだ登山口から少ししか進んでいません。振り返って正規の道を見たのですが、倒木で埋まって、とても真っ直ぐ進めそうな感じではありませんでした。
道無き道を歩いてきたので、予期せず大汗をかいてしまいました。ここでひと休みして、再び登山道を進みます。道は相変わらず枯れ枝や倒木があり、また上から落ちてくる土砂で埋まってしまい、ただの斜面になっているところも有りましたが、一応道筋ははっきりしているので、今度は大丈夫そうです。それでも42番まではまだまだ気を抜けなく、時折立ち止まってテープや紐を探さないといけない所が出てきます。42番からは尾根に乗り、高度を上げていきます。といってもピークを巻きながらゆるやかに付けられているので、本来は登りやすかった道だと思います。やがて、大野山の下を巻いていくあたりは、自然林に代わり周囲の山の展望が良く気持ちのいい所 でした。
途中で池代への分岐がありましたが、植林の中で道型がはっきりせず、下るのは難しそうでした。38番から木の階段が現れるようになりますが、細かいもので登りやすくなっています。やがて、冬枯れの広い場所にでて、ここも方向を失いやすそうでしたが、キョロキョロと見回して、紐を見つけながら進みました。
階段の道がアップダウンを繰り返すようになり、息を切らして登ると宝蔵院との分岐に出ます。ここにも今まで登って来た方向へは、「崩壊の為通行禁止」の標識があり、また、宝蔵院への道も通行禁止になっているので、ここまで下って来た場合は、これ以上進めなくなってしまいます。
ここからは、道は良く歩きやすくなりました。すぐに、池代へ下る林道へ1kmという標識の分岐がありましたので、下ってきた場合、ここからエスケイプできそうです。沢の源頭に水平に付けられている道は、途中水も流れていて、気持ちのいい所でした。やがて、遊歩道と健脚コースの二股があり、どちらをとっても八瀬峠に出るようですが、ここは時間短縮だろうと、健脚コースを登って見ました。しかし、少し行くと、大木の倒木があたり中に積み重なっている場所があり、道が寸断されていて、とても道が探せる状態ではなく、遊歩道に方に戻り、再び源頭を緩やかに迂回しながら八瀬峠を目指しました。緩やかに登って到着した八瀬峠は未舗装の林道が通っており、ここでも下山への注意喚起がしてありました。
峠からは、山頂までは一番楽しみな部分です。最初は植林地の中の暗い道で、地面が侵食で掘れていて、さらに霜柱だらけで歩きづらいので、ずっと下を見て登って行きました。ふと目を上げるといつの間にか、アセビ・ヒメシャラの伊豆の原生林に変わっていました。久しぶりに見る林です。さらに進むと有名なシャクナゲの林があります。これは、伐採地に地元の人の手で植栽されたものらしいですが、満開時はなかなかのものらしいです。今の時期はもちろん花はあるはずも無く、彩りは地面にあるミヤマシキミ類の赤い果実でした。これは有毒らしいですが。
シャクナゲやドウダンの林は再びアセビなどの林に変わり、緩やかに登っていくと、前方にさらに高く、長九郎山の緩やかな山頂部が見えてきました。一旦植林地になったあと、暗い常緑樹の林を登って行くと、大きな展望台がある山頂に到着しました。周りは自生のシャクナゲなどに囲まれて全く展望はないのですが、森の中の静かな山頂でした。
長九郎山の標高は995.8m。あと、4.2mで四桁です。この差が感覚に与える影響は大きく、1000を超えると急に有難味が増すような気がします。ここにある展望台は5m以上は確実に有りそうなので、その境目はこの展望台の途中にあります。そう考えると、この感覚はおかしなものという気がしますが。
展望台に登って見ると、北には伊豆の高原状の山々、南は石廊崎から太平洋へという展望が広がりますが、こう見ると伊豆は山が多いなぁという感じがします。山が直接海まで張り出し、僅かな平地や谷間が人の住む場所になっています。今日は、雲が多く、遠望は全く無いのが残念でした。晴れた日で、ましてやシャクナゲの季節だと、印象はガラッと変わることでしょう。

3.下山

山頂からは、再び原生林の中を下ります。こちら側の道の方が、木が大きいような気もしました。どんどん下って、沢の源頭のゴーロ状の所を下ると未舗装の林道に出ました。林道をかなり歩き、再び林の中に入ります。もうここからは植林地です。ここを駆け下りて、再び未舗装の林道を横切り、しばらく歩きやすい階段を下ると、緩やかな道に変わりました。やがて、沢に出て木橋を渡りました。下流には流されて崩壊した木橋が放置されていました。このあたりからワサビ田が多くなり、下るほどに立派な幾層にもなったものも出てきます。道はずっと持草川に沿っていますが、この渓流は美しい上に水量も多く、数々の小滝や滑をかけています。しばらくは、この滝を 楽しみながら下っていきました。やがて、舗装された林道に出ましたが、ここでゲートがあり、車の場合はここに止めて出発するようです。
ここまでは、実はバスの時刻を気にしながら結構頑張って下ってきました。そして、この時点で大分余裕ができたので、草の上に座って最後の休憩としました。しかし、あまりにもゆっくりしてしまって、バスの時刻の少し前に着く為にはコースタイムで下らないといけなくなっていました。あとは林道歩きなので、タイム短縮もできないでしょうから、しっかり歩かないといけません。
林道はしばらくは再び沢にそって行きますが、やがて山腹を巻くように下っていきます。ここは20分以上、しっかり足を動かしました。そしてショートカットの登山道に入りましたが、この部分は、上まで車で入る人が多いのか、あまり歩かれていない様で、地面が柔らかく、道を塞ぐ倒木もあったりしました。頑張って駆け下りると、池代の集落に入っていきます。集落へ入ると、車とすれ違いましたが、今日は登山口以来一切人も車も見ていないのでした。そして、池代から大沢温泉に向かう道路に出たところがバス停で、到着はバスの時刻の4分前でした。

4.帰路

誰も乗客のいないバスに乗って大沢温泉口に向かい、下田行きのバスに乗り換えました。乗り換えのバスを待つ間たばこ屋のおばさんと少し話をしましたが、大沢から登ると遠いので、池代から登ったらいいのに、大沢からだとあの山(大野山)を超えていかないといけないのに。と言われました。あの山は大沢富士というのだと教えてもらいました。こっちの山を超えると、堂ヶ島にも行けるよと..。山の中には古くからの道がいろいろあるようですが、今日の道もそうだったように、廃道化もすすんでいるかもしれません。帰りは下田から電車に乗り、ずっと普通電車で帰ったので、家まで6時間かかってしまったのでした。やはり、南伊豆は遠いです。

長九郎山は、思わぬ崩壊があり、また大沢温泉は標高30メートル台なので、登り返しを入れると標高差1000mと、かなり歩きがいのある山でした。語呂合わせではありませんが、ちょっと大変です。しかし大沢からの道はもともといい道で、標識類も奇麗に整備されているので、このまま放置せず、整備して欲しいと思いました。ゆっくり山歩きを楽しむには、整備すればいいコースだと思います。

本文中の写真

  • 倒木に埋もれる登山道
  • 明るい大野山付近。前方に道標が見える
  • 葉の落ちた平地の森
  • ミヤマシキミの果実
  • 山頂付近のアセビ・ヒメシャラの森

  • 参考図書・地図
    関東の山あるき100選(昭文社)
    25000図 仁科
    50000図 下田

    照葉樹に囲まれた長九郎山山頂
    その他のコース
    本文ののコース以外に、宝蔵院(21世紀の森)からの道がありますが、現時点で通行止となっています。
    交通機関
    大沢温泉口へは、伊豆急下田駅発、バサラ峠経由、松崎・堂ヶ島行き
    長九郎登山口へは、松崎発、大沢温泉口経由、池代行き
    時刻表は、東海バスを参照ください。